第271話【27万PV感謝特別編】魔王様と東京競馬場飲みと時々メデューサ
みなさんお久しぶりです。
天童ひなです! 本日は魔王様が競馬場に行きたいと仰ったので東京競馬場にやってきています。賭け事をしたいわけではなく、魔王様は競走馬をえらく気に入られたんですよね。
「くーはっはっはー! なんと美しい毛並みか! 幻獣や神獣すらも凌駕する! 気に入った!」
競走馬はアスリートですからね。お世話をする人が大変大事に育てますから、私はみた事はないですけど、幻獣や神獣よりも綺麗なんですね。きっと、それらもちゃんとしたお世話をする人がいれば凄い綺麗な毛並みになるんでしょう。
「3−8! 3−8が来るんです! いけーいけー! あああああ!」
がっくしと肩を落としているのは殺戮の天使サリエラさん。魔王様がお昼をご馳走すると言ったらついてこられたんですよね。そして今現在散財しています。魔王様はそんなサリエラさんをニコニコと見つめながら、
「ギャンブルなどする奴は出世せんぞ! くーはっはっはー! さて、馬を見るのも堪能した。ではそこいらで一杯引っ掛けるとするぞ」
「ぎゃー! 私はあの黒い馬に全財産の300円をかけて心中するー!」
サリエラさん、ギャンブルは絶対に負けるようになってるのにどっぷりハマってるわね。そんな中で、一人。目隠しをした女の子が注目の的です。
「あの子、また当てたぞ!」
そんな女の子を見て魔王様とサリエラさんが、
「あれは! 女神様の妹君」
「くーはっはっは! 石にする目を持った娘か! おもしろし、娘よ! 今より食事である! 余に付き合う事を許す」
そう言って魔王様は人混みの中を堂々と歩み寄り女の子の元へ、魔王様の声を聞いてキョロキョロしている女の子の目隠しを魔王様が取って二人は見つめあってます。見る見るうちに魔王様が石化して……行かないですね。
「貴方は、南は闇魔界の御方。魔王アズリエル」
「いかにも! 余を石にしようとするその力気に入った!」
「女神様の妹君が何故こんな場所に?」
メデューサさんと言えば流石の私でも知ってますね。蛇の髪を持って見た人を石に変えてしまう怪物でしたっけ? ですが髪の毛は普通にストレートの黒髪。目には着ている服と同じゴスロリ調のアイマスクをつけている良いところのお嬢さんって感じですが、
「お姉様方とはぐれ、気がつけば見知らぬ人間の世界に来ました。ですが、私に手を差し伸べてくれた異界の勝利の女神様がいたのです。勝利の女神様の為にここでお馬さんの競争を当てているのです。ここでいただいた金子を勝利の女神様に納めるように言われていますから」
それって……流石に上納金みたいなの取り立てたら、終わりですよ。ニケさん……いくらなんでも流石に“ヤ“のつく自由業みたいな事をしているじゃないですか……
「クハハハハハハ! 良い良い! その件は後で余がなんとでもしようぞ。そんな事より食事である! ここは沢山食事処があるとこの前“てれびぃ“で放映していた! なんと現在74店舗もあるそうだ! これは良い!」
コロナの影響で大分少なくなったんですが、それでも74店舗は脅威ですね。かつては100店舗近くあったそうです。大金を得て勝利の美酒や食事に舌鼓を打つ人、逆に苦汁を舐め、それを諫める為に黙々と食事をする人。そんないろんな感情を渦巻く東京競馬場で飲もうという魔王様の思い付きです。
「余はフードコートが大好きである! 余の国にもこの世界の職人を勧誘し、フードコートを是非とも作りたいと思っておるぞ!」
底辺の食事処なんて一部では言われていますが、私もフードコートの遊園地感というかワクワク感は凄い好きです。お好み焼きのペアセットとソフトクリーム、インスタントとラーメン屋の間くらいのラーメンと硬い皮のフランクフルトなんて悪魔みたいな組み合わせで食べたりですね。
「クハハハハ! 貴様ら好きな物をこれで用意し! 20分後にこのテーブルに集合である! 良いな? 必ず飲み物を用意せよ! 乾杯をする」
そう言って魔王様は私たちに一人5000円を渡してくれました。東京とはいえスタグルじゃないので、競馬場グルメは比較的リーズナブルだったんですが、現在はスタグル並に高いんですよね。では、私たちは散会します。
それにしても魔王様。あまりにも綺麗すぎるので、一人で歩くとみんなが振り返ります。誰にでも笑顔を向け、ほら! テレビ局的な人に速攻で絡まれました。きっと競走馬がいかに美しいかを語っているんでしょう。
さて、フードコートと言えばこの私のホームグラウンドです。まずは当然ビールです。そしてよし野さんでモツ煮とお漬物を購入。そしてみんなでわけわけできるように皿うどんも買って見ました。ざっと2000円くらいですね。
「お待たせしましたー!」
既に魔王様は決めて着席していました。魔王様のお酒、カクテルです。信じられないことに競馬場の中にバーがあるんですよね。ラザニアと築地銀だこのたこ焼きです。
「ひなが二番手である! クハハハハ! 雑魚天使と女神の妹も戻ってきたようであるな」
「食の伏魔殿かここは!」
サリエラさんはペッパーランチのステーキにふくみつの焼きそば、そしてハイボールですね。なんというか、ポイですね。メデューサさんはまさかのソフトクリームにセブンのコーヒー!
