第326話【34万PV感謝特別編】 魔王様とシガーバーとピノノワールと
※喫煙を助長するつもりも、喫煙者を差別するつもりもありませんが、お酒とタバコの関わりは深いわけで今回はタバコ回です。というか毎回酒飲み散らかす話あげてて今更何言ってたんだって感じですね。
お久しぶりです。天童ひなです。ガールズバーの同僚で女子大生の友達、犬神金糸雀さんは大のお酒好きで色々教えてもらうんですが、喫煙者じゃない金糸雀さんですが、バーではタバコを吸う事があるらしいです。タバコと言っても海外製のリトルシガーやシガリロの香りを楽しみながら洋酒を嗜むそうです。そこで私が気になった事があるんですよね。
「魔王様ってお煙草は吸わないんですか?」
魔王といえば、赤いワインを揺らしながら親指みたいな葉巻を吸うイメージじゃないですか? それはイタリアマフィアだって? 私の勝手なイメージについて聞いてみたところ。
「くーはっはっは! 吸っても腹は膨れぬからな。それにこの世界、分煙をする程喫煙という行為への背徳観念が大きいと見ている。大多数が好まぬ物を民の手本となる余が行うわけがなかろう」
という事です。
こういうところを見習ってくださいね! 日本の政治家のみなさん!
という事は、環境が揃えば魔王様はおタバコをお召し上がりになるという事ですね。海外の老人ホーム的なところでは喫煙者はホームの人がしっかり本数管理して嗜好品として楽しめるみたいですし、一部の精神病に関しては飲酒や喫煙を促される事もありますし、百害あって一利なしというわけでもないみたいですね。某女子大ではタバコの中の発癌性物質から癌を抑制する物質を見つける研究をしていますし、一利はあるという事は証明されています。
そしてなりより、私! ニコチンの入ってないシーシャは吸った事がありますが、葉巻ってみたことすらないんですよね。
「魔王様、本日はシガーバーに行ってみませんか?」
「ほぅ、説明を許す」
「ありがとうございます。要するに葉巻を吸う事をメインとしたバーですね」
「くーはっはっは! 想像がつかぬな! 面白し、案内するといい!」
「友達曰く銀座もオススメらしいんですが、コスパの良い渋谷のお店をチョイスしてもらいました。いきましょう」
※東京はシガーバーに行かなくても銀座あたりのバーは割と葉巻があります。大阪は条例の違いなのか、葉巻をおいてるクラッシックなバーは少なかったです。他地域はよくわかりません。今年の夏、東京・大阪で三十店舗程入ってみた感じの所感です
通は自分の好きな葉巻を持ち込むみたいですが、私も魔王様も普段一切喫煙をしないので何が良いのか全くわかりません。という事で、お店でオススメしてもらう事にしました。
某ホテルにある立派なお店にやってきました。普段こういう場所に行き慣れていない私は心音が高鳴りますが、
ガチャリ。
「やっておるか?」
魔王様、流石です! 普段の格好が燕尾服のような洋服にマントの魔王様は店内にあってますね。一応、私はドレスコードとしてオータム・ウィンター兼用のドレスを着用しています。いろはさんに借りたんですけどね。
「どうぞ、お好きなお席におかけください」
店内には本当にイタリアマフィアのボスみたいなお客さんがリラックスして葉巻と向き合っていたり、大人の女性がグラスワインを嗜みながらスマホを見ていたり、なんだが別世界のようです。
「マスターよ。余達は葉巻に関して全く明るくない! 故に説明を所望する! くーはっはっは!」
「かしこまりました」
普段喫煙をしない事、お酒には目がない事、私は水商売で、魔王様はタバコを吸う家来もいるという事で特に煙が苦手ということもない事を伝えると、喫煙者じゃない方にオススメだという一本の葉巻を提示してくれました。
「ロミオ・イ・ジュリエッタなどいかがでしょうか?」
ロミオとジュリエットという銘柄の葉巻、マスター曰くキューバの三大ブランドの一つらしいです。魔王様は「それをもらおうか! して、酒は赤のフルボディをいただこう」とマスターに説明してもらった味わいに合うと思ったんでしょう。赤ワインを所望されました。
「かしこまりました。ご希望の銘柄はございますか?」
「ひなよ。希望はあるか?」
「いえ、銘柄とか分からないので」
「ではマスター。ピノノワールで作ったものをいただこう」
「かしこまりました」
魔王様は金糸雀さんとお話をするとものすごく話が合いそうな気がします。銘柄じゃなくてブドウの品種で選んだりするところが住む世界が違う人だなぁって思いますね。
お店の従業員の方が葉巻の吸い方をレクチャーしてくれます。葉巻カットで吸い口を作ってターボライターで火をつけて、一服。肺には入れずに口内喫煙をするみたいです。葉巻の香りと味を口内と鼻腔で楽しんで煙をゆっくり潜らせてあげる。
「では、お二人ともお試しください」
「はい!」
「うむ!」
葉巻専用の強力な火力のターボライターで私と魔王様の葉巻に火がつきます。そして、恐る恐る人生初めての喫煙!
