第303話 モーガン・ル・フェイとこのわたとスプリング・スパークル(清酒のコーラ割カクテル)と
大変失礼しました。
先日10月22日と10月21日同じ話をアップしておりました。
「お邪魔しまーす!」
「おう! 入れ入れ!」
殆ど下着みたいな格好で私を出迎える自分に自信しかない女性。
本日は久しぶりに登場のいろはさんの家に遊びにきています。私がバイトしているガールズバーのリーダー的ないろはさん、彼女の部屋にも異世界からの住人がいます。
「イフリータさん、お久しぶりです」
「金糸雀さん、いらっしゃい!」
本来、勇者に力を与えるイベントの為に神殿にいないといけないらしいんだけど、ミカンちゃん半分ニート的に私の部屋にいるから待ってる必要なくて同じくいろはさんの家に居候してるのよね。
「あれ? なんかエプロンつけて可愛らしい格好してますね」
「今、保育園のお手伝いのお仕事やらせていただいてます」
ほんと、東京っていいわねー。モンスターとか妖怪とかその辺歩いててもみんな原宿ファッションだと思ってるんでしょうね? イフリータさんは、ツノとか尻尾とか生えてるのを除けば美人のお姉さんだから仕事には困らないでしょうね。顔が良いと就職有利だもんね。
「ミカンちゃんとデュラさんはー?」
「今日はねー。シュテンくんの家に遊びに行ってるわ」
「シュテンくん? 誰それ?」
かくかくしかじか説明するといろはさんは転げ回って大爆笑したわ。シュテンくんの中の人がくっそ小心者だから。
「今度サプラーいず! しに行こうぜぇ!」
「シュテンくん、もとい美優さんの心臓止まっちゃいますよ。で? 今日は何飲むんですか?」
「あー、まぁ酒は適当でいいんだけどさー。こいつを金糸雀達とつつこうかと思ってね! どうよ?」
ドン!
といろはさんが見せてくれたのは桐箱に入ったなんらかの珍味……これってもしかして! まさか……
「いろはさん、長崎のカラスミ、福井の越前うに……に並ぶ、三河の?」
「尾張や能登の物も同じ上物らしいけどなー! その、このわたさー!」
「ぎゃあああああ!」
私は咄嗟に土下座をしてしまったわ。
日本三大珍味が一つ、このわた。特上だとちょびっと入って2万円くらいするのよね。いつも、酒盗とかイカの塩辛をこのわただと暗示をかけて食べるくらいいつかはちゃんとした物を食べたいと思ってたのよね。
※産地や格式に拘らなければ三千円くらいから買えます。ただ、この手の物はケチらずに最高品質を買った方が良いかなと個人的には思います。
「やっぱり、このわたですし……日本酒ですよね?」
「ウェーイ! そりゃそうでしょ? なんか適当に日本酒転がってるから選んで……てっか、カクテルにすっか? コーラあるし」
は? こいつ何言ってんだ? っていろはさんに対して暴言を吐きそうになったわ。普通に日本酒そのままでいいぢゃん!
「この前、外国人専用のクラブであーしさー、バーテンのヘルプ行ったんよー! そこで使ったお酒あっから、それのもっか?」
「えっ! あの某、外国人専用の扉からしか入れないあのお店ですか? あそこって日本人入れるんですか?」
「金糸雀、知ってんぢゃん! そうそう、あそこ! 超やべーところかと思ったけど、外国人の盛り上がり方って上品だよねー!」
※外人専用クラブはわりとどこの地域にも実は存在してたりします。当方が付き合いで行ったクラブでウォッカゼリー繋がりで仲良くなって奇跡的に見学させてもらった時は激しい盛り上がり方なりに、日本のクラブと違っ下品さはなかったかなと感じます。そもそもお酒の飲み方が上品で、当方がビールのウォッカ割をガブ飲みしてたら引かれました。映画とかドラマでドラッグの取引とかしてますが、単純に日本の下品な盛り上がりが無理な上品な外国の人が多いのが実情っぽいです。7杯目でHey ,brother stop drinking (もうやめときなよアンタ)とマフィアみたいなお兄ちゃんに注意されましたし。あと、外国人酒弱いですわ。多くて3杯くらいしか飲んでないですね。
まぁ、昔。横須賀基地のイベント後に米軍の人と飲み比べして兄貴軍団が用意してたビール全部飲んでドン引きされたとか聞いたことあるし、日本人の酒の飲み方ってほんと世界的に見てやばいらしいわね。電車で平然とサラリーマンや学生が酎ハイ飲んでる姿とか外国人観光客的には世も末に見えるらしいわ。
「仕方ないなー。じゃあ、白鹿の超辛をコーラと割りますねー」
「ウェーイ! カナにバーメイドさせるとか一時間いくらよー!」
「時給いちまんでーす!」
「おーし、雇った! こんな可愛いバーメイドが家にいるなら安いもんだぜー!」
「えー、マジっすかー! ちょー嬉しいー」
いつものお店でのテンションでお酒を作る準備をしてたら、本来セキュリティが凄いハズのいろはさんのタワマンの扉がガチャリと開いたわ。
いろはさんの部屋のネットワークスピーカーからMrs. GREEN APPLEのMagicが流れているからなのか……
部屋の中に入ってきたのは、ザ・魔法使いみたいな人。
「ここは? アヴァロンではない?」
「ウェーイ! ここはウチだよーん! 魔女っ子くん!」
「火炎の化身、イフリータ……そして人間が二人?」
「おら、人間じゃねぇ! サイヤ人のいろだ!」
「サイヤ人?」
