第252話 ラードーンとドリトスDIPサルサとさくらビールと
「うきゃあああああ! ドリトスディップなりぃいい!!」
ミカンちゃんが朝っぱらから絶叫してるわ。ドリトスって言ってるから好きなお菓子でも売ってたのかしら? 本日のミカンちゃんはこれまたあざといチャイナ風ジャージに身を包んで……って私が見繕ったんだったわ。全く何着てもクソ似合うわねほんと。
世の中、人の目を気にせずに好きな服を着ればいいとか言うけど、ある特定の服装になってくるとミカンちゃんとかニケ様みたいに超を超えるような美形じゃないと似合わない服装ってあるのよね。まぁ、コスプレメイクレベルで服装に合わせたメイクで何とかなるんだけど、素で似合うのはやっぱり異世界の芸術的な造形がなせる技なのかしら?
「勇者、何を朝っぱらから騒いでるのであるか?」
「そうよ! ミカンちゃん、お菓子くらいで騒がないの!」
「金糸雀ぁ! デュラさん! ドリトスにつけるディツプが売ってたり!」
ドンとミカンちゃんが二つ置いたヨーグルトみたいな形状の容器。見たところあのスナック菓子のドリトスの名称が書いてあるわね。ドリトスDIPサルサという事だから、スナック菓子のドリトスをつけて食べるんでしょうね?
そんなの……
そんなの絶対、クソ美味いに決まってるじゃない!
「要するに、ミカンちゃん。今日はそのクソジャンクなのをおつまみにしたいって事よね?」
「勇者、かなりあの話が分かるところちょー、すこ!」
「ほぉ、では玉ねぎとひき肉を炒めた物でも用意するであるぞ!」
「デュラさんマジつよつよぉ!」
とい事で今日は擬似的にニューメキシコ的な料理を作るわけだけど、そうなるとテキーラーというより、ここはビールね。この前、購入したサッポロのサクラビールを出すとしますか?
ガチャリ。
さて、いつもほんといいタイミングで来るわよね。最近、分かったんだけど、お酒を選んだ時にくる人は大概安全な状況でやってきてて、それ以外の時は違うみたいなパターンはありそうなんだけど、多分今回来た人はどうかしら?
「ここが、様々な竜種が集う奇跡の酒場で相違ないか?」
やだイケメン!
細い目の中華風な服を来たスラリと高身長男子きたわ! 額からニョキっと伸びた角と言葉から連想するのはこの人は竜とかドラゴンとかそういう類の人ね。
「奇跡の酒場ではないですけど、お酒なら飲めますよ。ここは私の部屋で、私は犬神金糸雀です」
「やはりここか、犬神金糸雀。レヴィアタンやクラーケンが言ってた名前と同じだ。名乗りが遅れた事許せ、我が名はラードーン、龍神は末端に名前を」
うん、まともな人の名前が上がったからきっとこのラードーンさんもまともな人っぽいわね。
だってイケメンだし。
「ラードーンさん、とりあえずリビングへどうぞ」
「ありがとう。招待感謝する」
もう! イケメンなんだからぁ!
リビングにラードーンさんを案内すると、ミカンちゃんとデュラさんが顔を引きつってリビングに来る彼を見てるので多分規格外系の人なんでしょうね。
「デュラさん、ミカンちゃん、こちらはラードーンさん。多分、ドラゴンの方よ。ラードーンさん、あちらは勇者のミカンちゃんとデュラハンのデュラさんです」
「貴殿らも聞いている。少し邪魔をさせてもらうがかまわないか?」
強者なのに腰が低いタイプは基本いい人、デュラさんは玉ねぎの微塵切りとひき肉を塩胡椒で味付けした物を用意。
「今日は名のあるラードーン殿に出すには少し手は混んでないがどうぞどうぞである」
「礼を言う。皆は我が名をラドンと呼ぶ事を許そう」
阿蘇山の火口に住んでそうな名前だけど、きっと親戚かしら?
みんなが定位置についたところで、冷やしておいたサクラビール、グラスに桜の塩漬けをパラリと二、三枚。そこにサクラビールを注いで!
「じゃあ、満開の桜とラドンさんに乾杯!」
「乾杯なり!」
「乾杯であるぞ!」
「なんと美しい麦酒か、乾杯」
んっんっんっ! わー! 毎年の事だけどサクラビールは美味しいわねぇ。あと桜の塩漬けのツイストがいい味出してるわ! 泡を多く出すのに塩を少し入れるけど、ビールと塩の相性バッチリなのよね。
「じゃあ、ミカンちゃんが朝から騒いでたドリトスDIPサルサ味を試してみましょうか?」
ドリトスにデップソースをつけて、デュラさんが作ってくれたひき肉と玉ねぎの微塵切りをさらに乗せて、いざ実食よ!
