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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
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第300話 【300話突破特別編 魔王様とスナック飲みと】

※作者が4、5件検証の為に行ってみたスナックを元に展開してますが、料金体系やら独自システムが多くて実際にスナックに行った際と違いがあるかもしれません。ただどのお店も大体こんな感じでした。

 

「魔王様、トレカですか?」

「うむ。勇者やゲームギルドの連中と今度オフ会でワンピカードを嗜む故、勇者に秋葉原を案内してもらい買い揃えた物である! くーはっはっは! 実にこのトレカというものは面白し」

 

 所謂、シングル買いで必要なカードだけ揃える大人買いの極致ですね。私の働くガールズバーにもトレカを嗜むお客さんがいるので少しだけ分かります。世の中、希少価値の高いカードをせどりする方と、収集目的で集める方とプレイ目的で集める方がいるらしく、魔王様はお友達に勧められてとりあえず大人買いしたという事ですね。

 

「魔王様ってそのカードを集めたいとか思わないんですか?」

「余か? 余は仲間内で遊べれば十分。この紙札を欲しがる者は大勢いるのであろう? 世界の全てを統べる余がそこに参入するのは風情がないであろう? それに余が本気で集めるとなれば一枚たりとも誰の手にも触れさせぬ程集める故な、それでは意味がなかろう? これは誰かと遊ぶ為の物。所詮は紙の札である」

 

 魔王様はトレカの真理を仰いましたが、絶対にトレカを嗜む方には言ってはいけない言葉ですね。私も一枚、数万、数十万なんて信じられませんしね。

 

 ※恐らく世界中で様々売られているカードで最も高額な値段をつけているのは日本産トレカ、遊戯王OCG カオスソルジャー ステンレス。約10億と言われています。現存するのかは知りませんか、信じられない話ですね。

 

「ところで魔王様、本日はいかがなさいますか? 私、明日までお休みなので飲みにいけますし、せんべろしますか? この前からご馳走してもらっているので、本日は私がご馳走しますよ!」

 

 魔王様はトレカを大事そうに金銀宝石のついた箱に入れると、それを戸棚の一番上に置いて少し考えておっしゃいました。

 

「スナックという場所に行ってみたいな! くーはっはっはー! この前、てれびにて、最近外国人環境客の観光スポットにスナックが入っていると見た故!」

 

 スナックですかー。

 水商売の中でもキャバクラやクラブ、ガーズルバーなんかとは少し毛色が違い、まだ健全に思われがちですが、かなりディープな世界で足を踏み入れにくいんですよね。でも魔王様が行きたいとおっしゃるなら。

 

「もしもし、金糸雀さんですか? あの、オススメのスナックとかってありませんか?」

 

 そう、私にはお酒の神様。ガールズバーの同じ同僚バイト、犬神金糸雀産がいます。飲みに行ったことがないお店はないと言う彼女のオススメなら間違い無いでしょう。

 

「魔王様、駅前から少し流れた場所にあるスナックがいいそうです」

「ほぉ! 良い。ひなに任せよう。家来の言うことを聞くのも魔王の勤めであるからな! くーはっはっはー!」

 

 私達は金糸雀さんに教わったスナックに向かいます。正直、私も初めてなのでドキドキが止まらないんですけどね。そして雑居ビルのような場所に、カレー屋さん、キャバクラ、音楽バー、そして金糸雀さんオススメのスナックがありました。

 

“すなっく美鳥“

 

 みどりと読むんでしょうか? すごく入りにくいお店ですが、魔王様は物怖じせずにガラガラと入りました。

 

「くーはっはっは! 余が来店であるぞ!」

「いらっしゃっせー!」

 

 店内は、常連っぽい五十代くらいの男性、一番端の席に座っている。そして、ちーままらしい若くて綺麗な……というか可愛い人がいますね。

 

「あの、金糸雀さんにお勧めしてもらってきました」

「あー、金糸雀の友達ぃ? 聞いてる聞いてる! 座って座ってー! 金糸雀のボトルキープ飲んじゃいなよ!」

 

 どんどんどんと、金糸雀さんのボトルキープが麦焼酎とウィスキーのオールドと、鏡月のグリーンと置かれます。

 

「いや、流石にダメですよ。金糸雀さんのお酒ですよね?」

「いいのいいの! あの子、最近全然ウチこないから、全部飲んでいいからね! はい、まずはおつまみ。枝豆と鰹のなめろう」

 

 スナックって凄い料理が出てくるんだ! 驚きです。金糸雀さん曰く、セット料金で一人2500円だそうです。

 

 ※スナックによっては高い所もありますが、居酒屋よりご飯が美味しくてめちゃくちゃ安く飲める所もあります。

 

 私と魔王様は麦焼酎のお湯割りを飲みながら、なめろうといただきます。うん、ファミリー居酒屋とは違ったちゃんとしたおいしさです。

 

「ほぉ! うまい! 小料理屋とも違い、家の味と言ったところか? 酒によくあるな」

「ほんとですね! おいし! それにお酒も」

 

 私も職業柄お酒を出す仕事をしていますが、ママの作る焼酎のお湯割り美味しいですね。水割りも見た事ない水の分量を測る機械もありますし、

 

「あの子の知り合いって聞いてたけど、二人は恋人?」

「余は魔王である! して、このひなは余の家来であるぞ」

「あー、そうなんですよ」

 

