第255話【25万PV感謝特別編】魔王様と無限レモンサワーと時々ホルモン
「うまい! 明太子は無敵である!」
お久しぶりです! 天童ひなです。魔王様は明太子が大好きです。それもお土産用とかの滅茶苦茶高いピンク色のやつじゃなくてスーパーで売ってる真っ赤なのがお好みみたいですね。この前、サリエルさんとダークエルフさんと炊飯器一杯にご飯を炊いて白ごはんに一番合う選手権を開いていました。
卵、鮭フレークという強敵がいる中、第一回優勝に輝いたのは明太子でした。私が推したマヨネーズはランク外でした。
「時にひなよ。本日はダークエルフのやつが最高の店に連れてゆくと息巻いておった! 時間はあるか?」
「ダークエルフさんが? 生活カツカツだったじゃないんですかね? 私も人の事言えないですけど」
「クーハッハッハ! あやつ余の為に死ぬ程生活を切り詰めておった故! 付き合ってやるのも主の仕事であろう」
与えるだけじゃないんですね。いや、よく考えれば本来搾取する側の魔王様の方が、毎回ダークエルフさんやサリエラさんに奢ってますもんね。なんならサリエラさんには仕送りしてるくらいですし……
「いつもの駅前に待ち合わせ故、参るぞ!」
「はーい、準備します」
そういえば、この前。異世界の服装があまりにも浮くのでガールズバーの先輩のいろはさんに二人のコーデをお願いしたんですよね。予算それぞれ1万円くらいで……もちろん、いろはさんには二人は異世界の人! だなんて知られないように細心の注意を払いました。どちらかといえば私もお洒落には無頓着な方なので、助かりました。
「あそこに人だかりができておるな! きっと奴らに違いない」
でしょうね。異世界の人って見てくれが良くないといけない理由とかあるんでしょうか? というくらいみんな耽美秀麗なんですよね。世間のルッキンズムに全力で喧嘩を売りに行ってる感じがロックで嫌いじゃないです!
「お姉さん、モデルとか興味ない?」
「黙れ死ね! 殺戮の天使、こいつらを召っせ!」
「臓物を食いにいく前に人間達を召っすのか? 別に構わないが」
滅するみたいな意味で天に召そうとしている二人のところに私達は向かいます。ダークエルフさんは、そのモデル体型と綺麗な褐色の肌を生かしたカーキー色のハイウエストパンツに白いドレスシャツ、そして同じく白いロングコートで大人可愛い感を出してますね! 100点です! サリエラさんは白ニットに黒のジャンパースカート、同じく黒のキャスケット帽が元気可愛い感じで100点です!
「待たせたな!」
「いえ、魔王様、つい先ほど! 二時間程前から待っていただけです!」
「来るのが遅い! 死ね魔王!」
異世界の人あるある。すぐ死ね! って言うんですよね。魔王様は何を言われてもニコニコしてますけど。魔王様とダークエルフさんと殺戮の天使のサリエラさんと私たちはしばらく歩きます。
本日やってきたお店は……0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場ときわ亭池袋西口店です。ホルモン食べにきたんですね。
「ここが貴様、イチ押しの店か? 活気よし! 気に入った! くーはっはっは!」
「はい! 魔王様! 予約をしていますので、すぐに入れますよ!」
「よくやった! では参る」
私達は案内されたテーブルの前に、レモンサーバーがある事に驚きました。これが0円レモンサワーですね。今回はコースの料金に飲み放題もついてますけど、レモンサワーの飲み放題90分500円ってびっくりするくらい安いですね。
「ホルモンは盛り合わせを先に頼んでいますので! さぁ、魔王様! この無限に飲めるレモンサワーをお楽しみください」
「ほぉ……お店の人がプシューってやるやつか! これは興が深い! くーはっはっは!」
私たちはみんなレモンサワーを入れて、ダークエルフさんが掲げるジョッキに合わせます。
「では! 本日は我らが漆黒の太陽! 禍々つ君! 魔王様へ乾杯!」
「わー! 乾杯でーす!」
「うむ! 乾杯である!」
「魔王しね! 乾杯!」
私たちは一杯目のレモンサワーを飲んで……これは美味しいですね! 味は二の次みたいなヤバいお酒の味がするかと思ったんですが、看板メニューだけあって……
「うむ。健やかだ! うまい」
「はー、おいちぃ、もう一杯。魔王様もいかがですか?」
「うまーい! レモンうまー!」
異世界の人達もご満悦ですね。このレモンサワー、二種類フレーバーを選べてノーマルが飽きてきたらフレーバーを入れて楽しめます。今回私たちは、定番のつぶつぶ贅沢レモンと旨しょっぱ梅を選んでみました。
「お待たせしました。仙台ホルモン味噌でーす!」
どうやら仙台ホルモンの焼き方はどさっとお皿のホルモンを網の上に入れて焼くみたいです。いい感じの焦げ目がついたら食べられるとか豪快ですね。山賊焼みたいな感じです。
「もう食べられるみたいですよ!」
そう私が言うと魔王様が最初にパクりと食べて、
「おぉ! この臓物は旨い! クハハハハ!」
「お気に召していただき光栄です! ここの臓物は私も贔屓にしていますので!」
「むぐむぐ。魔物の貴様らは当然として、人間って野蛮だな! こんな臓物を食い散らかして、んまいんまい!」
ホルモンって言いましょうよ! ホルモンのいい感じの油が口の中を満たしたところでレモンサワーでさっぱり洗い流すように口の中をリセットします。
これは、たまりませんね!
