高校編23
その後の事はほとんど覚えてない。みんなで泣いていた。何も言葉が出てこなかった。僕も誰と何て言葉を交わしたかも覚えていない。2年生もみんな泣いていたはずだ。不完全燃焼で最後のインターハイ予選が終わってしまった。そして次の日は月曜日で学校に行かなければならない。監督が、
「辛くても、学校だけは逃げずに行かなければだめだ」
と言っていたことだけ覚えている。だから翌日学校にはみんな行った。
朝、部室に行かず教室に直接行った。昼飯も教室で食った。他のサッカー部員も同じだろう。まだ信じられなかった。広陵は進学校。みんな口には出してなかったが、この大会で引退を決めていた選手もいるだろう。
3年生の引退をどうするかのミーティングは3日間オフを挟み、木曜日だった。その間、みんないろいろ考えていたのだと思う。相談し合っているやつらもいたかもしれない。僕は最初から残ると決めていたし、宣言もしていた。最初から選手権の為に高校サッカーをしていたのである。でも、みんなに聞くのは正直怖かった。
木曜日、高校総体の壮行式があった。去年も一昨年もベスト8以上に入ったため、壮行式に出られないのは初めてだった。広陵サッカー部が2回戦で負けるなんて……。
僕等は去年の選手権も一次予選で負けている。全然結果を出せていないのだ……。みんなはどうゆう気持ちでこの壮行式を見ているのだろう。同じクラスの将大はボケーっとしていた。
そして放課後、ミーティングが開かれた。クラス順で一人ずつ話していく。最初は浩太だった。浩太は残るかな。と思っていたが、挨拶の最初から泣き出し、引退すると言い出した。
そして悠介、拓也、真人、永井、宝井、マネージャーの真美、優太、平田、雄吾、篤、和也、洋介、ノブ、武原、が挨拶をしていったが、全員引退すると言った。理由はやはり受験勉強と、ベスト8まで残れなかったことで心が折れてしまったことが大きいようだった。みんな泣いていた。篤や優太なんて号泣だった。
やはり、今までのこと、仲間のこと、勝てなかった悔しさを思い出し泣いてしまうのだろう。僕は頭を強く打たれたような気持ちになっていた。そして、挨拶は僕の番がやってくる。
「オレはずっと宣言してたように、選手権まで残ります。最後の最後までチャンスがある限り挑戦したいし、諦めきれません。残る3年生がいなくてもオレは最後までやります。本当は……」
ここらへんで涙が出て止まらなくなった。
「本当は3年生みんなで挑戦したかった。みんなに支えられたこの高校生活。サッカー部のみんながいなかったらオレはこうして頑張れていなかったと思う。感謝の気持ちしかないです。だから、一人も欠けることなく挑戦して、次こそみんなで喜びたかった。みんなの人生だからオレは決められないけど、こんな結果で終わってしまうのは嫌だよ……」
言葉に詰まって、ここで終わりにしてしまった。泣きながら席に戻る。みんなの泣き声だけが耳に入る。
最後はずっと泣きっぱなしの将大だ。
「今の涼真の話を聞いて正直迷ってる。今でもどっちにしようか決められてない……」
数十秒沈黙が続く……。
「でも、今日ミーティングが始まる前に考えていた結論は、引退……するってことで……迷ったけど……最初に決めたように……引退します……みんなありがとう……」
将大は最後声を絞り出していた。きっと、もっと伝えたいことはあったのだろう、でもきっとこれが限界だったのだと思う。
そして、僕以外の3年生が引退を決めたため、僕が自動的にキャプテンになり、小堀が2年生キャプテン、副キャプテンが公介になった。
涙涙のミーティングが終わり、僕は週末、塩川対東光の試合を観に行った。剛はさすがのうまさだった。クラブチームを辞めても、技術は一級品で、このフィールドで誰よりもうまかった。
しかし、試合は総合力で勝る東光が競り勝った。試合後、剛の所に行って話をした。
「惜しかったな」
「まあ今のチーム状況だったらこんなもんだわ。勝負は選手権に取っておく」
「塩川は選手権に3年生残るのか?」
「うちは誰も受験なんてしないからな(笑)普通に全員最後までやるよ。オレがビシバシ鍛えてるから、本番は選手権だ」
「いいな。うちはオレしか3年生いないから、正直厳しいかも……予選も勝てるかな……」
「広陵が3年生のメンバーいないのはきついな。面子的にはかなり良いのにな。お前が連れ戻せばいいんじゃない?」
「そんなことできると思う?」
「お前の情熱次第だろ。呼ばれたから行くな。近いうち家に来いよ」
「分かった。またな」
剛に言われて少し考えた。
(3年生呼び戻す説得してみるか……)
僕はその日から、全員に説得メールを送りまくった。将大、浩太、洋介、和也はサッカーはしたいと言っていた。他の人の返事は微妙なものだったが……。
とりあえず、サッカーがしたいと言った4人に学校で休み時間に毎回「戻ろう」「やろう」「勉強と頑張って両立しよう」「絶対やった方が後悔しないから」と呪文のように唱え続けた。そしたら、4人共、中間試験明けから復帰してくれるということだった。
そして、中間試験が終わり、4人がスパイクを履いて、グラウンドに来た。
「よく戻ってきた!」
僕はハイタッチを求めた。みんな恥ずかしがりながらハイタッチをした。練習後、今まで16人で使っていた部室を5人で使った。さすがに広く感じる。
「他のみんなの説得手伝ってよ」
僕が言うと、洋介が、
「恒例の打ち上げ飲み会あるだろ? あそこで酔っぱらった勢いで復帰させるのはどうだ?」
と言った。そんなうまくいくもんかね……と思ったが、とりあえずその日はみんなで集まるので、やってみようということになった。




