第286話 ブギーマンとローソン・パリパリ食感のチーズチップスと限定金麦〈香り爽やかエールタイプ〉と
「あどりしゃん、入れてー」
「無理、ヴィクトリーア様。また空気悪くしますから」
ガシャンと扉を開いてウチはヴィクトリーア様を締め出す。さて、今日は新世界ワインでも楽しもうかなとかワインセラーを眺めると、そこには座布団に星座をしてゲームのリモコンを持つ、ウチの家に居候しているリンゴちゃんと、恐らくは別世界線、犬神金糸雀さんの家にいたというミカンさんがソファーにひっくり返ってゲームのリモコンを持って対戦してる状況。
「アナザークソ女神ざまぁ!」
「うざいよなー? 敗北の女神」
そしてちょっと口が悪い可愛い女の子達。向こうの部屋ではデュラハンのデュラさんに大変よくしてもらい。ニケさんを締め出しておいたんだけど、今はどうなってるのか少しだけ懐かしい。お酒の趣味がブランデーとワインの違いはあれど、かなり良い趣味をしているので一度会って飲んでみたいな。
「リンゴちゃん、ミカンさん、今日は何を飲まれますか? なんでも良ければ、国産かアメリカのワインでもと」
「勇者しゅわしゅわー」
「英雄も炭酸一択!」
ワインはなしと、まぁスパークリングワインという手も無きにしもあらずですけど、お二人の炭酸の飲み方とスパークリングワインの飲み方は合致しないのでここは単純にビールか、ハイボールか、酎ハイ系をチョイスしますか、
ピンポーン!
言ってる側から酒屋さんより新商品が届いたらしい。ハンコを押して受け取ると、サントリーの金麦か。今度はエールタイプ出したの? PSBのエールは美味しかったけど、第三のビールでエールって本当に意味不明ですがこれで良いかな?
「おつまみは……」
「あーとり、英雄。ローソンにてこちらを購入して候」
リンゴちゃんが見せてくれたのはローソン限定商品のスナック菓子、パリパリ食感のチーズチップス。これを見てミカンさんが、
「うおー! うおー! リンゴ、ナイスチョイスと勇者は評価せり」
「良きにはからえー」
異世界の人って変な喋り方なのは、私達の世界の日本語に翻訳されているからなのか? でも普通の喋り方をする人も大勢いるし、やっぱりこの子達が狂っているのかな?
「じゃあチップスなんで、金麦でいいかな?」
「良き!」
「しょうちのすけ」
ガチャリ。
「……チッ、またヴィクトリーア様か」
玄関に行くと、外でシクシク泣いているヴィクトリーア様、そしてセールスマンみたいな格好の誰か、
「悪い子はいませんか?」
「貴方の後ろに」
ヴィクトリーア様を指さすと、男性はヴィクトリーア様をチラリと見てから再び、
「悪い子はいませんか?」
とヴィクトリーア様をいないものとした。この人、セールスマンとしてはかなりのやり手のようだ。面倒臭い客やクレーマーを回避する嗅覚も必要だとかなんとか?
「ウチは犬神天鳥、この部屋の家主です」
「申し遅れました。こういう者です」
「ブギーマンさん? 悪い子専用の引き取り業者さん、あの。後ろに」
ブギーマンさんはもう絶対にヴィクトリーア様を見ようとしない。私の部屋には二人、プチ悪い子はいるけど、そこまで悪い子でもない。
「とりあえず奥で飲みませんか? 新商品のお酒あるので」
「おや、ではお言葉に甘えて」
「ヴィクトリーア様は入ってこないでくださいね」
「あとりちゃん、いれてー! 金糸雀ちゃんは」
「次、金糸雀さんの名前出したら口ききませんよ?」
「ごめんなさーい! 入れてー!」
さて、普通にグラスに入れるだけでいっか? デュラさんがいる金糸雀さんの家裏山だな。ウチの部屋は料理できる人、ウチしかいないから、結構出来合いになる事多いのな。
今日はスナックだし片付けも楽っちゃー楽か、
「それじゃあ、ブギーマンさんの営業成績が伸びる事を願って、乾杯」
「乾杯なりー!」
「ショコラー!」
「これはこれ、ありがとうございます。乾杯」
金麦のエール。うーん、これはあれだな。金麦にしては好き嫌いが分かれそうな味わいになってる。多分、金麦ユーザーはガチガチのドライを飲む傾向にあるから、エール感を出した事で金麦っぽくないと思う勢と、味わいの中に薫るエールを探す勢がいそうな感じだろうか?
「ぷはー! うみゃああああああ!」
「うめぇええええ! これだぁああ!」
「おぉ! なんと美味しいエール」
異世界勢には至って好評。さっきからヴィクトリーア様が玄関を爪でガリガリひっかいている音が聞こえるけど、無視しよう。あの女神様構えば構う程他者依存するからなー。そういう意味ではニケさんは子供だったけど大人だったなー、なんか二人の事考えると頭がバグりそうになるのでやめよう。
「パリパリ食感のチーズチップスも食べてみましょうか?」
「天鳥、金糸雀に似てり」
「という事は金糸雀さんは美人なんですね」
「英雄、あとりのそういうところに攘夷思想を感じれり」
ウチってどちらかといえば美人寄りだと思ってたんだけど、美少女二人にドン引かれると自信無くなるからやめてほしい。いやでも、天鳥ちゃんは美人ねーって言われたの近所の友達の親とかばっかりだったので、あれってもしかしてただのお世辞?
「天鳥嬢はお美しいですよ。孤高の獣のような瞳に見つめられると身動きがとれなくなる気持ちです。はい」
ぱりんとチーズチップスを一枚摘んで金麦エールをごくりと飲んだブギーマンさんはそうウチに言ってくれた。
「ブギーマンさん! グラス空ですよ。どんどん入(飲)れましょう!」
「おやおや、ハハっ。お手柔らかに」
ミカンさん、チーズチップスを5枚くらい摘んで口に放り込みもしゃもしゃ食べて金麦エールで流し込んで、
「うきゃああああああ! うみゃあああああ!」
と喜びを全身で表現。そしてリンゴちゃんは、お箸でつまむようにチーズチップスをぱりんと食べて、
「うん、うめぇええええ! 征夷大将軍級!」
とジタバタしてる。異世界の人にウチの世界の食べ物、見てると脳に悪そうなんだよな。まぁ、でもこのローソンのパリパリチーズチップスは危険なオツマミだ。食べる手がみんな止まらなくなってる。今日はウチのハンターカブのオイル交換しようと思ってたけど、明日に回すか、呑めば飲む程、金麦〈香り爽やかエールタイプ〉の味わいが分かってきた。金麦だと思って飲むとダメなんだ。第三のビールのエールだと思えばいいんだ。
そうなると話は早かった。
「ミカンさん、リンゴちゃん、ブギーマンさん、お代わりいりますか?」
「飲めり!」
「承知!」
「私はこれで大丈夫です」
24缶があっという間に飲み終えちゃったな。たまにはこういうお酒でダラダラ飲むのもいいかもしれない。片付けも楽だし、飲みすぎたから夕食は抜こうかな。
「悪い子はここにはいないようですね。大変ご馳走になりました。私はこれで」
「あー、玄関まで送りますよ」
そう言ってウチは玄関までブギーマンさんを見送ると、玄関で体育座りをしているヴィクトリーア様の姿。私とブギーマンさんは一瞬ヴィクトリーア様を見るけど、何事もなかったようにガチャンと玄関の扉を閉めたわ。少し勉強でもして今日は早く寝ようかな。




