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高校編5

 高校で付き合った人 4人目 同じ高校の後輩の紗良(高3、7月~高3、10月)


 高3の体育祭を目前に、僕等の3年6組理数科は、やる気に満ち溢れていた。体育祭で総合優勝するためである。うちの高校は3日間に渡り、体育祭が行われる。1、2日目が球技。3日目がリレーや綱引きなどの運動会系の種目が行われ、それぞれの順位に合わせてポイントが入り、1年生から3年生までのクラス対抗で優勝が決まる。

 どうせ3年生が優勝するからと、1、2年のうちはそこまで気持ちが入らないが、3年生は違う。どのクラスも本気で優勝を狙ってくる。僕の6組は理数科で唯一3年間クラス替えがない。最初はあまり仲良くなれないと思ったクラスだったが、3年目ともなるとわけが違う。普段は勉強しか興味ないようなやつも巻き込んで、本気でやろうということになった。

 それも、体育委員の僕と将大の盛り上げや、何人かの運動部の協力があってこそだった。なので、本気で優勝を狙うための、チーム編成を行った。球技の種目は、男女サッカー、男女バレー、男女バスケ、男女卓球の8種目だ。自分が入ってる部活の種目に出ることはできないので、僕はサッカーに出ることはできない。

 作戦としては、得点の高い球技で4種目優勝+最終日のリレーで優勝する。あとは、運動会系の種目でなるべく上位に入る事だった。そこで、卓球は捨てた。中学までやっていた経験者が無双して終わるからだ。なので、男子バレー、男子バスケ、男子サッカー、女子のバレーで優勝しようとクラスで決めた。他は少しでも上位を目指す。ということでまとまった。理数科は女子が少ないうえに、運動できる人が少ない。ただ、中学時代のバレー部が2人と、祐佳がいるので、バレーだけは何としても優勝して欲しいと女子にお願いした。男子のサッカーは、たぶん優勝できる。なぜかというと、言い方は悪いが、高校サッカー部に入部し、数ヶ月で辞めたサッカー部崩れが4人ほどいるからだ。これは思いのほかでかい。

 問題はバレーとバスケだ。これは経験者がほぼいないため、僕と将大のフィジカルのみでなんとかするしかない。自慢になってしまうが、僕はとにかく足が速いし、高く跳べる。サッカー部の中でも、『身体能力お化け』と言われていた。体力テストをやれば、握力以外は全部9点か10点で、3年連続体力テストで学年トップだった。50mは6秒ジャストくらいで走れていたし、バスケットのリングを掴めるくらい高く跳べた。もう少しでダンクができそうなくらいであった。サッカー以外の球技も好きで、その中でもバレーとバスケは得意だったので、人数の関係上、僕と将大は2種目出場することになった。ちなみに将大はごつくて、でかくて、強い。身長185㎝ある。サッカーでは、それプラス繊細な技術も持っている選手だった。

 バレーに関しては、たまたまバレー経験者のセッターが1人いたので、サーブカットとレシーブをしっかりセッターに返すことができれば、僕と将大でブロックの上から打ち込むことができる。

 バスケはとにかく、ゴール下勝負だった。3ポイントとミドルのシュートはバスケ経験者に比べて、確率が低くなるに決まっているので、僕のドライブでゴール下まで持っていき、とにかくリバウンドを拾う作戦だった。

 リレーは男女計10人で走る。全員100m走るのだが、アンカーだけ200m走るのだ。僕がアンカーで、何位でも良いから、トップとそこまで離れていなければ全員抜ける自信があった。


 そんな感じで理数科らしくポイントをうまく計算して、チーム編成を行った。そして、本番を迎えるわけだが、僕等の計算は見事ハマった。女子バレー、男子サッカーが優勝したのだ。何気に女子サッカーも頑張ってベスト4に入っていた。卓球は予想通り1回戦敗退。そして、男子バレーも優勝した。僕は、自分でサーブカットをして、アタックするという行為を繰り返していた。そしたら決勝で足をつった。普段こんなに跳ばないし、サッカーとは違う筋肉なのだなと思った。でも、決勝まで4試合あって、25点の2セット先取で勝利なので、冗談ではなく、100回以上本気でジャンプをしていたと思う。