ラドンさん、美味しかったのか嬉しそうに微笑んで、指についたドリトスの粉をぺろりと舐めてる!
もう! 可愛いんだからぁ!
「かなりあがキモキモオーラ出せり」
「ほら、ミカンちゃん、ディップと餡をのせたので食べてごらんなさい」
「いただきなりぃ」
「ラドン殿も2枚目どうぞであるぞ」
「いただこう」
これは、あれね。子供が好きそうな味ね。全然辛くないし、美味しい。そしてビールの女房には最適すぎるわ!
「うみゃああああああ! ディップつよつよぉ!」
「うん! 美味しいな」
ミカンちゃんとラドンさんが美味しい美味しいと言っているので、デュラさんも一枚食べて「おぉ、これは麦酒によく合うであるな」と納得してるわね。二本目のサクラビールを全員に配る頃、ガチャリと女神の二人がやってきたわ。
「金糸雀ちゃーん! 女神、きましたよー!」
「金糸雀ぁー! 出迎えはないのかのぉ?」
ミカンちゃんが難色を示す中、ラードーンさんがサクラビールを美味しそうに飲みニケ様とネメシスさんがやってくるのを見ると、手をあげたわ。
多分、久しぶり! とか、こんにちは! ジェスチャーっぽいけど。
「あら、天界の果樹園にいるラードーンじゃありませんか? 金糸雀ちゃんの部屋で何をしているんですか? ここは私が英気を養う場所ですよ?」
違いますけどね。
「うむ、ラードーンにはちと早い場所と言えるな。果樹園に戻るといい」
あれかしら? ラードーンさんより、女神二人の方が位が高いのかしら? ラードーンさんは二人にそう言われ、テーブルを布巾で拭いて、自分が飲み食いした缶やお皿をまとめると、私たちに笑顔を見せて、
「邪魔をしたな! 女神の二人が言うように、我が仕事に戻ろう」
「えぇー! 勇者、ラドンともっと飲みたいかもー! クソ女神が消え去れー!」
「うむ、クソ女神共が消え去るべきであるな! ささ、ラドン殿。もう一杯」
ミカンちゃんとデュラさんに止められるも上司? の指示には従わないといけないのか、椅子から立ち上がった時、もう一人の来訪者が……
「金糸雀ちゃー、少し寄っていってよかー?」
そこには純白の美女、下半身はウネウネと触手を持った、女神様やドラゴン、神々と並ぶ凄い人で、凄い人格者の!
「クラーケンさん! 久しぶりですー! どうぞどうぞ!」
「ありがとう。じゃあ、お邪魔するねー! ニケに、ネメシスにラドンもおるっちゃね? ラドンはなんで立っとーと? 座りんしゃい!」
この状況で、顔色が悪いのはニケ様とネメシスさん、ラドンさんの代わりにミカンちゃんがチクったわ。
「クソ女神が、ラドンを帰らせようとしたー!」
「勇者ちゃん、そりゃほんなこつね?」
「マジなりぃー!」
「マジであるな! ラドン殿はそれで帰ろうとしているところである」
これ見よがしに二人がチクりまくると、クラーケンさんは茹でイカのようにグラグラと湯気を身体から出して、ニケ様とネメシスさんを睨みつける。
「なんでそげん酷か事ばいうと? こっちきて、正座しんしゃい! ラドンはお呼ばれしちょるんやろ? そんば座って飲みんしゃい」
「クラーケンが言うならそうしよう」
「昔からラドンは上位神になんか言われたら従う癖なおしんしゃい! 今はパワハラやけんね?」
神様の世界でもパワハラとかあるんだ。というか、ニケ様とネメシスさんってなんでこんな感じなのに、結構偉い神様なんだろう?
クラーケンさんにしこたま怒られた後、ニケ様とネメシスさんは泣きながら弁明したけど、あまりにもその発言が自己中すぎて、よりミカンちゃんとデュラさんに軽蔑された結果になったわね。
「金糸雀、勇者、デュラさん。大変ご馳走になった。我が守りし黄金の果実を置いていく。食後のデザートに食すといい」
そう言って大きなザボンをラドンさんは置いて行ったのよね。これってもしかして本当にラドンさんのいる所って熊本だったりするのかしら?
謎は深まるばかりね。




