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怨憎・会苦④ ver1.00

3人での食事中に、携帯に狂い人出現の通知が届く。


「エリナ、行くぞ!」


「ああ!」


エリナの焦り顔を察してか、愛子は能力についての注視の眼差しを向ける。


「エリナ、分かっているな」


「ああ、わかってるよ!」


椅子にかけてある特攻服をはおり、食卓を離れるエリナ。


「先生、いってまいります」


「美智子、愛子を頼んだよ」


エリナの危うさを知っている美智子は、愛子の心配する声に力強く頷いた。


エンジンをふかしてるエリナのバイクに美智子もまたがる。


「飛ばすぞ!」


嫌な予感を抱えながらエリナは現場へ向かった。


火の手が上がる第3新宿区。


胴から頭にかけて複数の顔がへばり付いた芋虫様な巨大狂い人が暴れていた。


近隣住民が逃げ惑うなか、エリナと美智子が現場にたどり着いた。


「この場所は……」


つい先程まで立ち寄った早苗の自宅近辺だということに、エリナが気づくのに時間はいらなかった。


体を包むほどの大きな影を見上げる美智子。


「何だ、あれは……。でかすぎる」


巨大狂い人が近隣住宅を破壊する。


早苗のことが気になっていたエリナだが、まずは目の前の巨大狂い人に注視した。


「何やってんだてめぇ!コンプレックス・ストロング!」


拳が赤い炎に包まれる。


巨大狂い人の体を駆け上がり顔面に一撃を入れるエリナ。


「オラ!!」


(やっぱり、因果断ちの方は、イマイチか……コントロールがきかねぇ……)


効き目は定かではないが、エリナの一撃に巨大狂い人が唸りはじめた。


「エ、エ、リ、ちゃん……」


「……早苗?」


気を取られたスキに、巨大狂い人の腕がエリナを殴る。


「チッ!」


向かいの住宅まで吹き飛ぶエリナ。


「エリナーー!」


巨大狂い人が美智子を襲う。


鞘袋から呪詛が巻かれた木刀を取り出す美智子。


「コンプレックス・ナイト」


木刀が緑の炎に包まれる。


襲い来る巨大狂い人の攻撃をかわしながら腕を切り落とす美智子。


巨大狂い人は、複数の顔から悲痛な叫びをあげる。


「アアアア!イタイ!タスケテ、エリ、チャ、ン!」


「その汚い手でエリナに触れるな」


木刀を纏う緑の炎は勢いを増し、美智子は居合の構えにはいる。


巨大狂い人の胴ごと切断しようと能力の出力をあげ美智子が斬りかけたその瞬間。


「……コンプレックス・ストロング」


エリナが美智子の木刀を素手で止めた。


「エリナ!!何してんだ!そこをどきな!」


「こいつは俺にまかしてくれないか……?」


口から出血の後を残しながらボロボロの姿で、木刀を強く握るエリナ。


「頼む。俺のダチなんだ……」


「はあ?なに言ってんだ」


強情なときのエリナの目つきは、幼い頃からの長い付き合いで美智子にはわかった。


「……わかった。だけど、最悪の場合も考えな。マスコミが取り上げた案件だ。特殊部隊や野良の奴らもあと数分で到着する。それに間に合わなければ、そのお友達は終わりだ。余裕ないよ」


「ああ、わかってる。サンキューな!」


エリナは再び巨大狂い人へ向かい、美智子は木刀を構え経典を唱えはじめた。


巨大狂い人が再び美智子を襲うが、横からエリナの一撃が入る。


「オラ!コンプレックス・ストロング」


エリナの鼻から血が滴りはじめた。


出力を上げた能力の使用はこれで3回目だった。


巨大狂い人の体を駆け上がり、首元を掴むエリナ。


「おい!お前、早苗だろ!何やってんだよ!おい!聞いてんのか!早苗!」


巨大狂い人の腕がエリナを払おうとする。


「コンプレックス・ストロング!」


巨大狂い人の腕を殴りつけ弾くエリナ。


エリナの眼は充血し、鼻からは大量に出血していた。


「邪魔すんじゃね……。早苗と話せねぇだろが」


エリナの理性は限界間近だった。


巨大狂い人の中。


早苗の自我は、嵐のような黒い糸で囲まれていた。


ぼんやりと、エリナの叫ぶ姿だけが早苗にはみえた。


「ごめんね、えりちゃん……。もういいの。わたし……。ほんと……ごめんね。弱くって」


現場は混乱とかしていた。


逃げ惑う人々の中で一際冷静に、巨大狂い人に向かう制服姿のギャルがいた。


左目眼帯のツインテールギャルは、ひとり呟きながら人混みをかき分けていった。


「待ち合わせ前に、ちょっと小遣い稼ぎかな〜」


上空では、特殊部隊のヘリが巨大狂い人に向かっていた。


「10m級、狂い人発見!5分で対象に到着予定です!」


「よし、おまえら。たとえ相手がどんなにデカくても関係ない。狂い人は跡形も残すな!」


「ラジャ!」


ヘリの中で、謎めいたガスマスクたちが怪しく光っていた。


幕引きまでの時間は刻々と迫っていた。

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