第272話 【100万文字達成特別編】犬神金糸雀とピスタチオとジョニーウォーカーブルーラベルと
“100万文字達成おめでとうございます“
「えっ? ありがとうございます。というかここどこですか?」
大学の友人と軽くお茶をしてからマンションに帰る時、目の前が真っ暗になって私は気がつくと何処かの部屋? に拉致されたっぽいわね。ザ・我が家みたいなモデルハウスみたいな部屋。しかもテーブルじゃなくてちゃぶ台。想像しやすい部屋といえばサザエさん一家が団欒しているあんな感じね。
“今まで部屋にやってきた異世界の人で一番印象に残った人は誰ですか?“
「そりゃ最初にやってきた獣人のクルシュナさんとゴブリンのホブさんですよ。あれは驚きましたね。と言うか、それ以降はなんか慣れましたね。むしろ日本人より私多分異世界の人との交流してる時間の方が長いと思いますよ」
今回も何かしらの異世界の人からの接触だと思うけど、この状況で全く慌てる事もなく冷静な自分がちょっと嫌ね。ここできゃーとか出してー! とか言った方が可愛いのかもしれないけど、どこでミカンちゃんが見ててキモいキモい言われるか分からないし、なんとでもなるわよね。
「あのー、ここから出してもらってもいいですかー? もしかして宇宙人系ですかー? 意味わかんないんですけどー」
“これは失礼しました。『宅飲み』ですので、何かお出ししましょう。金糸雀さんはどちらかといえばウィスキー派でしたよね?“
「まぁ、なんでも飲みますけど、私は洋酒が好きですね。特にウィスキーとジンは拘りありますね」
“そんな金糸雀さんの為に、ジョニーウォーカーのブルーラベルをご用意いたしました。この前の収益が丁度そのくらいでしたので、どうぞご堪能ください“
「ブルーラベル……ですって?」
私の部屋にはジョニーウォーカーは全種類揃ってるわ。同じくウィスキー党の村上春樹の作品にも登場するジョニーウォーカー(お酒じゃなくて暴力の化身としてだけどね)。普段飲みのレッドラベル、ちょっとした夜の楽しみのブラックラベル。もう少しスモーキーさが欲しい時のダブルブラック。少し贅沢したい日のゴールドラベル、同じくグリーンラベル。
記念日なんかに飲みたいプラチナラベル。
それらの頂点に位置する。偽物まで世の中に出回るジョニーウォーカーの征夷大将軍・ジョニーウォーカー・ブルーラベル。私もバーで数回、兄貴に貰って家で一回。
そして現在部屋にあるブルーラベルは2021年限定モデルで定価が通常のブルーラベルの四倍、今はプレミアついてもっとするかもしれない。
所謂兄貴の所有物で『開けてはいけないボトル』いつも指を咥えて飲みたいなと思っているアレを?
「飲んでいいんですか? バーで一杯、2、3000円しますよね?」
“ハイボールでも水割りでもロックでもストレートでもお好きにやってください“
私の目の前にあの神々しいブルーラベルのボトルが現れたわ。
“一応、簡単にブルーラベルについて説明的な物をお願いしていいですか?“
「ジョニーウォーは、世界一売れているスコッチタイプのブレンデットウィスキーで、ブルーラベルはその最高峰です。一応、これより高級なジョニーウォーカーもあるんですけど、レギュラー商品としてはブルーラベルが頂点です。創業者のブレンディングレシピを使った一万樽に一樽と言われた希少な原酒を使って作られるんですよね。その熟成年数は十五年からなんと六十年だなんて言われています」
って、誰向けの説明なのかしら? それにしてもブルーラベルだなんて、もしかして私、今日死ぬのかしら?