 バスケも決勝まで残ったが、決勝の相手に、元バスケ部が2人いて、自由にボールを運ばれた。苦しみながらも、何とかゴール下でゴールを重ね、2点差で勝った状態で残り10秒。気が抜けて、バスケ経験者をフリーにしてしまい、3ポイントを決められて負けた。漫画みたいな展開で負けてしまった。

 これで男子バスケは準優勝。優勝の行方が分からないまま、3日目の最終種目のリレーになった。集計の結果、僕等6組はリレーで優勝すれば文句なしの優勝だが、優勝を争っている1組と3組に負けてしまうと結果は分からなくなる。とにかく勝てばいいのだと、みんなで円陣を組んでリレーに向かった。みんな僕に期待しているのか、『頼むよ』『お願い』など、みんなに声をかけられた。

 祐佳は第一走者で、


「私は1位になるからね」


 と言っていた。僕にバトンを渡す女子走者は理絵だ(笑)別れてから気まずくてほとんど話してなかったが、この体育祭で練習とかも含めて話すようになり、クラスを優勝に向けて引っ張る僕を見て、


「涼真って、ツンツンしてるだけかと思ったら、いいところあるんだね」


 と言われた。まあクラスではそうゆうキャラだったのでしょうがない。

 そして、最終種目のリレーがスタートした。祐佳は本当に1位で来たが、徐々に抜かれていく……第8走者の将大に渡った時には5位だったのだが、将大が1人抜いて4位になった。理絵も4位のまま来そうだ。でも、1位~4位まではほぼ団子だったので、これはもらったなと思った。ちなみに、1位のクラスのアンカーは浩太だったが、並んでいるときに、


「この差はきついわー」


 と言っていた。僕がアンカーにいることを計算していたのだろう。サッカー部員は僕の足の速さを十分知っている。

 理絵から、


「お願い!」


 と言われバトンを受け取った。アンカーは1周走る。僕は、最初からギアを上げ、半周で2人を抜いた。歓声が上がり、盛り上がっているのが分かる。残り1人をゴール手前の直線で抜き去ってゴール。予定通り1位になり、僕等は総合優勝を果たした。僕は大活躍で体育祭を終えた。



 前置きがかなり長くなったが、要するに紗良は体育祭での僕の活躍を見てかっこいいと思ったらしい。紗良はこの時、高1で、2つ下だった。野球部のマネージャーをしており、新入生ではかわいいと言われていた。背が高く、スラっとした子だ。おっとりした話し方で、ザ・女の子という感じだった。体育祭が終わって数日して、高1のサッカー部の後輩が練習後に僕に、


「紗良ちゃんが涼真さんのことかっこいいって言ってましたよ」


 と言ってきた。


「紗良ちゃんって誰?」

「1年の野球部のマネージャー分かりません?」

「1年のマネージャーって2人いない? どっち?」

「かわいい方です」

「2人ともかわいくない?」

「いや、紗良ちゃんの方がかわいいですよ。茶髪の髪が長い方です」

「分かった! 確かにかわいいわ。じゃあ、オレのアドレス教えていいよ」

「マジでいいんですか?」

「大丈夫。ちゃんと教えとけ」

「分かりました」

 

 こんなやりとりをした。僕は高校になってから、いろんな人伝いで連絡先を聞かれることが多くなっていた。学校の先輩や後輩、他校の生徒などいろいろだ。彼女がいる時は断ったりしていたが、いない時は遊んだりしていた。今回は綾さんと別れて、メールする相手もいなかったので、軽い気持ちで言った。

 そしたら、数日後メールが来た。そこから、何日かメールをし、一度一緒に帰ることになった。部活後一緒に帰ったのだが、紗良はめちゃくちゃ緊張していた。憧れの先輩と帰るのが恥ずかしかったらしい。僕もそんな先輩になることができたのか……。なんて思っている場合ではない。本当に目も合わせてくれないし、会話もあまりしてくれない。メールでは結構話していたのに、実際だと全然話せないらしい。一応先輩らしく、いろいろこっちから話はしたので、無言ということにはならなかったが……。別れ際、


「嫌じゃなかったらまた一緒に帰ろう」


 と言うと、


「嫌じゃないです。またお願いします」


 と言われた。最初のうちはこんな感じだったが、何回か一緒に帰っているうちに、少しずつ普通に話せるようになってきた。本当にほんわかした子で、天然と言われているっぽい。僕の中では初めてのタイプの人だった。何回か帰ったりメールをしたりしているうちに、僕の事好きなのかなーと思ったので、一緒に帰った時の別れ際に、


