表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/74

浪人編6

 そこから、毎日のようにメールをした。僕は週5でバイトだったが、光莉は週3くらいだ。バイトで会えても、なかなかバイト中にゆっくり話すことはできなかったが、会えるのは嬉しかった。


 光莉は、幼稚園の先生になるために短大に通っていて、短大でバスケをやっているらしい。光莉の地元は結構僕の家から近く、電車で2駅しか離れてない場所に住んでいた。祐佳とは選抜以来連絡は取っていないらしい。入籍したと言ったらビックリしていた。

 そんなやり取りをしていて、僕は彼氏がいるのかハッキリ聞けないでいた。聞いてみて、もしいた時のショックは計り知れない。僕は遠回しにメールで聞いた。


「クリスマスって予定ある?」

「うーん、バイト入れようかなって思ってる」


 これはどうゆうことだ?


「クリスマスにバイト入れちゃうの? 彼氏とかいないの?」


 結局直接聞くはめになった。


「いるけど、別にいいの」


 いるのかよ……でも別にいいってなんだ? ダメもとで誘ってみるか。


「何もないなら、クリスマスイブに光のページェント見に行かない?」

「いいよー!」


 こうして、彼氏がいるのに? とちょっと引っかかったが、好きになっていたので、クリスマスイブに光莉と過ごすことにした。



 そうしてクリスマスイブの夜、駅で待ち合わせをした。バイト中は髪を結んでいるが、今日は髪を下ろしている。ストレートで綺麗な髪だった。そして、バイトの時から感じていたが、光莉は香水をつけている。私服だと、匂いがより分かる。グッチのエンヴィミーという香水らしい。この匂いは僕の脳が一生覚えることになる。

 まずはイタリアンでご飯を食べた。光莉は何でも美味しそうに食べる。光のページェントを見に行く前に、僕は思い切って聞いてみた。


「彼氏いるって言ってたけど、いいの?」

「いいの。私はもう別れたつもりでいるから」

「どうゆうこと? あっちが別れてくれないの?」

「りょうだから言うけど、実は私DV受けてたんだ。だからもういいの。あっちは了承してないけど、私は別れたつもりだから」


 重い内容の割に、光莉は笑って普通に話している。


「そんな大変なことサラっと言っていいの? しかもそんな楽しそうにさ」

「だってせっかく2人でいるのに、暗くなってもしょうがないじゃん! そろそろ点灯する時間だよ! 行こう!」


 そう言って僕等は光のページェントを見に、外に出た。外はクリスマスイブということもあって、人でごった返していた。僕と光莉は、イルミネーションがつく瞬間を一緒に見て、少し歩いた。

 光莉は小さい。身長は150㎝ちょうどくらいらしい。僕とは30㎝近く差がある。そんなんだから、人混みの中歩くのが大変そうだ。手を繋ぎたかったが、まだ付き合ってもいないのに、いいのかな……と迷っていた。横断歩道を渡るため、信号が変わるのを待っていた。信号が青になり渡りだすと、光莉が人混みに紛れて、少し僕の後ろに行ってしまった。僕が横断歩道の真ん中あたりで待っていると、追いつき、無言で僕の服の裾を掴んできた。その瞬間僕は、ドキドキが止まらなかった。そのまま、横断歩道を渡った。しばらくそうやって歩いていたが、我慢できずに、僕から手を繋いだ。光莉は何も言わず受け入れてくれた。そうやって、一通り歩いた後、


