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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
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第290話 ダンジョン配信者とブラックペッパー カシューナッツ&チーズと限定 夏のキュウイ酎ハイと

 ガチャリ。

 

 そんな音と共に、やや大きな声で誰かに語るように話すかん高い女の子の声が玄関から響いてくるわ。

 

「ダンジョンの最深部にあった謎の扉を開くとそこは不思議な場所に到着しました。一体ここには何が待ち受けるのか? 仕込み? 違う違う! 本当にいま、心臓がバクバクなってます!」

 

 誰か他にいるのかしらと私が玄関を覗いてみると、提灯のように水晶をぶら下げたザ・冒険者って感じの大きなリュックを背負った女の子がこちらを不思議そうに見つめてるわ。

 

 

「私は犬神金糸雀、この部屋の家主です」

「自分はキッド。ダンジョン配信して生計立ててる落伍者です! なんと、ダンジョンの先には高価なお召し物に包まれた美人のお姉さんがいました!」

「えぇ、美人のお姉さんだなんてー!」

 

 キッドさん、良い子ね。うん、間違いないわ。このドンキのジャージが高価な物と認識されているのは異世界ならではね。まぁ、いつものパターンなわけで、私が言う事は

 

「キッドさん、良ければ今からお酒でも飲みながら軽く乾き物でもつつこうかっと思ってたんだけど、一緒にどうですか?」

「えー! いいんですかー? なんと、美人のお姉さん、金糸雀さんは私、キッドを飲みに誘ってくださいました! ダンジョンの奥にある謎の空間の綺麗なお部屋、ここで一体どんな飲み物を……おっと門兵さん、投げ銅貨ありがとうございます!」

 

 凄いわ。スパちゃみたいなのもらってるわ。私のリビングに入ると、ソファーでひっくり返ってダル着でくつろいでるミカンちゃんと、デュラさんを見て、キッドさんは目を丸くしてる。

 

「ゆ、勇者様です! 行方不明になられた勇者様と思わしき方がここに! あと……もももも! モンスター! 大変です。これはどういう事でしょう」

「うっざ! なり」

「騒がしい冒険者であるな」

 

 驚いてるキッドさんに私は状況を説明すると、キッドさんはコホンと咳払いして配信を続けてるわ。さすが生活かかってるだけあって違うわね。

 

「ななななな! なんと勇者様と魔王軍大幹部のデュラハンがこの場に留まっているらしく、ここは不戦の協定が結ばれているそうです! もはや私がこんな場所にいていいのか、今になって不安になってきました!」

「別にいいのよ! 村人の人とか王族とか神様とか色々くるから、適当に座って座って、買い物行ってないから乾き物になるけど、これかなり美味しいから適当につまんでね」

 

  ブラックペッパーカシューナッツ&チーズ、これは酒飲みにとって悪魔のオツマミの一つよ。

 ※作者調べです。気がついたら一袋でビールのロング缶六本消えてました。

 

「なんでしょう? どこの酒場にでもありそうな乾燥豆のような? 少しばかり残念な気もするのですが頂いてみましょう。ん! うまい! 凄い高級なスパイシー感を感じながらもほのかに甘く、こんなハーモニーを醸し出せる食べ物があろうか? いや、ない!」

 

 と迫真の演技で水晶に向かって語るキッドさん。大袈裟ね。まぁ、このオツマミが怪物的である事は私も認めるけどね。

 

「じゃあ、キッドさんの配信がうまくいきますように! 乾杯しましょうか?」

 

 限定 夏のキュウイ酎ハイ。氷の入ったグラスに注いであげて、ウェルカムドリンク代わりにきゅっと飲み干すわ。

 

「あー、うまこれ」

「うむ、くどくない甘さが良いであるな!」

「勇者、しゅわしゅわしゅきー! うんみゃい! キュウイのCMも好きー」

 

 あー、あのバナナとかリンゴとかミカンとバンドしたりするやつね。全然関係ないメーカーだけどね。

 トンとグラスを置いてキッドさんは静かに黙り込みました。そして水晶を見つめて、

 

「とんでもない事が起きました……このお酒は神々の雫と呼ばれている。恐らくはミードです。口の中でパチパチとそして後から追いかけてくるように甘いが広がり……あー! 視聴しているみなさんに飲ませてあげられないのが残念です! えーー! 投げ銀貨、ありがとうございます! 王族(仮)さん。お返しの投げキッスです!」

