中学編2
その日の放課後、ちょうど教室の掃除当番で掃除をしていると、2組の遥香が教室に勢いよく入り、僕めがけて飛んできた。そして近くにくると、
「あんたバカじゃないの!」
とほうきを奪われ尻を叩かれた。
(まああれだけ騒ぎになれば、みんな知ってるよな……)
と思った。
「一応怪我人だから……」
「知るか、バカ!」
「分かったからバカバカ言うな」
ちなみに、遥香とは幼稚園からの幼馴染である。家も近く、物心ついた時からよく一緒にいた。一緒に遊んだりするのが当たり前だったが、小学校5年生くらいから異性として初めて意識するようになり、好きになった。クリっとした目で髪はキレイなストレートのセミロング。全体的に小柄なかわいい子だった。当時はまだ出ていなかったが、長澤まさみのような雰囲気だった。
剛は小学校が一緒で、小学校3年生の時、サッカーチームとクラスが同じになったことから仲良くなった。小学生の時はスポーツ刈りだったのだが、中学生になった瞬間、色気づいて髪を伸ばし始めた。
僕と遥香と剛は小学校3年生で同じクラスになったこともあり、よく3人で遊ぶようになった。剛はサッカーが学校で一番上手で、僕はよく剛にサッカーを教わった。初めて一緒にサッカーをした時に、つま先でボールを蹴っていた僕に、インサイドキックとインステップキックという、一番基本のキックを教えてくれたのは剛だ。
僕らがサッカーをするのを遥香は見ていたり、たまに一緒にやったりした。遥香はピアノをやっていて、運動が基本的に苦手だ。でもサッカーは指を怪我することもないのでやっていた。僕らと一緒にサッカーをすることや僕らがサッカーをやっているのを見るのは好きらしい。
祐佳は小学校5年生の時に転校してきた。剛は転校してきてすぐに祐佳が好きになったらしい。確かに祐佳は身長が高くスラっとしているうえに整った顔立ちの美人だった。剛が祐佳を誘ったりするものだから、いつの間にか小学校5年生から4人でいる時間が増えた。
もちろん他の友達も入って、遊ぶ人数が増えることもあったが、大事な遊びの時はこの4人だった。地元の祭りや修学旅行の自主研修なんかは4人で行ったりした。
僕が遥香を好きだということは誰にも言わなかった。お互い、バカにしたりする関係だったため、告白なんか到底できなかった。遥香も僕のことは友達としか思ってないと思っていた。剛だけがそのことを知っていた。剛も同じ理由で祐佳には告白しにくいらしい。男同士の苦悩だった。女2人がどう思っているかはこの時は全く分からなかった。
遥香とは、そんな関係だったため、彼女は僕によくダメ出しや説教をした。サッカーのことも平気で言うし、髪染めた時も似合わないって言われたし、何より僕がケンカした後は泣きながらキレてくる。
今回はさすがに中学生になったし、周りにみんなもいたから泣いてはいなかったが、泣きそうになっていた気がする。
事情を話し、もうケンカはしないと約束させられた。ちなみにこの約束は数回破られることになる。
部活が休みだったので、その日は遥香と帰った。
僕はチャリ通で遥香は歩きだったため、自転車を押して帰った。普通、中学生が好きな人と帰るとドキドキしたりするものだが、僕はそれが小学校から当たり前だったので、ドキドキしなかった(慣れって怖い……)冷やかしてくる男子もいたが、それもあまり気にならなかった。
「聡子先生に怒られた?」
「いや、全然怒られなかった。逆に褒められたりもしたよ」
「先生甘いね(笑)他には?」
「なんか将来の話とか、高校の話されたかな」
「高校なんてまだ全然分からないよね。涼真どこか行きたいところあるの?」
「うーん、公立で、勉強できて、サッカーも本気でできるとこ」
「あんた、意外と成績いいもんね」
「意外じゃないから(笑)両親からの遺伝。遥香も成績まあまあいいじゃん。こないだのテストはオレの方が良かったけどな」
「お父さん大学の先生だもんね。涼真のお父さん厳しいし、絶対今日のこと怒られるよ。じゃあ次のテスト勝負しようよ」
「今日のことは内緒にする。勝負~? どうせオレが勝つしな~」
「いいから。じゃあ私が勝ったら、コンビニで一番高いアイスおごって」
「まあいいよ。オレ勝ったらガリガリ君でいいわ」
「えー、余裕な感じがむかつく」
その一か月後の9月末に前期末テストがあった。
僕は正直中学の勉強を舐めまくっていた。自分で言うのもなんだが、元々地頭が良いので、授業中ふざけていても、テスト前少し勉強すれば全教科90点位取れていた。
遥香も昔から頭が良かったが、絶対自分は負けないだろうというおごりから、特に変わったこともせず、今まで通りテストを受け、450点くらい取った。成績表が出た後、2組に向かった。
「遥香5教科何点だった?」
「なんで?」
「勝負って言ってたじゃん!」
「そうだった(笑)今回私すごいよ」
「はいはい」
「これを見ろ」
「……488点? 100点が3つもあるんですけど」
「だから言ったでしょ。何賭けてたっけ? 焼肉だよね」
「アホか。アイスだから。しかもガリガリ君」
「それはあんたが勝った場合でしょ」
「覚えてんじゃん……腹立つな」
「今日部活でしょ? 私も部活だから終わったら一緒に帰ろう」
「はいはい、分かりましたよ。ところで剛は?」
「知らない。どうせ200点とかでしょ」
「マジかよ。こないだ剛のお母さんにテストの成績悪かったら勉強見るように言われてるんだよ」
「見てあげなよ(笑)」
「やだよ。本人がやる気ないし、分からないとすぐ切れるし」
「祐佳も同じこと言ってた。いいから見てあげな」
そんな話をし、部活終わりに二人で帰り、ハーゲンダッツを買ってやった。
遥香は吹奏楽部、祐佳はバスケ部である。僕と剛はもちろんサッカー部だが、剛は小学生の時からうまかったため、地元の強豪クラブチームに入っていた。
僕はそんな実力もなく、普通のサッカー部員だった。1年生で選ばれるトレセン(選抜)にもうちの中学から5人選ばれたが、僕は選ばれなかった。
サッカー部の活動は夏休み前に3年生が引退し、新チームになっていた。僕はレギュラーではなく、Bチームで活動していた。サッカー部は、僕らの学年は15人、一つ上が10位いて、レギュラー争いもそれなりにあった。
結局、新人戦のメンバーに入れず、遥香に想いを伝えるわけもなく、特に何もないまま中学校1年生が終わっていった。