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高校編15

「なあ、オレらに足りないものってなんだろう?」


 学校が始まり数日たったある日の昼休み、僕は学食で言った。


 僕等サッカー部員は毎日昼飯を一緒に食べていた。他の生徒には申し訳ないが、学食の一帯を占領し、2年生16人が、8人2テーブルに別れて座るのだ。もうそこのスペースはサッカー部2年生のテーブルとして諦められている。

 みんな、学食で弁当を食べたり、学食のラーメンやカレーや定食を食べたりしている。僕は、基本的に母親が弁当を作ってくれるが、その弁当は2時間目の休み時間に早弁する。白米は大量に入れてもらっているので、弁当のおかずでは白米を消費しきれず、半分ほど余る。その半分をどうするかというと、昼休みに学食でラーメンかそばを買って汁物にする。麺を食べた後に汁で残りのご飯を食べるのだ。他のみんなも休み時間にパンを買ったりするなど、食いまくっていた。


 僕の問いに、


「かわいいマネージャー」


 将大が答える。


「いや、そうゆうことじゃなくて。もちろんそれも足りてないけども」

「サッカーの話なのかふざけてんのかわかんねーよ」


 と、ノブが突っ込む。


「今は真面目な話! このままでいいのかな?」

「なにがよ?」


 篤が言う。


「勝つためにはって話だろ?」


 さすが浩太、話が早い。僕はずっと考えていたことを声に出す。


「オレ、これから毎日朝練と居残り練習しようと思うんだけど、みんなでやらない?」

「マジで言ってんの? 涼真、朝来れないじゃん」


 将大が言う。


「いや、朝練やれば毎日遅刻もしないし一石二鳥」

「でも、いいんじゃない? 居残り練習は自主参加としても、朝練はみんなでしようよ」


 篤がまとめる。良い雰囲気で夏休みが終わったため、みんなの意識が高く、朝練をやることになった。そもそも、やる気のないやつはもう辞めている。今ここまで残っているのはやる気のある選手しかいなかった。


 僕は夏休み中いろいろと考えた結果、やはりサッカーを中心に生活をすることにした。そのために、朝練をし、居残り練習を8時までやると決めた。朝練はみんなでやることになったが、居残り練習は全体練習後、残れる人だけでやることになった。うちの学校は照明がない。そのため、体育館の部活が終わるのを待って、体育館でミニゲーム、サッカーテニス、リフティングなどを楽しみながら行った。勝者は敗者にジュースをおごるというルールにしたので、どんなことでも盛り上がったし、きわどい判定に本気で揉めることもあった。特にリフティングは荒れる。


「今の取れただろ!」

「ボールがきつすぎる!」


 などである。わざと落とさせるために、膝あたりを狙う「キラーパス」というプレーも生まれた。

 でも、この居残り練習はかなり技術がついたと思う。僕、将大、浩太、篤、洋介あたりは毎日やっていた。それに何日かに一回来る2年生や強引に連れて来られる1年生が参加するのである。洋介は、ミュージックステーションに中島美嘉が出る時はみんなの制止を振り切って帰っていた。

 そして、居残り練習後、僕はいつも通り、篤と将大と帰る。うちの学校は山の上にあるため、朝は登りできついが、帰りは下りで気持ちいい。うちの校門からは仙台の景色が一望できる。当たり前すぎて、普段はそんなに気にも留めないが、冷静に見るとかなり綺麗である。僕は自分の母校からの夜景が大好きである。山を下ると、ローソンがあり僕等は必ずそこによる。僕はそこでおにぎりか肉まん、あまりに腹が減っている時はカップラーメンを買って、コンビニの前で食べる。篤も将大も同じ感じだ。ちなみに、これは晩ご飯ではなく、補食である。そして、途中で篤と別れ、将大と別れる。僕の家が一番遠い。一時間弱自転車をこぐので、毎日家に着くのは9時過ぎだった。

 そこから家で準備されている本当の晩ご飯を食べて、風呂に入って寝る。食事は、朝・早弁・昼食・練習後の補食・晩御飯と5食毎日食べていた。ちなみにこれだと勉強する暇がない。でも、僕は割り切った。疲れてダラダラ勉強しても意味がないと思い、それなら、ちゃんと11時前に寝て、6時に起きる。30分で朝食と、学校に行く準備をし、6時半に出れば、朝練開始の7時半に間に合う。そうゆう計算だった。

 その代わり、授業はどの教科も絶対寝ないで集中して聞くことにした。最初は先生達やクラスメイトにも驚かれた。でも、授業さえしっかり聞いて理解してしまえば、最悪、予習復習しなくても何とかなることが分かった。もちろん試験で高得点を取るまではいかないが、僕は24時間を計画的に使い、無駄を出さないようにした。授業さえ真面目にやれば、一日7時間は勉強したことになる、それ以外はサッカー中心に考えて問題ないはずと思っていた。でも、これは間違いではなく、勉強も部活もしっかりやることに成功した。これを始めてから、僕は授業中寝たことがない それどころか、毎回の授業を恐ろしいほど集中して聞いた。


 そして、クラスの中での雰囲気も変わっていった。今までは、クラスメイトにかなり冷たく接してきた。「うるせぇ、メガネ」とか「黙れ、殺すぞ」なんて平気で言ってきた。席替えは、イカサマを繰り返し、常に一番後ろの席をキープしていた。とにかく傍若無人な態度で常にいたのだ。

 それが少しずつ、クラスメイトとも対等に話せるようになり、行事や、クラスの活動も積極的に取り組むようにした。掃除もサボらず行った。


 9月末には前期末試験もあったが、僕は高校入学後初めて赤点なし、おまけに順位も上位30%に入ったのである。

 練習試合でも少しずつ調子が上がり始め、スタメン復帰はまだだったが、Aチームにはなんとか戻ることができた。

 僕は、生活の基本や日常の積み重ねをしっかりやることが全てに繋がることに気づいた。謙虚さや感謝の気持ちがない人間がチームの為に頑張れるわけがない。きっと、僕に足りなかったのはそこなのだろう。


『考えて行動する』


 そんな当たり前のことにやっと気づいたのである。

 そして、監督の言ったように、自分で気づいたことは僕の血となり肉となり、ずっと忘れることはなかった。



 そうやって、僕が自信とやる気を取り戻しつつある時に、ある事件が起こった。

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