表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
259/367

第259話 ハーフエルフと豚の角煮と麦焼酎のお湯割と

「コーラが良いか? ジンジャエールが良いか? 金糸雀殿、どうするである?」

 

 本日は豚の角煮を作ろうとデュラさんと話してたのよね? デュラさんがコーラーとジンジャエールを超能力で浮かせて私にそう質問してくるので、私は指を振るわ。

 チッチッチ!

 

「本日はファンタ新商品のレモンプレミアムハニーを使ってみましょ」

 

 結構甘いから角煮にはもってこいじゃないかなって思うのよね。角煮なんてどんなお酒にも合うオツマミだから、無難にビール? ハイボール? 日本酒? ワインだって合うでしょうけど、ここは初心に戻ろうかしら?

 

「デュラさん、ミカンちゃんは撮影行っちゃったし、それについてキサラちゃんも行ったので、まったり飲みましょ」

「うむ、そうであるな」

 

 ピンポーン!

 

「あら、誰か来たわね。アマゾンかしら?」

 

 私が玄関に向かうと、最近このマンションに住み始めたマッドサイエンティストのアン博士がやって来たわ。※254話登場

 

「セニョリータ金糸雀くん、飲まないかい? こんな物をセニョール町内会長からもらったんだ」

 

 すごむぎ持ってきたわ。25度の方じゃない。アン博士、くっそ酒強いのよね。あとウチの家電勝手に改造するから勘弁してほしいのよね。

 

「ネメシスさんは?」

「ドニータはセニョリータ勇者くんが出かけて行くのを見てついて行ってしまったよー」

「なんだかんだ言ってネメシスさん、住み着いてるんですね」

「準クソ女神は自分の立ち回り方をよく理解しておるな」

 

 やっぱりニケ様が振り切ってるのよね。とりあえず、アン博士がお酒を提供してくれたので、すごむぎで一杯やろうかしら。

 

「お湯割りで飲みましょうか?」

「いいね。日本の心だね」

「アン博士、日本人じゃないでしょ」

 

 ガチャリ。

 

 さぁ、次こそ異世界からの住人やってきたけど、我先にとアン博士が走って行くわ。この人もある意味ぶっ飛んでるのよね。

 

「わぉー! とってもキュートだ! 君はセニョール? あるいはセニョリータ?」

「えっ? えっ? なんだ?」

 

 迷惑かけない内に私とデュラさんで様子見。

 どんな人来たのよ? 尖った長い耳、エメラルドグリーンの綺麗な瞳、真っ白い肌。ふーん、エルフじゃない。

 

「むっ、あれはハーフエルフであるな。エルフと別種の交配種であるぞ」

「ま、魔物? 弓は、どこかに落とした……」

「君は……セニョールだね。まぁ、入りたまえ、セニョリータ金糸雀君の部屋だよ」

 

 私の事をハーフエルフの少年は見つめるので、私は、

 

「犬神金糸雀、ここの家主ですよ。ちなみに、あのデュラハンのデュラさんは確かに魔物ですけど、ウチの同居人なんで安全ですよ」

「俺は……見ての通りハーフエルフのユンリ、穢れた血だ」

 

 見ての通りというけど、ウチに毎回来るヤバいハイエルフのセラさんと見分けがつかないわ。アン博士を見てみるも分からないポーズ。

 

「まぁ、中で飲みながら話を聞こうじゃないか! 生き物はみんな混ざり物だよ。この私も、特に日本人のセニョリータ金糸雀君なんてどこから来た人間か分からないくらいだ」

 

 らしいわね。日本人、謎の人種説ね。

 

「我なんて元々人間から魔物になってるであるからな! ささっ、ユンリ殿。美味しい角煮もできているである」

 

 私達に戸惑いながらユンリさんはついてきたので、本日のメニュー、角煮と、しっかり沸かしたお湯をポットに入れて、お湯六割、すごむぎ四割の黄金比率のお湯割を用意して、

 

「それじゃー! ユンリさんのお話を聞きながら、乾杯よ!」

「乾杯!」

「乾杯であるぞ!」

「……いただきます。乾杯」

 

 あー、まだ肌寒い日がある春の終わりにあっついお湯割りは五臓六腑に染み渡るわねぇ。

 

「ふぅー、うまいね。酒ってのは身体を殺す毒で、心を癒す薬さ」

「まぁ、私は体も癒されますけどね」

「うむ。全ての種族がもれなく好きな物は酒であるからな」

「あちっ……熱いお酒?」

 

 あー、いいわぁ。この異世界の人あるある。しかも美少年が舌を出して熱がってるとか、ほんとありがとうございます!