「付き合おう」


 と言った。そしたらビックリする答えが返ってきた。


「涼真さんに言ってなかったんだけど、私実は地元に彼氏がいて……」


 おいおいマジかよ……おとなしそうに見えて、やっぱりかわいい子はやることやってんだな。と、当然口には出さないが思った。でも、一応押してみる。


「そっか、オレは紗良ちゃんと一緒に帰ったりして良いなって思ったんだけどな」

「私も涼真さんと付き合いたいって思ってる」

「彼氏はどうするの?」

「別れようと思ってるんだけど、なかなか上手くいかなくて」

「そうなんだ。じゃあオレは待ってるよ」

「本当に? いいの?」


 ここまで来てダメと言えるわけがない。良いのか悪いのか、僕はこうゆうことも含めて恋愛を客観的に見て楽しめるようになっていた。ダメなことだが……。


「いいよ。オレも紗良ちゃんと付き合いたいって思ってる」

「ありがとう。ちょっと待っててね」


 そう言ってバイバイしたのだが、その数時間後にメールが来た。


『彼氏に別れようって言った。好きな人できたって言ってもう終わりにした』


 というような内容だった。行動早いなー。そうして晴れて付き合うことになった。付き合って数日後、僕はサッカーで靭帯を損傷し、数日松葉杖で過ごした。

 夏休みに入り、松葉杖が外れ、サポーターで過ごすことができるようになったので、そうなってからは部活後遊んだりしていた。そして、8月の七夕の前夜祭の花火の日が近づいてくる。僕は中2の「あの」花火大会以来、見に行っていない。中3の時は遥香が転校し、別れたショックから立ち直れず行かなかった。剛と祐佳の邪魔になるだけだとも思った。高校に入ってからは、ちょうど夏休みに彼女がいなかったので行かなかった。良い感じの人に誘われたりしたが、理由をつけて行かなかった。でも今回は行かないわけにはいかない。花火大会どうするかという話をしたところ、紗良の友達で望ちゃんという子がいて、その子がサッカー部のノブのことをかっこいいと言っているらしい。なんとかくっつけたいと思うから、僕がノブを、紗良が望ちゃんを誘って4人で行こうという話になった。

 ノブは確かにイケメンだけど、完全なビビり野郎で、女子に手を出せない男だった。でも、望ちゃんは1年生で1番かわいいんじゃないかと思うほどかわいい。そんな子から気になっていると言われればノブもその気になるだろう。そう思いながら誘ったら、ノブは、


「そんなの絶対嘘だろ。望ちゃんがオレのこと気になるなんて。騙そうとしてるだろ?」


 でたよ……ネガティブ野郎め……。


「嘘じゃない。お前は顔だけ見ればサッカー部で一番のイケメンだ。でも、チキンな性格なせいでチャンスを逃してるだけだ。めんどくさいから、とにかく花火の日予定空けておけよ。予定入れたらしばく」

 

 なんとか約束をとりつけ、花火大会の日、ノブと待ち合わせをする。2人が来るまで、少し話した。


「花火は別々で見て、その後合流して飲みに行くから、いい感じだったら告れ」

「無理だよ~」

「無理じゃねーんだよ。誰が見ても勝ちゲームなんだよ。いい加減にしないと選手権前にキャプテン権限で坊主にするからな」

「それは関係ないだろ」

「うっせーな。関係あんの。優勝目指してるチームのレギュラーがこんなとこでビビんな。菅野信行ビビり改善プロジェクトなんだよ」

「これはもう聞かないモードか?」

「分かってるじゃん。理解してくれる仲間がいるって素晴らしい」

「よく言うよ……」

「大丈夫だって。花火の途中手を繋いで、『オレと付き合おう』でいいんだよ」


 強引に告白させる約束をした。

 そして、2人と合流して、花火の上がる西公園に向かった。2人は浴衣を着ていた。西公園で別行動をし、花火はそれぞれ見た。僕と紗良も手を繋いで花火を見た。そして花火が終わり、ノブに電話し、行く予定だった飲み屋の前で集合することになった。