 きっと何言ってるんだこいつ等と思われたでしょうね。するとママが2杯目のお酒を作りながらマイクを二つ差し出してくれました。

 

「カラオケでも歌う?」

 

 私は仕事柄、カラオケを歌ったり、お客さんに合いの手を打ったりしますけど、こんな友達感覚でカラオケ誘ってくるんだ。

 

「くーはっはっは! 良い、歌うとしよう! スナックではスナック定番の歌を歌うのであろう?」

「別になんでもいいよ! 今どきの詩でも軍歌でも」

「ほぉ! 男と女のラブゲーム(日野美歌と葵司朗)を歌う物と思っていたが、ボカロでも良いのか? それは実に良い! くーはっはっは! ひなよ。パリィ(宮守文学)を歌うぞ!」

 

 そこは打ち上げ花火とかにしましょうよ。

 スナックらしからぬボカロ曲、そして少し古いアニソンのライオン等を私と魔王様は立て続けにデュエットして、端に座る中年の男性から拍手をいただきました。一応、私はカラオケレベルですが、魔王様……うますぎです。

 

「くーはっはっは! ママよ! ママも飲むといい。そこの御仁も乾杯であるぞ!」

 

 魔王様の奢りをもらった二人と私達も乾杯。

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 そしてさっと出されるママからの揚げ出し豆腐。梅肉が乗っていて美味しいです。スナックの楽しさというのはあれですね。友達の家に遊びに行ったら友人間同士の知り合いが出会ってしまう感じに似てます。


「へぇ、魔王さんはこの世界の住人じゃないのかー、帰れなくて大変だろう?」

「くーはっはっは! 御仁よ、そうでもない! この世界は良い! 食べ物がうまい! 酒がうまい! そして、平和である!」

「魔王ちゃんのところは平和じゃないの?」

 

 ママは聞き上手で、話し上手で料理上手です。魔王様は戦乱、飢餓、圧政と様々な要因を語り、自らが世界を統治する必要があると説いています。

 本当に魔王様は魔王なんでしょうか?

 

「が、しかし余一人では為せぬな。人間の王、そして勇者。様々な連中が絡み合い、そして誰かが平和を作れば良い」

「まぁでもね。魔王さん、この世界もそんな平和じゃないんだよ」

 

 そうなんです。

 それを聞き魔王様は実に嬉しそうな表情をされます。

 

「はいお待たせ! ブロッコリーとトマトのチキングラタン」

 

 そして、ママ。凄いタイミングで和洋中と関係なしに料理をドンドン出してくれます。そして美味しい。スナックってこれがセットの料金って儲かるんでしょうか?

 

「うまい! 実にうまいぞママ!」

「そう? 魔王ちゃんとひなちゃん、若いからよく食べてくれて作りごたえあるわー!」

「そうそう、俺なんか酒は入れるけど、食事はあんま食べれないからねぇ」

 

 どうやら私達がガツガツ食べているのでそのペースで作ってくれているようです。確かにスナックに通われる年齢層って四十代から上の方が多いので、色が細かったり、もっと大人な楽しみ方をしているのかもしれません。

 

「あら、麦焼酎なくなったわね。じゃあ、角瓶入れるわね」

 

 コポコポと少なめの氷で水割りを作ってくれます。これもまたガチガチに入れないあたりに大人感がありますね。

 決して、バーの水割りじゃないんですが、自家製水割りよりやっぱり美味しくて、小料理屋とバーの間くらいでしょうか?

 

「うむ、なんという居心地のよさか! 余は実に楽しい。茶の間で寛いでいるようだ! くーはっはっはー!」

「そう? 若い子がくると、みんなオジサン、オバサンばかりだから話したがって中々リピートしてくれなかったりするのよー」

「私と魔王様、それにあと何人かお友達的な人(?)がいるので、みんな連れてきますよ!」

「はい! 揚げ餃子!」

 

 この唐突な料理の渡され方にママはしゃべりながら、凄いなと本気で思ってしまいました。

 

「ふぅ、ご馳走様でした! おあいそと、ボトルキープ。黒霧島入れていいですか?」

「あー、ありがと! じゃあ二人分と黒霧島を合わせて……」

「ママ、俺が二人の分とボトル払うからまとめてよ!」

「「!!!!」」

 

 私達が断っても、御仁は今日だけ! 今日だけと言って払ってくれました。私たちは、スナックという日常っぽいのに非日常を味わえる空間の虜になってしまいました。

 

「うむ、思っていた以上に楽しい場所であったな! 次は御仁に何かご馳走をせねばあるまい」

「いやー、スナック楽しいですねー! ちょっと私、次の短期バイト、スナックにしようかと思いました!」

 

 私達がそんな余韻に浸っていると、ふらふらと千鳥味の……エルフの方が寄ってきました。

 

「おー! 魔王じゃないかー! あと、なんだ? ひなちゃんかー、飲もう! 魔王の奢りで飲もう! この辺りの店は全て出禁だからなー! 違う場所になー!」

「飲み過ぎであるぞ! 古代の伝説的ハイエルフのセラよ。そんな貴様が迷惑をかけてはならぬからな。ひなの家で飲み直しとするか? ダークエルフに雑魚天使。余の友、ニケも呼ぶとしよう」

 

 えぇ…………ダークエルフさんとサリエラさんはまだしも、セラさんとニケさん嫌来るのだなぁと思いながら、先ほど使わなかったお金でコンビニでお酒を買って帰路につきました。

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