私はつぶつぶ贅沢レモンのフレバーを入れてレモンサワーを注いで飲みます。次に運ばれてきたレバーを見ながらしばしレモンサワーパーティーですね。
「こんなに旨いのであれば女神ニケも呼んでやればよかったな! クハハハハ!」
「そうですね! 魔王様、あの女神に恵んでやるのも一興です」
「ニケ様だと! なんで呼んでないんだよぉ!」
いや、呼んだらお店に滅茶苦茶迷惑じゃないですか、あの自称女神のニケさん、酔ったら本当にややこしいですからね。
「皆さん、レバー焼けましたよ!」
「魔王様、私がトングにて取りましょう!」
「うむご苦労」
魔王様は梅のフレーバーをレモンサワーに入れてニコニコ楽しんでますね。なんかこういうの悪くないですね。みんなで焼肉とか田舎にいた時の高校以来ですよ。
「ひな。どうしました? レモンサワーばかりでなく、臓物もお食べなさい!ここは私の! 奢りですから!」
ちょっと変わってますけど、ダークエルフさんもサリエラさんもいい人ですからね。人かどうか怪しいですけど……
「んまいんまい! 肝臓の臓物もんまい! んぐんぐ。無限のレモンミードんまい!」
普段、死ぬ程極貧生活をしている殺戮の天使、サリエラさんはこれでもかというくらい食べてますね。まぁ、焼肉って食い溜めする感じ、分かります!
でもー! 私はレモンサワーですねぇ!
「ひなよ。少しペースが早すぎはせぬか? 七杯目であろう?」
「多分、アルコール度数低いので大丈夫ですよ!」
※二十杯程飲んでみましたが、その辺の居酒屋で4、五杯飲むくらいの酔い方でしたので多分度数かなり低いです。
「とはいえ、酒だけと言うのは店にも悪かろう」
「それもそうですね。タン塩頼みますね!」
「ふふ! 好きなだけ頼みなさい」
食べ放題ですしね。というか、これ食べ放題のクオリティじゃないですよ。普通に一皿いくらの味ですね。私達は無限に飲めるレモンサワーと濃いめの仙台ホルモンに舌鼓を打ちながら楽しい時間を過ごしました。
「壺漬けドラゴンカルビを頼みましょう! シメにいかがですか? 魔王様?」
「良い! 許す! 頼むといい」
物凄い長いドラゴンカルビを焼いていると、魔王様がレモンサワーを飲みながらニコニコと話し出しました。
「ダークエルフよ。人間が魔物に有用な魔法を開発した時、緊急会議があったのを覚えておるか?」
「当然でございます!」
「うむ。貴様は役立たずであった故、掃除用のチリトリを買いに麓の村に向かわせたな?」
「はい! 掃除は仕事の基本でございますから! 魔王様や幹部様が気持ちよく人間達を殲滅する為の重要な仕事にございます!」
ダークエルフさん、クビにされないってよほどホワイトな企業ですよね。
「そんな貴様が一人で働き、余に食事を振る舞うとは、褒めて遣わす!」
ブワッと! ダークエルフさんは号泣し、「もったいないお言葉にございます!」と傅いてますけど、実際その通りですよね。
私達は一生分のレモンサワーを飲み終えると、食べ放題の時間も終わったので、ダークエルフさんが「支払いは私に」と言うので帰る準備、店の前で待っていても支払いのダークエルフさんが戻って来ず。
まさか……様子を見に行くと、
「なんだと! ドラゴンカルビは別料金!」
やっぱりお金足りてなかったんですね。あわわわわと困っているダークエルフさんに一緒に様子を見に来た魔王様が、
「ダークエルフよ。財布の中をよく確認すると良い」
と仰りダークエルフさんが確認すると、
「一万円札が何故かあった! ふふこれで足りるでしょう! 魔王様、おまたせしました」
多分、魔王様が入れましたね。
でもそんな事聞くのは野暮ですよね!
私たちは気持ちよい空気で家に帰ると、そこに美人のヤバいニケさんがストゼロ持って待ってました。
長い夜になりそうです。