「どこか行きたいところある?」


 と聞いてみた。


「うーん、りょうが好きなところ」


 と言うものだから、僕は少し考えた。そして閃いた。


「広陵の校門から見える夜景見に行かない? オレは毎日それを見て帰ってたんだけど、その景色が好きなんだ。光莉にも見せたい」

「行く! しかも広陵か。行ってみたかったんだよね」

「なんで?」

「なんでも! さあ行こう!」


 まだ免許も車も持っていない僕は、やはり自転車の2ケツで光莉を連れて行った。途中の坂を登り切って、広陵についた。門は夜も開いている。


「どう? 結構綺麗じゃない? ここから仙台の街並みが見えるんだ。いつもここからみんなで自転車に乗って帰ってた」

「本当に綺麗だね。感動しちゃった!」

「あの塔あるでしょ? あれが緑に光る時は次の日が雨。オレンジの時は曇り。白の時は晴れなんだ」

「オレンジが晴れじゃないんだ?」

「それオレも思った(笑)高2まで勘違いしてたけど、チームメイトが教えてくれたのさ(笑)」

「ねぇ、中って入れるの?」

「入れるよ。行ってみる?」

「うん!」


 そうして、光莉をグラウンドの方まで連れて行った。


「すごいねー。りょうはここで毎日練習してたの?」

「そうだよ。全国まであと一歩だったんだけどね。決勝で仙台学園に負けたよ。って光莉って仙台学園じゃなかったっけ?」

「仙台学園だよ(笑)今さら?(笑) よく知ってたね」

「そういえば祐佳が言ってたのを今思い出した。仙台学園かー、憎いわー」

「実はさ、りょうのフルネーム知ってたのって、バスケのアリーナで会ったからじゃないよ? あの時はぶっちゃけ名前聞かなかったし、興味もなかった(笑)」

「おい、マジかよ」

「名前知ったのはあの選手権の決勝だよ。仙台学園も全校応援で、私もいたからね!」

「あーそれでか。負け試合見られちゃったのか……」

「でも、広陵って知って、あの16番が祐佳の友達だってすぐ分かったよ! ボロクソに言っちゃったから、印象残ってたしね(笑)正直、大したことないだろうってずっと思っていたから。でも、あの試合観て驚いた。私あんまサッカー興味なかったし、仙台学園のサッカー部って調子に乗ってて嫌いだったから、適当に観てたんだよね。でも、相手チームに一人めちゃくちゃ必死で、誰よりも輝いてるように見えた選手がいてさ。それがりょうだったんだよ。電光掲示板見て、すぐに名前覚えたもんね(笑)あの試合は本当にすごかった。正直途中から広陵のこと応援してたもん。先制ゴールもカッコよかったけど、やっぱり、後半最後のフリーキックだよね。あの時は『入れ!』 って祈ってたんだよ。足引きずっても延長まで戦う姿もすごいと思ってさ。本当に感動したな。アリーナでひどいこと言ってごめんね? あんなすごい選手に何てこと言っちゃったんだ……って恥ずかしくなってた(笑)それで、こうやってバイトでたまたま会えて、アドレスまでもらえちゃって、奇跡だと思ったよ」


 光莉は嬉しそうに話していた。僕も何か嬉しくなった。


「オレも高2の時アリーナで初めて光莉を見た時、すごいなって思ってたよ。祐佳を見に行ったんだけど、小さな体でバンバンドリブルしてって、気がついたら、ずっと目で追ってたし、プレーに感動してた。その頃から惹かれてたりして(笑)」

「そうなんだ。それは素直に嬉しいよ!」

「少し寒いから、部室の中で話さない?」

「え? 入れるの?」

「余裕(笑)」


 そう言って表札の裏から鍵を取り出し、中に入った。光莉は一人で盛り上がっていた。


「すごいね! 男子の部室って感じ」

「汗臭いけどね」

「大丈夫だよ(笑)」


 そうして、僕も初めて光莉に会った時はひどい人間だったこと。そこから選手権の決勝まで、いろいろ気づいて変わっていったこと。サッカーで夢を追おうとしていること。全て話した。


「そうなんだ。やっぱりりょうはカッコいい。私も幼稚園の先生に絶対なりたいんだ」

「光莉は良い先生になれるよ。優しくて元気で、なにより笑顔が素敵だもん」


 と、恥ずかしいことを言ってしまった。


「ありがとう」


 笑ってそれに答えてくれた。少し沈黙になり、僕は光莉を抱きしめてしまった。光莉は黙って、僕の背中に手を回す。それで僕のスイッチも入ってしまう。何秒か抱きしめた後、僕は顔を少し離し、光莉の顔を見た。さっきまで笑顔だった光莉の顔が、少し真面目な表情になる。僕は顔を近づけてキスをした。結構長い時間した。その間、僕は光莉を守りたいと本気で思った。キスの後、また強く抱きしめた。


「そろそろ帰ろうか」


 僕が言い立ち上がった。


「そうだね! 来れて良かった! また連れてきてね?」


 そう言って手を繋いで自転車まで行った。夜景を見ながら2ケツで帰った。光莉は僕の背中に顔をうずめていた。

 僕は光莉を送った。久しぶりに幸せな気分だった。

 光莉とバイバイをして、家まで自転車で帰った。光莉の家から僕の家まで、だいたい20分くらいだ。僕は一人で自転車をこぎながら、光莉のことを好きになったと実感した。人生で遥香以外の人にこんな感情を持ったのは初めてだった。



 僕等は次の日も会った。2人で駅前で買物をした。クリスマスということで、お互いに好きな匂いのハンドクリームを選んで、プレゼントとして交換した。

 僕は好きになってしまったので、付き合いたいと思っていた。晩ご飯を食べながら、僕は今、その彼氏とどんな状況なのか改めて聞いてみた。

 すると、着信拒否しているから分からない。でも、いつ会いに来られたりするか分からないから少し怖い。と言っていた。

 ギャンブルとかもする男のようで、彼氏にギャンブル代や生活費を渡したりしていたらしい。僕の嫌いなタイプの人間だ。とにかくだらしなく、最低だと思っていた。嫌悪感があからさまに顔に出してしまったのか、光莉が、


「そんな男と付き合ってる女でごめんね。でも、そんな心配しないで!」


 と、いうから特にそれ以上は何も聞かないし何もしないでいた。


「年末年始はどうするの?」


 と、僕が聞いてみた。すると光莉は、


「大晦日はバイトだよ。この日は11時で店閉めるらしいから、私もラストまでで、終わったらバイトのみんなで飲みに行こうって話になってたよ」

「そうなんだ。オレは30、31と高校のサッカー部の何人かで旅行に行く約束してるんだよね」

「じゃあ、旅行行く前の日にまた遊ばない?」

「いいよ。夜は後輩と飯行く約束してるから、その前でよければ」

「楽しみ! 明日と明後日はバイト一緒だもんね!」


 僕と光莉はかなり良い感じになっていた。僕はバイトに行くのが楽しみになっていた。バイト仲間にも最近光莉と仲良いね。と言われるくらいだった。


 そして僕の旅行の前の日、約束通り日中に光莉と遊んだ。映画を見たり、スタバで話したりした。たわいもない話でも楽しかった。

 光莉は短大での勉強の話や、どうゆう先生になりたいかなど、自分のことをいっぱい話してくれた。ずっとニコニコしている光莉を見ているのは幸せだった。光莉のことをもっと知りたいし、自分のことも知ってもらいたいと思っていた。

 そして暗くなり、後輩との待ち合わせ時間が迫ってきていたので、僕は光莉を仙台駅の改札まで送って行った。光莉はここから電車で帰る。僕はサッカー部の後輩の陽太と待ち合わせしてご飯を食べる予定だった。

 光莉を見送って、陽太とご飯を食べた。その間もずっとメールを続けていたのだが、21時くらいから返ってこなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