 

「お湯でお酒を割るなんて、日本からの輸入カクテルだもんね。ほんと謎大き国だよここは。セニョリータ金糸雀君、梅干しを」

「あっ、はーい! レモンも切りますね」

 

 お湯割りって世界基準でみるとカクテルなのよね。確かに梅干しやレモンでフレーバー変えれるし、それに酔いがマイルドになるよね。

 

「ささっ! 口の中を酒で洗ったら! ガツンと脂がのった角煮であるぞ! ファンタのレモンプレミアムハニーで味付けしてある」

「セニョール・生首くん、実に素晴らしい料理だね。さぁ、セニョール・ユンリくんも食べようじゃないか」

「あっ、えっと、俺は……」

 

 ユンリさんはハーフエルフという事で、エルフからも他種族からも迫害されてるっていう一般的なアレの話をしたわけなんだけど。

 

「あはははは! 私なんてジーニアス(天才)がすぎるからって、監禁させられて殺人兵器作らされていたんだよ? 大丈夫大丈夫! 迫害されているウチは花だよ」

 

 怒られている内はみたいなノリでそんな事言ってるけど、ここは悲しむか怒るところなのに、アン博士狂ってるから、大爆笑よ。

 

「と、とにかく角煮食べましょ。ウチの部屋は神がこようと奴隷がこようと扱いに代わりはないですから! ね?」

「うん、いただきます」

 

 ファンタ角煮は最初、硬いかな? とか思ったんだけど歯が数ミリ肉に入るとふわりと溶けるように食べられるわ。うーん、これは美味しいわね。

 

「うまい!」

 

 ガツガツとユンリさんは角煮にがっついてる可愛い! そんなユンリさんを満足そうにアン博士は見つめすごむぎのお湯割をちびちびやってるわ。この人、狂ってるんだけど、お酒の飲み方は大人なのよね。

 

「ユンリさん、お湯割お代わりは?」

「いる!」

 

 お湯割りで飲むとどんどん焼酎って進んじゃうの謎なのよね。

 1.8Lのすごむぎが無くなってきたわね。身体も温まってくるし、脂っこい料理によく合うし、最初表情が固かったユンリさんにも笑顔が溢れてきたわ。

 

「さて、セニョールユンリくん、君はこの楽しいひと時を終えた後、元の世界に戻る事になる。そんな地獄に戻る必要は私はないと思うのだよ」

 

 あら? また保護するのかしら?

 

「俺は……」

「逃げる事は恥ずべき事ではない。かくいう私も逃げ出してこのマンションで隠居しているわけだ。逃げたいというのであれば、匿ってあげよう。しかし、もし立ち向かうというのであれば、何かの縁だ。このスマートウォッチを君に与えよう。君に力を貸してくれるだろう。『時計型探偵ごっこ用麻酔銃VERSUS(抵抗)』さ」

 

 なんかヤバい物作ったわねアン博士。そんな怪しげな腕時計貰っちゃダメよ! と思ったけど、ユンリさんはそれを掴んだわ。

 

「助けなければいけない同胞がいる」

「よろしい。どうしょうもない時、謂れのない力に屈服しそうな時、この力を解放するといい。しかし、この力は君が君を虐げてきた者達に同じ目を遭わせる程の人理を超えた力をもたらすだろう。ゆめゆめ忘れてはいけないよ?」

「ありがとう。きっと人ではないみんな。アン博士、金糸雀さん、デュラさん、このご恩は忘れません」

 

 そう言って扉の奥に消えていったユンリさんは何かに怯える少年から、いつしか世界を変える背中をしていたわ。

 それから一時間後。

 

「かなりあぢゃーん! ハーフエルフが凄まじい力を持って私に攻撃してきたんですよー! おかしくないですかー? 私が力を貸していた圧政を引いている王国が悪いのに〜! 私は悪くないんですよー!」

 

 元凶ニケ様か……

 

 地球のマッドサイエンティストが異世界に解き放った玩具は長らく歴史に名を残す事になるわ。

 畏怖を持ってこう語り継がれたの。

 

 圧政に対抗するためハーフエルフが手に入れた力は、皮肉にも圧政者の名を冠する超兵器だった。

 勝利者などこの世界にはいない。

 その咆哮は勝利を砕き、勝利をへし折り、勝利の女神を滅ぼす。


『亞人種最大最後ノ究極的一撃ヲ以って厄災の女神を撃破スベシ──』


『《《腕輪型終焉終息装置》》VERSUS』は、

 

 幾度もの堕女神によるたかりの末に亜人種が辿り着いた、

 運命に争い、女神を爆睡させる時計型の麻酔銃である。

 

 あれあれ? おかしいなぁ? 私、この麻酔銃どっかで見た事あるわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