 ノブと望ちゃんが集合場所に手を繋いで現れたので、付き合うことになったのだなと思った。そして、4人でお祝いも兼ねて、飲み放題で飲みまくった。2時間飲み放題が終わるころ、紗良は飲みすぎて吐きそうになっていた。望ちゃんは気分よくフラフラになっていた。望ちゃんの終電も迫っていたので、ノブは望ちゃんを駅まで送り、僕は紗良の介抱をした。意識はハッキリしていたが、普通にトイレで吐いていた。吐いて少しスッキリしたみたいだったが、


「ごめんねー」


 と言っていた。このまま帰るか?と聞いたが、帰りたくないと言ったので、ホテルに入り、休憩してから、家まで送っていった。

 その後も夏休み中は毎日のように会っていた。

 ちなみに、ノブと望ちゃんは3週間で別れていた。ノブに理由を聞いたところ、あっちから言われたらしい。ノブは、


「最初からそんな好きじゃなかったんじゃない? たぶん勢いで付き合ってしまったんだよ」


 と冷静だった。

 僕は、


「なんか、ごめん……」

 と謝った。


「お前のせいじゃないだろ(笑)」


 と笑っていたが。


 夏休みが終わると、僕は最後の選手権と足のリハビリで、他のことは考えられない状態になっていた。夏休みが終わって、一ヶ月くらいがたち、久しぶりに紗良と帰ったときのことだった。


「私、やっぱり前の彼氏のことが好きみたいで……」


(でたよ……なんで女ってのは少しオレがサッカーに集中するとすぐ、他の男に行ったり、気持ちがなくなるものかね……)


 サッカーしているところがかっこいいと言われても、本気で応援してくれる人なんていない。きっと、『サッカーしている僕』ではなく、『強豪校のサッカー部のレギュラーの肩書き』しか見てないのかなと思った。紗良と付き合っていた頃は、女なんてみんなそんなもんだろ。と割り切っていたため、紗良ともゲーム感覚で駆け引きをすることができていたのだ。それを感じ取られていた可能性はあるかもしれないが……。


「前の彼氏と話したりしたの?」

「最近、ちょくちょく会うようになって、2人で遊んだりして、浮気しちゃったんだよね……前の彼氏は小学校の時から一緒で、私の事よく分かってくれているの。それでね、前の彼氏は……」


 と、言い訳みたいな話と、元カレとの関係を話し始めた。僕は、


(自分は悪くないオーラを出すのは辞めてもらいたい……)


 と思っていた。でも、小学校から一緒で、分かってもらえると聞いて、僕は一瞬、遥香を思い出した。

 紗良と元カレも一緒なのかな。と思ったが、話を聞いていると、お互い依存しているだけの関係のようであり、今後うまくいくような関係には思えない。きっと紗良と元カレは同じようなことを繰り返していくのだろうな。と考えていた。相手のことを本気で想って、お互いに尊敬し、高められる関係なら、こんなグダグダにはならない。

 あとは勝手にしてくれ。と思っていた。途中から半分以上聞き流していたが、一応最後まで話を聞き、


「じゃあ、別れようか。その男の所に行きたいんでしょ?」

「うん、ごめんね……」

「大丈夫だよ」

「最後の大会頑張ってね。応援してる」


 絶対嘘だろ。もう新しい男のことで頭がいっぱいなくせに。

 そうして紗良とは別れた。その後のサッカー部の後輩の話だと、紗良とその彼氏は付き合っては別れてを繰り返したようだ。高校を卒業し、彼氏は働き紗良は大学に行ったが、彼氏がギャンブルにはまり、ヒモ状態になり、それでも離れられず、バイト代をほとんど取られていたらしい。その後は知らないが、そんな関係で幸せになれるはずがない。


 また、紗良と別れた後、望ちゃんから連絡が来るようになり、頻繁に2人で飲みに行ったり、遊びに行ったりしていた。望ちゃんはその時ノブではない他校の彼氏がいたが、自由な人だったので、別に彼氏がいても良いと言っていた。望ちゃんいわく、僕とは話が合って楽らしい。望ちゃんは周りから魔性の女と言われていた(笑)きっと、この時の僕とはゲーム感覚の恋愛をしているという点で価値観が合ったのだろう。お互いそんなダークな部分を他人にさらけだすわけにいかない。2人で話すときは本音で話したりしたので確かに楽だった。望ちゃんとは誰にも言わない、完全に割り切った関係がしばらく続いた。


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