ウィスキーが浮いているように厚底の高級なウィスキーボトルの開栓。この香りは、なんて上品な煙たさ、高級な葉巻の煙を嗅いでいるようね。そこからゆっくりとリンゴのようなそして蜂蜜のような甘さが私の鼻をついてくるわ。
「高級なお酒はやっぱりストレートからいきたいですね。グラスは?」
と私が思った時、テイスティンググラス、ロックグラス、ハイボールグラスと三種類。そしておつまみに殻付きピスタチオが用意されたわ。
“金糸雀さんの中でデュラさんとミカンちゃんとニケ様ってどんな関係なんですか?“
「うーん、そうですねぇ」
ティスティンググラスにジョニ青を注いで口に含むと、甘っ! 40度のウィスキーとは思えない甘みから、何か入れているの? ってくらい色んなスパイス感、そしてまたしても甘いわ。神の飲み物に甘露という物があるけど、まさにこれね。
「デュラさんは、同級の友達、ミカンちゃんは年下の友達、ニケ様は気がつくと呼んでもないのにやってくる友達。みたいな感じですかね?」
よくよく考えると、三人とも私の付き合いの長い飲み友みたいな感じね。日常的にいつもいるからこうして一人でゆっくりお酒を飲む機会なんて殆どないけど、ピスタチオで小休憩して、次はオンザロックで楽しもうかしら。
氷で加水してあげる事で全然違う顔を出してくれるジョニ青。
「これはダメね。なんでこんな飲みやすくなるの? ジョニ青、恐るべしね」
オンザロックにすると口当たりが良くなるとかあるの? いや、このジョニ青がそうなんだけど、こんなウィスキー常飲してたら死んでしまうわね。
“異世界の人って金糸雀さん的にはどんな感じなんですか?“
「意外と、こっちの人も異世界の人も大して変わらないですよ。日本とよその外国の人でもそうですけど、お酒を飲み合う事ができる間柄であれば、基本なんとでもなるんですよ。お酒の席の会話ってはっきり言って信用にたるものじゃないと思うんですよ。だから大切な話とか仕事の話とかはやめた方がいいと思いますけど、仲良くなる為の飲みにケーションの効果は絶大だと私は思いますね」
だって私たちだって、美味しい物に感動して、良いお酒と良い友達がいるだけで人生は輝くでしょ? もちろんお酒を飲めない人ならカフェとかでもいいし、そういう意味では異世界の人は純粋よね。言って私もお酒を飲む間柄でしかないからそれ以上の事は全然分からないけどね。
「次は、いよいよ。超高級ハイボールいってみましょうか?」
丸く成形した氷を二つ、ハイボールグラスに入れてジョニ青を濃いめに注ぐと、どこからともなく出現したよく冷えた炭酸水を注いでみるわ。香りが立つ。本来なら絶対このお酒でハイボールなんて飲まないわね。ピスタチオを一粒食べて、口の中をリセットすると、
「では、いただきます。これは! うみゃあああああああ! ね! これ飲ましたらミカンちゃん脳みそ蕩けちゃうわね」
贅沢に濃いめに作ったジョニ青ハイボールは甘くてほんと美味しい。さらに酸味も増して、ハイボールを超えたハイボールね。
ジョニ青は死ぬ程美味しいんだけど、なんだか物足りないのはなんだろう?
“では最後に、金糸雀さんにとって宅飲みとはなんですか?“
「宅飲みは宅飲みじゃないですか? そんな深く考えた事ないですけど、手の込んだ事も適当にしても自分が飲みたい物や食べたい物、嬉しい時も悲しい時も私達を裏切らない、あるいはいい意味で裏切ってくれるオアシスみたいな物ですかね?」
“ありがとうございました。以上でアンケートを終了します“
「これアンケートだったんですね。こちらこそ、ジョニ青ごちそうさまでした」
ふと目を開けると、私は自分のマンションの部屋の前に立っていたわ。白昼夢というにはリアルな、まぁあれね。夢にしてはリアルな、でも酔ってないわ。これは飲み足りないわね。
「ただいまー!」
「おかえりであるぞー!」
「おかえりなりー!」
「金糸雀ちゃん、実は女神が来ちゃいましたー!」
おかえりが二倍、三倍で帰ってくるようになったのに私も慣れたわねぇ。今日はジョニ青! とはいけないけど、ジョニ赤、ジョニ黒あたりをみんなと飲もうかしら!
「デュラさん、今日何作りますか?」
「ニラ玉なんてどうであるか?」
「いいですねー」
「勇者たまごスキー! しゅわしゅわを合わせり」
「金糸雀ちゃん! 今後もご愛読お願いします! 次回から別世界線編の続きですよー! 一番人気の女神が出ないのはどうなんですか?」
「何言ってるんですかニケ様、というか、なんでニケ様にもう飲ませてるのよー」
さて、一人飲みから二人になって、三人、四人。まぁ、美味しいお酒とおつまみがあれば少々言葉が通じなくても問題ないわ。
それがお酒の魔力ね!




