表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

赤黒い地面と逃げ続けた配達人

空を見る限り、ここは地球のようだ。青い空。白い雲。ただ一つだけ違うのは照らしている太陽が二個あることだった。太陽の近くにもう一つ、太陽がある。双子のようだと思った。遠くに見えるのは森、だろうか。木がたくさん生えている。そのまま視線を落とすと先ほど気付いた赤黒い地面が限りなく広がっている。


地球によく似ているが、もしかしたら違うのだろうか。


自分が今いる所は小高い山になっていたのでとりあえずその辺を探索してみようかと立ち上がる。自分が今いた場所をよく見てみると、小高い山だと思っていたそれは死体の山だということに気付いた。


「うわっ!!!!!」


思わず、尻もちをつく。しかし、手で触れるものすべてがその死体だったので俺の手にはべっとりとどす黒い液体が付着することになった。


「なんだよこれ!!!」


俺は勢いそのままその小高い山、もとい死体の山から飛び降りる。しかし、着地した先にあったのもまた死体だった。


「ひぃっ!!!」


俺はそれから逃げるように走った。とりあえず先ほど見えた森へ。森の中ならこの死体を見ることはないだろう。足を踏む度に伝わる粘着感と柔らかさを必死で無視しながら俺は一心不乱に走った。周囲を見渡すと、その死体のような地面もずっと見渡す限り続いている。頭がおかしくなりそうだった。


ようやく森に着くと、俺は急な吐き気に襲われてその場で吐いた。こんなところ地球なわけがないと思いながら。


胃の中の物をあらかた吐き終えたところで俺は地面に何かあるのに気付いた。引っ張ってみるとそれは楽にするりと抜けた。これは草か?途端、うねうねとその草は動き出す。ミミズのような動きに驚いて俺はそれを放り投げた。よく見ると、その森に広がっていたそれは草ではなくすべて先ほど手に取ったミミズと同じ形をしており、俺に気付いたそれらは一斉にうねうねとその場で動き始めた。また俺は小さな悲鳴をあげてその場から走り出す。


「なんなんだよここはー!!!」


どこに向かえばいいかも分からず、俺は走った。何も見ず、足元の触感すら無視して。どこかに辿り着ければそれでいい。この状況を説明してくれる誰かに会えれば。


気付くと足元にあった死体は石畳へと変わっていた。人の手で作られたであろうそれに安堵しながら俺はそこで勢いよく倒れこんだ。もうわけがわからない。一体ここはどこなんだ。


寝返りを打って仰向けになる。いったい何時間走り続けたのか、空はとっくに黒に色を変えていた。神社に到着した時に見たあの空と同じ色。少しだけ安堵すると急激に体に疲れがやってきた。


もうどうしたらいいんだ。


瞬間、石畳の脇の方から犬の鳴き声のようなものが聞こえた。犬だ。やった。初めて見覚えのある生き物がいた。そちらに目をやると、闇に紛れて何か生き物が蠢いている。


「おいでおいで」


少しでも癒しを求めようとその犬に向けて手を振る。その犬は少しずつこちらに近付いてきた。ようやくその姿を視認できる距離になったが、しかしその犬はよく知っている犬などではなく、犬によく似た何かだった。


「なんだよおまえ!!!」


フォルムは確かによく知っている犬のそれだ。しかし、前足後ろ足共に3本ずつあり、顔には中央に大きな目が一つ、耳は猫よりも細長く、口は裂けているのではないかというほど開かれている。その口からはおびただしいほどの涎が溢れ出ていた。


一目で危険だと認識する。あれはおそらく人を襲うものだ。なんとか距離を置こうとするが、立ち上がれない。足は痙攣し、腰は引けてしまっている。身体を引きずるように後ずさるが、目の前の化け物の方が圧倒的に距離を詰めるのは早いだろう。


なんとか逃げなくては、その化け物は後ろ足で地面を擦っている。知っている。あれは、飛びかかるときのポーズだ。一瞬の瞬きの間にその化け物はこちらに飛びかかってきた。


「助けてくれー!!!」


俺は身を屈めながら出せる限りの声でそう叫んだ。


しかし、待てど暮らせど俺の体に痛みはなかった。おそるおそる頭を抱えるようにした腕の間から、その化け物を見ると、俺と化け物の間に誰かが立っていた。奥には先ほどの化け物が力なく横たわっている。


「よ、よかった・・・」


初めての人に会えた喜びから俺はそこで意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