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高校編1

 遠征が終わり、少しのオフを挟んで入学式がやってくる。ここから僕の高校生活が始まる。


 僕の高校生活は、サッカー一色だった。サッカー部での思い出、サッカー部の仲間たちと過ごした青春。それが全てだったと言っても過言ではない高校時代だ。


 うちから高校までは遠い。電車とバスを乗り継いで、1時間くらいかかる。久しぶりに祐佳に会い、一緒に入学式に行った。普通科5クラス、理数科1クラスなので、同じクラスになるのは分かっている。私服の高校なのでスーツで行った。教室に行き、僕が感じた印象は、『メガネが多い』ということだった。僕も目は悪く、コンタクトをしているが、理数科はとにかくメガネが多く、いかにも勉強しています。という人ばかりだった。そして女子が少ない。男子が25人いるのに対し、女子は10人だ。その女子の中で1人だけかわいい子がいた。客観的に見たら祐佳が一番かわいいのだが、僕の目に祐佳はその対象では映らない。やんちゃなクラスメイトが多かった中学時代と比べて、かなりのギャップを感じた。


 入学式を終え、祐佳と帰った。


「なんか、中学と雰囲気全然違う。女子少ないけどどう?」

「まあ、女子少ないのは分かってたけどね。友達になれるか心配。女子バスケの子は普通科に多いみたい」

「1人かわいい子いなかった?」

「あー、いたね。キレイな顔してた。手出して別れたら3年間クラス同じだから地獄だよ?(笑)」

「確かに(笑)祐佳は明日からバスケ?」

「うん。さっそく練習行こうと思って、さっき顧問の先生にお願いしてきたよ」

「オレも明日からまた練習。そういえば、通学どうする? オレ朝電車混むの嫌だし、自分のペースで行きたいから、チャリで通おうかと思ってんだけど」

「えー、遠くない?」


 家から学校まではおよそ15キロある。


「時間的に電車でもなんだかんだ乗り継ぎを合わせたら1時間くらいかかるし、自転車でも似たようなもんだよ」

「私はさすがに電車だな。じゃあ、帰りとか時間合えばたまに乗せてって」

「いいよ。じゃあ朝はお互い別で行くか」

「涼真に合わせてたら毎日遅刻するから嫌だ」

「さすがに高校では真面目にやるわ。あの雰囲気で中学と同じことしたら確実に浮く」

「涼真も高校生になって大人になったもんですね」


 祐佳はたまに遥香と言うことが被る。遥香と祐佳はずっと一緒にいたからその影響なのか、祐佳も遥香もダメな男に注意をする立場だったからそうなったのかは分からないが。そんなことを思い、遥香が今どうしてるかを聞こうと思ったが、やめた。そして、真面目にやると宣言したものの、その宣言は口だけのものとなってしまう。



 次の日から僕はMDを聞きながら自転車で登校した。1時間弱で学校に着いた。僕は自転車通学を3年間ちゃんと続けた。そしてサッカー部に僕も含めた1年生が入部し、最初のミーティングが開かれた。監督をはじめとするスタッフの挨拶があった。スタッフは監督・コーチの顧問・トレーナーの顧問・外部コーチ・外部キーパーコーチの5人だった。公立のサッカー部なのにスタッフは充実していた。そしてキャプテン、副キャプテンの挨拶。1年生の自己紹介と続いた。1年生は25人入部した。全体で60人ほどになった。ちなみに1年生は1年間で9人辞め、最終的には16人になったのだが……。毎年こんな感じらしい。入ったはいいが厳しくてやめる生徒も結構いるということだった。マネージャーは各学年1人ずつで3人。このメンバーでまずはインターハイに向けて頑張ろうということだった。目標は当然、県大会を制しての全国大会。先輩たちも気合が入っていた。

 僕と浩太は遠征の活躍もあり、入部してすぐにAチームに入った。そのため、部活で絡むのは常に先輩で、あまり同級生のサッカー部員と最初は話すことが少なかった。後から聞いた話だが、この頃の僕は、先輩と仲が良いし、話しかけにくいオーラがあったらしい。