 

 あれねー。配信をしている姿ってミカンちゃんで慣れてるから気づかなかったけど、女の子の配信って基本メス媚びして数字取るのね。あざとさってのはいつの時代もある程度のウケがいいもの。

 そういえば私がJK時代も百合営業ばりに女子同士でいちゃついて男子の注目浴びる子いたわよね。

 

「キッドさん、乾燥してるチーズも美味しいわよ食べて食べて」

「チーズ? これが? サクサクしていますがぁあああああ! チーズだぁあああああ! みなさん、信じられますか? 砂を噛んでいるような食感で口の中に高級なチーズの香りと共にチーズがそこに召喚されます」

 

 クイッと限定 夏のキュウイ酎ハイを再び一口。キッドさん、動画配信の見栄えと映えを徹底的に意識しつつも食事も楽しんでるわね!

 

「ミカンちゃんも配信してるけどなんの配信してるの?」

「勇者、ゲームとデュラさんの作ったオツマミで呑みなりぃ! 昨今の色気で勝負する下手クソ配信と違い勇者はプレイで魅せり! 呑みも編集で酒豪感を出さず。リアルを追求してり!」

 

 とは言っても加護だなんだで殆ど酔わないじゃない。そんなミカンちゃんの動画配信状況を聞いてキッドさんが、

 

「勇者様はどのくらいの閲覧者さんがいるんですか? ちなみに私は今、リアルタイムで40人程と、私の通信推奨への登録は1800人です!」

 

 へぇ、なんか微妙な数ね。褒めていいのかしら? 

 

「キッドさん、それって多い方なんですか?」

「ダンジョン配信者としは五本の指に入ります! 去年は一位だったんですけど、最近出てきたパーティー配信の方が今は大人気ですね!」

 

 多いのね。私がそういう動画とかに疎いから分からないけど、ミカンちゃんって毎月結構お金稼いでるわよね。

 

「勇者? 今スマホで配信見てる人が400人くらいなり、勇者の登録者数は10万人弱なりにけり、配信者としてはギリ底辺超えた所と言えり」

 

 ミカンちゃんのドアップのアイコンと壁紙、推しの子ポーズであざとさ全力だわ。まぁ、異世界では配信業とか始まったばっかりだろうし……

 

「さすが勇者様! みなさん、これが私たちの世界を救いたもうミカン・オレンジーヌ勇者様です!」


 一瞬負けたような曇った表情を見せたキッドさんだけどそれですら数字稼ぎに使い始めたわね。さすが動画配信者。

 

「商才があるであるな。たくましい限りである」

「えー、きもいかもー」

 

 若干のディスりに対しても「そんな事言わないでくださいよー! 勇者様、デュラハンさーん!」とあれね。強者や人気者とはコラボするくらいの気持ちで行くのが真の配信者さんなのね。

 

「キッド、持ってなし」

「持ってないであるか? 何故勇者はそう思うか?」

「えー、自分。ここに来れただけで持ってますよー! ですよねー! 視聴者さん!」

 

 何を持ってないのかしら? と私も思ったら、いつもならこのくらいの時間にやってくるはずのニケ様がここ最近やってこないのよね。誰も心配してないけど、確かに動画配信中に女神がやってきたら撮れ高だけは凄そうね。ニケ様、見た目だけはくっそ美人だから……

 

「実はここ、毎日のように女神のニケ様がきてたんだけど、最近こないんですよ」

「あの! あの女神ニケ様ですか? 異世界の魔物によって世界が閉じられようとした時、人間、魔物、神々と先陣を切って導き、異世界の魔物を元の世界に送り返したと言うあの!」


 ニケ様のあのクソみたいな話って結構伝わってるのね。でもそんなニケ様はどこをほっつき歩いているのか知らないけど、やってこない。

 

 ガチャリ。

 

 あら?

 

「かなりあー、水ぅー! あとさけー、東京ゴマたまご買ってきたから一緒に食べよう!」

 

 ニケ様はこないけど、酔いどれエルフのセラさんやってきたわ。

 私たちは合わせるつもりはなかったんだけど……

 キッドさん、

 

「「「持ってる!」」」

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