浪人編3
そうして、僕等は2人に内緒で準備を進めた。地元の友達も呼んだし、塩川高校の剛の友達や、広陵の祐佳の友達にも声をかけた。遥香も電話でいろいろ指示を出してくれた。
とりあえず日程も決まり、店を貸切にし、人数も揃った。その日は僕が用事があると、2人を飲みに誘っていた。遥香は早めに店に行き、2人の衣装を準備し、みんなでリハーサルをしていた。準備ができたのを確認し、2人を店の中に入れる。
「バンッ! バンッ!」
クラッカーが鳴り、拍手で出迎える。
2人は茫然と立ち尽くしている。遥香が2人を席に案内する。2人共遥香がいることにもビックリしている。そのまま用意していた服に着替えさせ、僕が最初の挨拶をし、食事を楽しみ、プレゼントを渡し、ケーキ入刀もさせた。誓いのキスもさせた。
みんなで剛と祐佳を祝った。幸せいっぱいのパーティーにできたと思う。最後に2人から挨拶をもらった。祐佳は泣いていた。剛も泣きそうになっていた気がする。僕は泣いた。普通に泣いた。もちろん嬉し泣きだ。そりゃあそうだ。親友同士が結婚するんだもん。
挨拶では2人とも今までのことや、みんなへの感謝の気持ちを述べていた。僕はもちろん全部知っているが、改めて聞くと、いろいろあったな。と思う。最後、僕が締めの挨拶をしなければならないが、泣いていてあまり言葉が出ない。
「う、う……大切な2人です。幸せになって下さい」
と言ってまた泣いた。剛と抱き合った。
その後、二次会にも突入したが、そこからは完全に成り行きに任せた。終電がなくなるまで飲んでいたので、剛と祐佳と遥香とタクシーで帰った。
2人の新居に泊めてもらうことになったのだ。
そこで、久しぶりに4人で話した。中学時代の思い出、高校でみんなどんなことがあったのか。
僕の選手権の話にもなった。やっぱり4人で過ごす時間はかけがえのないものだった。
「遥香はいつまでいるの?」
「明日帰ろうと思ってたよ。今、大学夏休み中だから、まだいれるんだけど、泊まるところがね。今日も本当はホテルに泊まろうと思ってたし」
「なんで? 明日もうちに泊まっていきなよ」
祐佳が言う。
「それはさすがに悪いって。新婚の家に何日も泊まるなんてさ」
「大丈夫。もうすでに私より先に泊まってたバカがいるから」
「ちょっと待て。オレはちゃんと家主の剛に了承を得てから泊まったから」
「いやいやそれでもあり得ないでしょ。でも、せっかくだから泊めてもらおうかな。久しぶりにみんな揃ったしね。明後日帰ることにする」
そう言って僕等は朝まで飲んでいた。みんな次の日は休みで昼まで寝ていた。起きて、4人で近くのファミレスに行った。
遥香が、
「今日、涼真と夜出かけてきてもいい?」
と、祐佳に言った。
「もちろんどうぞ。2人でゆっくり話せてないんでしょ?」
「おい、オレは行くって言ってないぞ」
「いいから。どうせ今ニートみたいなもんでしょ」
確かにそうだが、何かイラっとする。
でも、相変わらずだ。こうして、僕と遥香は2人で出かけることになった。
「どこ行く?」
「久しぶりに2ケツして地元回ろうよ。中学校にも行ってみたい」
そう言ったので、家から自転車を取り、地元を回った。
「久々だけど、あんま変わってないねー。なんか落ち着く」
そう言っていろんなところを回った。海の方に行きたいと言うので、海に行った。僕が死にかけた海だ……。
そこには日和山という日本一低い山がある。そこの山頂(といっても、徒歩10秒くらいで着くが……)のベンチで座って話をした。
「オレここで中3の夏溺れかけた」
「知ってるよ(笑)ほんとバカだよね」
「知ってるの? 祐佳か?」
「違うよ。これは確か剛。実は私、転校してからの涼真のことは多分何でも知ってる。祐佳と剛が全部話してくれたから。だから、どんな人と付き合って、サッカーの試合がどうだったとかも基本知ってるつもり」
「あいつら、オレには何も言わなかったくせに……」
「あんたが聞かないからでしょ。しょうがないことだけど、あんたがめっちゃ彼女作って遊びまくってるって知ってショックだったなー」
「いや、それは……」
「いいよいいよ。今さらどうしようもないしね。祐佳からは本気じゃなくて、遊び感覚だよとは聞いてたけど、それはそれでイラっとするんだよね」
「だいたいお前が別れるって言うからじゃん。そりゃあ、中3であんなトラウマ植え付けられたら、人間おかしくもなるわ。そうゆう遥香こそどうなんだよ。彼氏いたのか?」
僕はついに聞いてしまった。知りたいようで知りたくないことだ。僕はドキドキして返事を待った。