 僕は必至だった。せっかくAチームに入ったのだから、何としてもユニフォームをもらいたいと思っていた。今年の1年生は結構良い選手が入ってきたらしい。中学校の時は僕より全然有名だった選手がいっぱいいる。ベガウスジュニアユースの浩太を始め、県大会優勝した、白越中のエース将大、中学の時同じ地区だった、地区トレセンの選手で宮城野原中のキャプテン篤、蒲沢中で地区トレセンだった拓也、クラブチームで県トレセンまで入った洋介、東北大会に出た平山中のキャプテン優太、地区トレセンのノブ。などが有力選手だった。

 僕は、たまたま今Aチームでやっているが、いつ落とされてもおかしくない。もちろん先輩にも県トレセンに選ばれている選手を始め、うまい選手がいっぱいいた。僕がなぜAチームにいたかというと、とにかく足が速かった。昔から速かったのだが、中3くらいからは更に速くなり、断トツで学年1位。50メートルを6秒前半で走れていた。身体能力も高く、体の無理もきいたため、高1でもフィジカルでは高3にも負けていなかった。

 当時、技術がそこまでなかった僕が選ばれていたのは、そうゆう面があったのだと思う。


 高校生活が始まり、周りは高校の授業や新たな友達作りに結構必死だったが、僕はそれどころではない。4月下旬の地区予選に向けて、サッカーしか頭になかった。おかげで勉強は完全に出遅れた。しかし、必死に取り組んだ甲斐もあり、インターハイの地区大会は20人のメンバーに入ることができた。背番号は16である。レギュラー番号ではないがユニフォームをもらえた。そして、この16番は今後、僕にとって縁のある番号となる。1年生でユニフォームをもらえたのは僕と浩太だけ。浩太はレギュラー番号をもらい、スタメンに入りそうだった。


 インターハイの地区予選は、仙台地区の高校が8つのグループに振り分けられる。1グループだいたい4チームとなり、その中でリーグ戦を行い、2位までが自動的に県大会に出場できる。3位のチームは代表決定戦に回り、各グループの3位8チームでトーナメントを行い、1位だけが県大会に出場できる。うちは3連勝で1位抜けしたが、予選では僕の出番はなかった。


 ゴールデンウィークが終わり、さすがにクラスでも部活でもいろんな人と話すようになってきた。僕はなぜか女子に人気が出たらしく、他のクラスの女子達が理数科の6組に来て、僕の方を見てキャッキャッ言っている。中学校の時は、遥香がいたし、男女関係なく結構みんな仲良しだったということもあり、あまり感じなかったが、どうやら僕は黙っていればまあまあカッコ良いらしい。休み時間あまりにも騒がしかったので、祐佳の所に行って聞いてみた。


「あれなに?」

「あー、涼真の番号とアドレスを聞こうとしてるらしいよ。理数科にイケメンがいるって女子の間で話題になってるみたい。バスケ部の先輩も涼真のことカッコいいって言ってた。私が同じ中学校だからって、いろいろ聞かれたもん」

「マジかー、どうすればいい?」

「どうもしなくていいよ。どうせ今だけ。涼真の毒舌と本性知ったら、離れていくって」

「そんなことある?」

「あるある。涼真どうでもいい人にはすぐ『消えろ』とか『死ね』って言うし、人が気にしてることハッキリとズケズケ言うからね。普通の人は嫌いになります」

「そこまで言う? 何かお前今日機嫌悪い?」

「別に~。ほら、何か来たよ」


 そう言われて振り返ると、他のクラスの女子が数人いて、その中の1人が、僕に連絡先を聞いてきた。僕は、


「別にいいけど」


 と言い、アドレスを教えた。その女子達は、走って自分の教室に帰って行った。


「その態度と言い方も冷たいんだよね~」


 祐佳が言った。こんなの昔からなんだから急には直らない。その後も何人かから連絡先を聞かれる。


 僕は夏希とあっさり別れて、あまり好きでなくても付き合ったりすることができる自分がいることに気が付いた。流れに身を任せた方が楽だと思った。

 サッカーに集中するため、僕は恋愛に本気にならないようにしようと決めた。高校では来るもの拒まず、去るもの追わず、良い感じになったらゲーム感覚で恋愛の駆け引きを楽しむ。その程度でいいと感じていた。

 遥香のことを多少引きずっていたのかもしれないが、高校の頃は、サッカーが第一で、本気で好きな人はできなかった。付き合う期間も1年も持たず、最終的にはあっちから別れを切り出されるというパターンだった。高校では3年間で5人と付き合った。


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