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序章

 僕の家は貧乏だ。

 どのくらいかって?

 そうだな、今日食べるものに困るくらいだといえば、君にも分かってもらえるだろうか。


 僕の名前ははオットー・ホフマン。

 ホフマン家の長男で十六歳。

 我が屋には僕を含めて六人の子どもがいる。

 上から順に、長女ブランカ十五歳、弟の二男トールは十二歳、三男シュテファンは十歳、四男エルンスト八歳、そして末の妹、二女マーリンは六歳だ。

 父さんと母さんはいない。

 父さんはマーリンが生まれてすぐに天に召された。体がもともと弱かったって、母さんは言っていた。

その母さんも、半年前から行方不明だ。

 でも、きっと母さんは生きている。何かやむを得ない事情があって戻れないだけなのだと僕は信じている。

 だから、今、ホフマン家には子どもだけしかいない。みんなで力をあわせて生きている。ギリギリの生活だけれど。


 僕たちの住んでいるソンネ村は、国の北のはずれにある。

 一年を通してとても寒い。そして土地がやせているから、作物はあまり育たない。小麦がどっさり実ったのは一体いつのことだっただろうか。家畜もやせ細っていて、脂肪たっぷりのミルクや肉は望めない。


 この国の言葉では、ソンネは太陽という意味だ。昔ここに住んでいた人が、あまりにも寒いので、せめて名前だけでも暖かくしたいと思ったのかもしれない。


 これから話すのは、この年、僕が体験した不思議な出来事。そして、出会った人たちのこと。今となっては夢だったんじゃないかと思うけれど、たしかにあったことなんだ。


 僕は静かに言の葉を詠唱する

 それに応じるのは、夏を司る炎の精霊

 

 漆黒の長い髪をたなびかせ

 瞳は紅玉のように妖しく煌めいている

 彼は怖れを知らない

 この世で最も強い精霊の一人だから

 

 彼の体が赤い光に包まれる。

 彼が息を吐けば、黒い影が吹き飛び

 彼が手を払えば、巣くう蜘蛛が霧散する

 彼は火の精霊、加具土命

 『加具』は『輝く』

 すべてをその眩い光で照らし

 すべてをその業火で焼き尽くす                                                      


 僕の親友

 その名はシグフェルズ・フォン・バッハ


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