いっきまーす!
従業員の方に教わった葉巻の吸い方はブランデーを転がして飲むようにが近いかもしれないとの事で、私は口の中で煙を転がしてみます。1程かけてゆっくり楽しむという事ですが、タバコというヤニ臭いイメジーと違って、なんでしょう。芳しいですね。
「ふぅー」
煙をゆっくりと吹いてみると、ガールズバーのお客さんが吸っている紙タバコの煙とは重さ? が違う気がします。魔王様は……
!!!!!!
店内のみんなが注目するくらい様になってますよ! 葉巻を一服すると赤ワインの入った大きなチューリップグラスを持ってそれを一口。
「ブルゴーニュのワインであるな」
「仰る通りです。ルイ・シャド・ブルゴーニュ・ピノワールでございます」
マスターがそう言うので魔王様は葉巻の灰をタバコとは違い押しつぶすように落としてます。灰がまわないマナーだとさっき教わりましたが、やっぱり様になっています。
「もっと美味いワインもあろうが、何故これを出したのだ? 聞かせてもらおうか?」
もう答えは分かっているという風なイタズラ少年みたいな笑顔を見せる魔王様。それにマスターも同じ笑顔で笑うと。
「そちら、美味しい物ですが、お客様がお気づかれたとおりブルゴーニュワインの一番下のランクになります。葉巻を引き立てていただくには十分かと」
「クハハハハ! 気に入った! やはりそうであったか! 実によくあうくみ合わせである!」
全然分かりません。魔王様はマスターとの小洒落た会話を楽しみつつも葉巻も忘れません。私たちの葉巻は大体50分程で燃焼するらしいんですが、私ワイン無くなっちゃったんですよね。
「お客様、何かのまれますか?」
「えっと……ハハっ! 何かおすすめってありますか?」
「カルヴァドス。りんごのブランデーなんていかがですか?」
「じゃあそれを」
「かしこまりました」
そもそも、バーという場所に普段くる事がないです。ワインもスーパーのアルパカとかしか飲んでないのであまりわからないんですよね。
「余はブッカーズをダブルストレートでもらおう」
「かしこまりました」
葉巻を半分程吸ったあたりで魔王様が私に言いました。
「ひなよ。良い店だ! 褒めて遣わす」
「あはは、気に入ってもらえてなによりです。私は何が何だかわからないです」
「ほう、それは面白い楽しみ方であるな」
楽しみ方じゃなくて……そっか、こういうお店に慣れている人や慣れちゃったら私みたいな感じって今しか味わえないのかもですね。この新鮮さと若干の場違いかも感を楽しむのもいいかもしれません。
なんだか、紙タバコと違って、葉巻のお洒落感は半端ないですね。これを毎日吸いたいか? とは私は思いませんけどこういう場所で一本嗜んで帰るのはいいかもしれません。
「アボガドとトマトのオーブン焼き。お待たせしました」
「!!」
「あと、ビールを2杯もらえるか?」
「すぐにご用意いたします」
魔王様、数少ない食べ物メニューを注文されていました。そしてそのメニューに合いそうなビールまで。
「では〆にビールをキメる事としようか? 乾杯である」
「乾杯です!」
あはは、やはり魔王様にはなんでもお見通しみたいですね。
ビール飲みたいな! って思ってました。
特別な時に、また葉巻を吸いにきてもいかなって思える思い出になりましたね。




