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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
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第301話 Vtuberの中の人と煮凝りと彗(シャア)と

“今日俺様が飲む酒は、俺の可愛いリスナーからリクエストのあったストロングゼロのドライにストロングゼロのダブルレモン割……おい! これじゃあダブルレモンの意味ねーだろぉが!“

 

「うおー! シュテンくん、今日も飛ばしてりぃ! スパチャなりぃ!」

「うむ、我もスパチャであるぞ! シュテンくんは小気味良いであるな!」

 

“勇者ミカン、スパチャありがとよ! 首だけ紳士、スパチャありがとよ!」

 

「うおー! うおー! 勇者名前呼ばれたり!」

「我も我も!」

 

 何やってるのかしら、3Dモデルが動いてお話ししている動画ね。最近流行ってるんだっけ? ミカンちゃんとデュラさんは色っぽい鬼の男性。シュテンくんにハマってるみたいだけど、多分声からして女の人よね。

 まぁ、こう言うディープな世界は中の人とかはどうでも良いのかしら? 今日は兄貴の日本酒を一本飲もうと思ってるから、和食で攻めるか、あえて洋食にするか、中華にするか本来なら迷いどころなんだけど、すでにおつまみは用意してあるの。

 配信が終わったらしくて、ミカンちゃんとデュラさんは興奮冷めやらずね。何がいいのかしら? まぁ、3Dモデルなので顔はいいわね。アイドルしかり、こういう推しがいるから日々生きていく意味を見出せる人が大勢いるのも事実だし、中の人も大変よね。

 

 ガチャリ。

 

「ただいまー、もう無理! もう配信とか無理!」

 

 あれ? 私の部屋に誰か入ってきたけど、なんか聞き覚えのある声ね。それに反応したのはミカンちゃんとデュラさん。


「シュテンくんの声なりぃ!!」

「おー! おー! シュテンくんであるか!」

 

 ゴクリと二人は喉を鳴らして、リビングにやってくるシュテンくんを待っていると、そこには長い事美容院に行っていないであろう。長い黒髪をした、異様に色白の女性。顔は化粧気がなく、整っていそうだけど、引きつっていて何だか痛々しい、服はフリースの上下。

 

「あ……あれぇ……私の家はぁ?」

「こんにちは、私は犬神金糸雀、この家の家主です」

「ひっ! ご、ごめんな、ごめんなさ……ふぇ……」

 

 あら、凄いコミュ障だわこの人。そしてそれを見たミカンちゃんとデュラさん、段々と表情が暗くなっていくわ。そりゃ、応援していたドS系な人の中の人がこうじゃ……幻滅もするのかもしれないわね。

 

「うきゃああああああ! 中の人が真逆タイプ来たれり! ベタ! ベタなりにけりいぃ!」

「うむ、あのシュテンくんをこのような娘が演じていたとは実に趣があるであるな!」

 

 二人ともエンターティメントに懐が広いわね。そしてこの中の人、すでに私にしがみついて離れようとしないわ。私って依存体質の人に好かれやすいのかしら? 

 

「あん、あんな陽キャと、首だけのばけ、ばけも……怪異? こわっ! 夢? あぁああああばばばば!」

 

 この人壊れそうね。とりあえず、この人。お酒飲んで稼いでるのよね? だったらお酒好きよね。

 

「あの、貴女のお名前は?」

「み、美優ぅ、くら、倉田美優」

「みゆさん、今から私たちお酒飲むんですけど、よければご一緒にどうですか・」

「の、飲むぅ……うっ、うっ、うっ」

 

 情緒不安定な子ねぇ……というかこの人、私より年上なんじゃないかしら? とりあえず日本酒用冷蔵庫から私は紅いラベルの日本酒を用意。

 

「今日はシャア飲みましょうか?」

「「「シャア?」」」

「これは長野県の酒造のお酒で、そういえば三重県にはザクというのあったわね。ご存知、機動戦士ガンダムから取られているお酒ね。兄貴がガンダム好きだから何本か買ってあったけど、そろそろ飲まないといけないから。割と良いお酒みたいだから、おつまみは、煮凝り作ってみたわ!」

 

 プルプルとゼリーのような魚の旨みが溶け込んだタレの煮凝り、こんな物をつまみにお酒を飲むようになったとは思わなかったわね。

 

「美優さんは日本酒大丈夫ですか?」

「好きぃ……」

 

 それじゃあ、兄貴の江戸切子を人数分用意して、そこに冷やした彗を、

 

「じゃあ! 乾杯の音頭はミカンちゃんいいかしら?」

「よき! おつまみの格式の違いが、飲み会の決定的差ではないという事を教えてやるなり! 乾杯なりぃ!」

「乾杯!」

「ジーク・ジオン!」

「じ、じーく……ふぃぃ……じおん」

 

 あれ? 私だけ、なんかハブられたんだけど、どういう事よ? たまにみんなジーク・ジオンとかヤック・デカルチャーとか言うけど、何語?