「あっ、今の冗談で、私とこのぶっ飛んでる人は人間です。貴女は? 私は犬神金糸雀。この部屋に客人として呼ばれて、この部屋の家主はこのいろはさんです。で、あのイフリータさんはこの部屋の同居人です」
「???????」
まぁ、普通そうなるわよね。
いろはさん曰く魔女っ子くんは何もないところから魔法の杖を出して私たちにそれを向けるので、イフリータさんが私たちの前に立って威嚇してるわ。
「炎の化身ごときが、アヴァロンの長女に楯突くか?」
「せい、せいせい! イフリータくん、お客さんに失礼さ。あと魔女っ子くん、ウチのイフリータくんは繊細なんだいじめるのはおよしよ。ふへへ、酒か? 君の目的はわかっている! 飲もうじゃないか! まぁま! こっちにきて座りたまえ!」
「私に触れるな! 人間風情が! 消えてなくなれ!」
「fgjghkjっkっっl;6%^$。だったかな?」
「!!!!!!!」
ん? 何が起きたー? 私には認識できない音か言葉でいろはさんが何か言ったら魔女っ子くんが驚愕してるわ。
「知的生命同士、言葉で話をしようじゃないか! 私はいろはだ。君は?」
「モーガン・ル・フェイ……」
「いいね! モーガンくん。愛称としてモルガンくんと呼ぼう。君はついてるよ! 日本三大珍味を今から食べようとしていたんだ! もちろん、君にもご馳走しよう! さぁ、カナ、モルガンくんにスプリング・スパークル(清酒のコーラ割カクテル)を」
「あー、はいはい」
作り方はくっそ簡単。クラッシュアイスを入れたグラスに日本酒(できれば白鹿の超辛)とコカコーラを1対1で入れるだけ。最後にライムを絞れば完成ね。
「お待たせしましたー!」
「いいね! さすがはカナだ! このわたはゆっくりとしゃぶるように食べるといいよ。じゃあ、モルガンくんとの最高の出会いに! カナの最高のカクテルで乾杯だ!」
「ウェーイ! 乾杯!」
「いろは様、乾杯です」
「く……黒い酒? 乾杯」
あー、まぁ、私達はコーラで慣れてるから黒って大丈夫だけど、よく考えたら食欲湧くいろじゃないわよね。
いろはさんの部屋のネットワークスピーカーからは10-FEETの第ゼロ感が流れてるわ。そのテンションでモルガンさんはクイッと。
「おいし!」
思わず、私といろはさんはニヤリ。じゃあこのあたりでこのわた様をいただきます。
あー!!! あーーー! うまっ……こんなん、大吟醸とかで食べるやつじゃない。まぁ、合うけど! 信じられない事にスプリング・スパークル合うけどさー!
「この不気味な食べ物も、信じられない程の美味……この神にも等しい、私ですら知り得ない食べ物に飲み物……いろは殿。まさかお主は……超魔導士」
「違うよー! あーしは自由人。ある時はガールズバーのエース、ある時は売れない声優兼女優、ある時は武器商人、そして今はただの飲兵衛さ!」
どこまでが本当なのか分からないけど、最初と最後だけは正しいわね。お代わりと私に無言でグラスを突き出してくるいろはさん、ガールズバーで知り合っただけなのに、長年友達やってきたくらいの貫禄を出す自由人。
「しかし、さっきのエンシェントテキストは……」
「えー、あーしそんなの言ったっけ? まぁ、そんなのどうでも良くない? 飲もうぜ! 人の人生に飲める酒の量は決まってんだ! イフちゃんも飲んで飲んで! ほら、カナみたいに行かないと」
あっ、私。話ついていけないから飲んでたら4杯目だった。
だって、このわた。くっそ美味いんだもん!
「あのね? いろは、アーサーのやつ。すぐ浮気するんだよ? おかしくない?」
あっ、モルガンさんダメな方にお酒入ったやつだな。
「浮気? させとけばいいじゃんさー! それともモルガンくんは束縛強い系かい? まぁ、それも一つの愛だね。なら、あーしとワンナイトラブ、試してみっか?」
「あっ…………」
顎クイやめろ!
酒に酔わせて致すのはデートレイプって言うのよいろはさん。本人は冗談のつもりでも少し病んでる子はすぐに本気にするんだから。
「ふふふっ、いろはとイフリータと金糸雀嬢と飲んでいると色々バカらしくなってきたな。もういいや、アーサーとかどうでもいいや。殺そ。じゃあ、楽しかった! また機会あればこの四人で飲みたいな」
私たちは、笑顔で手を振ってモルガンさんを見送ったわ。そしてモルガンさんがいなくなってから、私はいろはさんに、
「あれどうするんですか? 絶対殺る気満々の目してましたよ」
「浮気とか最低のする事じゃんか! アーサー死すべしじゃね?」
「さっきと言ってる事違いますって! ところでなんか魔法みたいなの使ってましたけど、あれなんなんですか?」
「あーあれ? この前、歌舞伎町でタクシー拾ったんだけどさー。同席頼まれてその人がマーリンさんって面白い人でさー。魔女とか魔法使いに絡まれた時のおまなじないってやつを教えてもらったんだよ! 確か、こっちの言葉でサイレントつーんだってさ! んな事ぁどうでもいいんだよ。さぁ、続きやろうぜ? 次は大吟醸出してやんよ!」
その話、すごく聞きたいけど、ぶっちゃけ、大吟醸よりはどうでもいいわ!
「飲みましょう! いろはさん!」
「そおこなくっちゃなー! お? いつの間にかニケくんもいんじゃん! おーし、今日は飲み明かすぞー! ミカンちゃんにデュラさん、あとシュテンくんも呼んじゃいなYO」
このひっちゃかめっちゃかな状態でも全然動じないいろはさん、やっぱ飲み友達として最高ね。
ネットワークスピーカーからはAdoのリベリオンが流れていたわ。




