第312話 シトリーと鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)とCRAZY OCTOPUSと
「ミカンちゃん、またこんなの買ってきて……」
「これを食べれば上弦の鬼になれり!」
「おぉお! あの類を見ないヘタレなジャンプのラスボス。鬼舞辻無惨のスナック菓子であるか!」
「あの、クソ器の小ささが癖になり!」
鬼滅の刃のラスボスのお菓子とか、どうなってるのよ。最近はメーカーがよくネタに走るけど日本もいよいよ来るところまでキテるわね。という事で今日のオツマミが決まってしまったわね。
「じゃあ、合わせて唐辛子のお酒でも飲んでみる?」
築地銀だこがコラボして作ったソースに合う辛いお酒という事で、唐辛子のスピリッツがあるのよね。
「CRAZY OCTOPUS! 結構美味しいわよ」
昔、兄貴がドラキュラ的な名前の唐辛子のお酒を飲んでたんだけど、それが気になって購入したのよね。
※どこの国のお酒か、もう分からないんですが、当方が探しているお酒の一つになります。ドラキュラのイラストが入った、ウォッカにそのままペッパーが漬けられているお酒で知っている方がいればご一報ください。
「いやぁあああああ! 嫌なりぃいいいいいい!」
「えっ、ミカンちゃんどうしたの?」
「草薙素子が、電子の海にいった……」
最初、意味が分からなかったんだけど、ミカンちゃんの大ファンの声優さんが亡くなったらしいわ。超有名なのが攻殻機動隊の草薙素子。最近だと葬送のフリーレンのフランメ役。まだ61歳という若さで、ご冥福お祈りいたします。
「うむぅ、惜しい人を失ったであるな。勇者よ。我らに最高の時間を与えてくれた女傑を笑って送るのも残っている者の役目ではないか?」
「ぐす……遅れり……」
ミカンちゃん、ほんと日本に来て光の速さでオタク文化を吸収しているわね。じゃあ、お酒の用意をと思った時、
ガチャリ。
「誰かいませんかー?」
「この声は……!」
とデュラさんが呟き、玄関に向かってるわね。
「お兄様!」
「おぉ! シトリーではないか! よくぞ参ったであるぞ!」
そこには、エルフとは違った感じで尖った耳に、牙、そして目元の濃いメイク。これは……きっと魔物系ね。ジャンパースカートをはいたいいところの女学生みたいな子がやってきたわ。
「こんにちは、私は犬神金糸雀。この家の家主です」
「我も居候させてもらっているであるぞ!」
「あっ、私としたことが……人間だから殺そうとしたけど、お兄様のお知り合いでしたら失礼致しました!」
てへっ! と笑うけど、普通に怖いわね。普通に私を殺そうとしてたのね。デュラさんの妹?
「デュラさんって妹さんいたんですか?」
「いやいや、シトリーは悪魔の後輩みたいなものであるな。我が大悪魔で、こやつが、地獄の一、領主の一人であるぞ!」
「へぇ、地主さんですか? 凄いですね」
「そんな大層なものではございません」
根は良い子っぽいわね。デュラさんの妹分だし、大丈夫な感じがひしひしと伝わってくるわね。ニケ様やセラさんみたいな善寄りの狂気とか、スクさんの純真な狂気とかを相手にしていると、極端な子ってむしろ可愛くすら思えている自分が嫌ね。
「今からお酒飲むんですけど、シトリーさんもご一緒にどうですか?」
「お呼ばれされちゃいます!」
スカートの端を持ってあの貴族のポーズね。これ最初に考えた人天才よね。だって可愛いもの。と言っても激辛のお菓子と激辛のお酒なのよね。
「シトリーさんは辛い物大丈夫ですか? 今日はネタに走って変な組み合わせなんですよね」
「地獄は辛い食べ物が多いので大好きです!」
あー。地獄がどんな所か知らないけど、暑い所って極端に辛い物と甘いもの多いイメージあるわよね。じゃあ安心という事で、私は小皿に鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)を入れる。無茶苦茶長い名前ね。メーカー、本当にそういうところよ! これ……結構辛そうね。
「お酒はソーダ割り、オンザロックがオススメだけどどうする?」
「勇者、しゅわしゅわー!」
「我は……オンザロックで」
「ではお兄様と同じ飲み方でお願いしますわ!」
「はーい!」
私も最初はソーダ割りで行こうかしら。全員にグラスが行き渡ったところで、私はグラスを掲げて。
「暑い夏こそ、辛い物で乗り切りましょう! 乾杯!」
「乾杯なり!」
「乾杯であるぞ!」
「金糸雀さん、人間なのに盛り上げ上手ですね!」
ええっ! 普通でしょ? みんなクレイジーオクトパスを飲んで「「「!!!」」」驚いてるわね。唐辛子漬けのお酒って、最初の一口目がガツンときて、次に爽やかで、お腹の辺りから熱くなるのよね。いいじゃない! いいじゃない! 久しぶりに異世界組の驚いた顔が見られたわ。
「んまい! 勇者おかわりかもー!」
「早いわねミカンちゃん、2杯目どうぞ」
この手のお酒は作るのも簡単だからいいわ。カクテル系をがぶ飲みされると面倒なんだけど。ミカンちゃんはクレイジーオクトパス気に入ったみたいね。
じゃあ、本日のおつまみを実食しましょうか?
「鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)も食べてみましょう」
食べれば上弦の鬼になれるらしいわ。この適当な裁定も鬼舞辻無惨様っぽくていいわね。自分のワガママで自分の腹心殺しまくった挙句追い詰められた時のあの言い訳の数々、実にリアルだなと私も思ったわ。
にしても。
「辛っ! 暴君ハバネロみたいな暴力的な辛さじゃないけど、これちょっと、相当辛いわね!」
「うむ! クレイジーオクトパスとよく合うであるな!」
そりゃ唐辛子と唐辛子だしね。そういえば、18禁の激辛チップスで少し前に高校生が搬送された事件あったわね。ミカンちゃんの部屋にもあるけど、あれいつか食べるのかしら?
「うみゃああああ! 鬼舞辻無惨のポテトスナックうみゃあああああ!」
「口の中がほっかほかになりますねー! はなまる!」
シトリーさんはそう言って美味しそうに鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)とクレイジーオクトパスのオンザロックをお代わりしていくわ。空気も読めていい感じの飲み会ね。
「シトリーさんってどんな悪魔なんですか?」
「恋愛と色欲ですよ。マンネリ気味の恋人の恋愛を燃え上がらせたり、童貞や処女の夢に登場して精気を吸ったりします」
うわー! 凄いわね。キューピットとサキュバスの側面があるのね。悪魔って大概が天使とか他の神様の成れの果てだって言ってたからきっとシトリーさんは元そういう系の悪魔なのね。
「金糸雀さんは、なんか強烈な色欲と暴食と強欲と怠惰に取り憑かれていますよ? 大丈夫ですか?」
「えぇ、スクブスと古代のエルフと勝利の女神と勇者だから問題ないわ」
自分で言ってて世も末ね。まぁ、スクさんは自分の本質に忠実なだけなのかもしれないけど。それにしても私がモテるのって私が嫉妬するような美女ばっかりなのはなんでなのかしら?
「えぇ、勇者怠惰じゃなき。時が来ていないだけなりにけり」
その時、多分絶対来ないでしょ? 本当の悪魔であるデュラさんがいるのにデュラさんは大罪のどれでもないのね。ほんと……異世界組、ほんと。
鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)が美味しいわ。
ガチャリ!
「うおーい! 金糸雀ー。たまたま近くを寄ったから顔を見に来たぞー! 水。それと酒」
そう言ってセラさんが当然のように、テーブルに座るとシトリーさんを見て「今日は悪魔が来ているのかー」となんか落ち着き払った様子でナチュラルを装った不自然さで入って来たので、シトリーさんがめちゃくちゃ警戒してるわ。
「か、神に匹敵する程のエルフ……なんですかコイツは」
「「クソエルフなり(である)」」
「違う! セラ・ヴィ……まぁいい。私は伝説のーとか言われている知る人ぞ知るエルフだぞ。最近調子に乗ってるマルシルとかフリーレンとかディードリッドとかいう小娘達とはなー」
「でもセラさん、ネームヴァリューないですよね」
「ディードリッドって誰なり?」
「知らんのか勇者! ロードス島のおかげでエルフは美少女という様式美ができたと言っても過言ではないのだぞ!」
なんかややこしくなってきたわね。私は鷹の爪とカイエンペッパーと鬼舞辻無惨の鬼辛ポテトスナック(一味唐辛子あじ)をフードプロセッサーでトマトジュースに割って、それをクレイジーオクトパスとシェイカーでシャカシャカとカクテル。
黙ってもらいましょうとセラさんにカクテルを。
「お待たせしました。エルフ・スレイヤーです」
私たちは辛い! と走り回るセラさんを予想していたんだけど、セラさんは真っ赤なそれをギュッと飲み干して、「おー! ガツンときてガツンときてガツンとくる酒だな! うまい! もーいっぱい!」
「「「「!!!!!!」」」」
シトリーさんは驚愕から完全にビビっているわ。
「かなりあ、たまに悪戯に化け物を生み出してり…………」
そもそも、セラさんって化け物よね? えっ? 私が悪いの?
えっ?