 にしても彗、これはあれねぇ……

 

「甘くて、すっきりして、若い女の子を虜にしそうね」

「さすがはキャスバル兄さんであるな」

「あ、あの人、ろ、ろりこんですからね……十七歳のララァ・スンにバブみ感じてましたし」

 

 美優さんが吃らなくなってきたわね。私は前から作ってた、穴子入りの煮凝りと銀杏入りの煮凝りをみんなに出して、

 

「うまくできたか分からないけど、食べてみて、美優さんもどうぞ」

「は、はひっ!」

 

 ミカンちゃんはもむもむと立て続けにお代わり、デュラさんは味わいを目を瞑りながら感じて、美優さんは恐る恐るパクりと。

 

「うんみゃい! 魚味なりぃ!」

「うむぅ、このシャアがよく合うであるな!」

「この食べ物、足がないんですか?」

「賞味期限? えーっと、今日中かしら?」

「あ……はい、ふひぃぃ、はい」

 

 何? なんなの? 私はシャアをクイッと飲んでいたらミカンちゃんが、

 

「足なんて飾りなり、少しくらい過ぎた方がうまし! かなりあにはそれが分からなし!」

「おぉ! ジオングを見た時のやり取りであるな!」

「そ、そうです! ふひひひひ!」

 

 あ、もうガノタ(ガンダムオタク)なんか無理だわ。意味わからないし、

 

「みゆぅ、勇者。公開配信見てー! シュテンくん見てー!」

「おぉ! それは凄いであるなぁ!」

「それは、ふひひ、流石にぃ、あれ? もしかして、勇者ミカンと首だけ紳士?」

「いかにもである!」

「なりぃ!」

 

 まぁ、そうなるでしょうね。でも私の部屋で配信とか始められると、すごく困るんだけど、ミカンちゃんが自分のPCとマイク持ってきて、

 

「えぇ、じゃあ……ショート配信で、ふひひ」

 

 すると、美優さんの表情が変わったわ、自信のない表情から強い眼差しに変わり、何かが憑依したかのように、

 

“おい! お前ら! 今日は俺の可愛いリスナーのところから突発だ。聞けた奴は運がいいな。おい! で、今俺が飲んでやってる酒はあの赤い彗星からシャアって酒。そして、すぐにでも食べてやりたいくらい愛らしい子が作ってきた煮凝り、見えてるか? これこれ、うまそうだろ?“

 

「すげー すげー! シュテンくんなりにけりぃー!」

「うおぉぉおお! シュテンくんである!」

 

 興奮した二人のファンは推しの中の人の配信に感動してるわね。

 あれ? どうしよ。私、全然興味ないわ。彗は日本酒としてはめちゃくちゃ好きだけど、別にガンダムとか全然好きじゃないし、Vtuberも別に何も感じないわね。

 だって、どれだけ顔が良くても、所詮作り物だし……というか、顔面偏差値だけなら振り切ってるけど、きて欲しくない人達が毎日のようにくるし、

 

“次の突発? はぁ? 俺が飲みたい時にやって、食いたいときに行うに決まってんだろおまいら! じゃあな!“

 

 二十分くらい配信してお酒を飲んで食べているだけでスパチャが数万貢がれてる。なんなのこの世界。やばくない?

 

 ガチャリ。

 

「金糸雀ちゃん! 聞いてください! 圧倒的だったんですよ! 私の加護を与えた軍は!」

 

 ニケ様の登場にひよる美優さん。そしてそんな美優さんを見て、コホンと咳払い。

 

「貴女は誰ですか? これはなんですか? 何か目のような物が! 誰か多くの人に見られているようです! もしかして私を信仰したい方々でしょうか? 聞こえていますか? みなさん、私はニケ。勝利の女神ニケです!」

 

 ミカンちゃんがあおい顔をして、美優さんにスマホを見せると、美優さんも青い顔をしてパソコンの電源を切ったわ。

 

「どしたの? 何があったの?」

「配信切り忘れてり……」

「あぁああああああ! やばいやばいやばい! 怒られるぅ、あーもうやめる! もうこんなのやめるぅ!」

 

 ジタバタしている美優さん、そして何も分からずに美しい御尊顔をインターネットの海に拡散したニケ様の信者が少しだけ増えたという話を私は聞いたわ。

 

【シュテンくん、配信切り忘れてに謎の美女、勝利の女神・ニケが映る】

 

 どうなったのかと私は次の美優さんの配信をミカンちゃん達と視聴したら、謝罪するわけでも説明するわけでもなく、ジャックダニエルの美味しい飲み方についてリスナーに質問していたわ。

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