「皆、揃ったであるな! 美しきこの世界の馬たちに賛美を送り、乾杯だ!」
「乾杯です!」
「魔王死ね! 乾杯」
「お馬さん綺麗ですよね! 直視できないのが残念です。乾杯」
プラコップをコツンと合わせて、みんな各々のドリンクを飲み、「うむ! うまい。たこ焼きも同じ味である! クハハハハ!」
もっもっもとサリエラさんはリスみたいに口を膨らませて焼きそばとステーキを食べてハイボールで流し込んでますね。普段何食べてるんでしょうか?
「冷たくて、甘くて、美味しい」
いきなりソフトクリームを食べてるメデューサさん、なんとなくAB型っぽいですね。焼肉の時にいきなりアイスクリーム食べ出すいろはさんみたいです。それにしても、競馬場グルメ、中々これは美味しいです。なんでしょうこのリゾート気分の食事は、私は流石にこの量を食べ切れる自信はないので、
「皿うどん、みんなで食べようと思って買ってきました! つついてくださいね!」
「その心意気やよし! 余のラザニアも食べるといい!」
ビールが無くなってきたので、私は二杯目を購入しに席を離れます。そして、競馬場内をキョロキョロと見回っているニケさんの姿。こんな所に居ないでおしゃれなカフェとかにでもいれば見てくれもいいのに、自称女神を名乗る変人さんに気づかれないように私はそーっと「ビールお願いします」と購入して戻ります。
「皆さんもドリンク二杯目ですね。メデューサさんはソフトクリームおかわりですか……」
全てのお店を回るのは不可能な選択肢の多さ、これはしばらく魔王様と飲みに行く時はここになりそうな予感ですね。
「魔王アズリエル。異界の女神ニケに渡すお金がまだ足りない」
「ふむ、最終レースまであと二十分程であるか、美しい馬を賭け事の対象にするのは気が引けるが仕方があるまい。クハハハハハハ! 余は未来程度、見通す事も容易い!」
ええっ! それイカサマ通り越して反則ですよ!
「女神の妹よ。手持ちの金を全て最終レース。12ー6ー8の三連単に賭けると良い」
本命の四番。ジャシンニケノメガミを入れずに十二番のノンダクレノエルフとカナリアシュゴウ、メジロタクノミーですか? 全部五番人気以下ですけど。
「分かった。魔王アズリエルの言う事に今まで間違いはない」
私も多分、それが凄い結果を生むだろう事は容易に理解できますね。そう、歓声と悲痛の声の中、掲示板には魔王様が言った通りの組み合わせが十分後に中々の大きな配当がなされていて、いくらメデューサさんが賭けたのか分からないけど、それはきっと一財産になるくらいの金額なんでしょう。
「クハハハハハハ! 勝った馬も負けた馬も皆美しい!」
魔王様ご満悦です。そして口元が緩んでいるメデューサさんはとんでもない量の札束を抱えて戻ってきました。そして私は知っているんです。こんな風にいきなり大金を得てしまった人がどういう運命を辿るのか。
「異界の女神、ニケ。探しました。こちら、ハッピーターン1枚のお礼です」
いやいやいや、おせんべい一枚に3000万くらい払っちゃダメですよ。
「確かに、お受けしましょう、ゴーゴン三姉妹の末妹。貴女に幸あらん事を」
とかキメ顔で帰っていったニケさんが、テレビで放映されていたのを私はどう言う顔で見ていればいいんでしょうか?
謎の外国人、大金をスーパーの袋に入れて徘徊。




