第250話 婚約破棄された令嬢とみぞれカツとアサヒスーパードライスペシャルパッケージと
「うん、酒飲みにしか分からない苦悩、春ビールを買ってしまう事ね」
私は部屋にまだアサヒスーパードライのストックが2箱丸々48缶あるというのに、ピンク色だからという理由だけで、スーパードライの春限定パッケージを1個箱密林でポチったのよね。
それだけじゃなくてサクラビールも一箱買っちゃったわ。まぁ、私とミカンちゃんとデュラさんに女神の二人がいればすぐ飲み終わるからいいんだけど、気をつけないといけないわね。今度、ママが部屋に来るって言っているから、お酒ばっかり飲んでいる姿なんて見せたら実家に連れ戻されちゃうわ。
「ミカンちゃん、今日は何か食べたい物ある?」
「勇者、さかな食べたいかもー」
「ミカンちゃんならそう言うわよね。という事で、今日はデュラさんの食べたい物作るけど?」
「我であるか? 我はなんでも美味しく食べられるであるが、殿下がトンカツを美味しく食べていたので、たまにはトンカツも良いかもであるな。魔王軍で食べさせてやりたい物である。しかし殿下は育ち盛りであるが、雌型の魔物は体重を気にするであるからな」
魔物もダイエットとか大変なのね。なんだか、他人に思えないから私は魔王軍の女性の魔物達の為に人肌脱ごうじゃない。
「カロリー半分以下のトンカツ作れますよ?」
「マジであるか?」
揚げずに作るからどうしても味が少し落ちるので、工夫が必要なんだけど、私はデュラさんとミカンちゃんの前で実践して見せたわ。
「今回はオーブントースターを使ってトンカツを作るから、下準備が少し手間なの。筋切り、叩いて、ヨーグルトにつけておくわ。カロリーを気にしなければここでニンニク醤油とかで味付けしてもいいんだけどね。限界まで柔らかくするの」
「かなりあ、たまにテレビの料理番組の人みてー!」
「うむ、いつもその広い知見に脱帽であるな」
酒飲みは料理が付随して趣味になるのよね。美味しいお酒の美味しい肴。さて、柔らかくなったお肉を水を使って蒸し焼きにするの。で、その間にパン粉をフライパンで炒って、蒸し焼きにした豚肉にパン粉をつけて、オリーブオイルを霧吹きでシュッシュと軽く吹きかけてオーブントースターにイン。
「これで、カロリー半分くらいのトンカツできるわよ。これだけやっても油で揚げるトンカツには若干味は劣るわ」
「えぇ、勇者、美味しい方がいいかもー」
絶対に太らないチートとかいう物を持ってるミカンちゃんは好き放題言ってくれるわね。その発言、世の中のすべての太りたくない人を敵に回すわよ。でもミカンちゃんの言う事も最もだわ。できれば美味しい物食べたいわよね。
「そこでおろしポン酢よ。生姜を少しすってかけてもいいわ。別物の和風食としてさっぱりサクサク美味しくいただけちゃうの! もちろんビールに激合うんだから」
ドンとアサヒスーパードライのピンクの缶、スペシャルパッケージを置くと、
ガチャリ。
本日のお客様がいらっしゃったみたいね。
「あの……お邪魔します」
「はいはい、えっ!」
すっげー美人なのにすっげー薄幸そうなお姉さんきたわね。割といい物着てるので、どこかのお姫様かご令嬢ってところかしら?
「狭い部屋ですけどどうぞどうぞ」
「あのここは?」
「私は犬神金糸雀です。この部屋の家主です。貴女は?」
「セレスティア・サチウス・ギルです。片田舎のギル男爵の娘になります」
名は体を表すというけど、偶然よねきっと。うん、絶対そう。セレスティアさんは私を見ると、自暴気味な微笑みで、
「私、突然。結婚するはずだった幼馴染に婚約破棄されたんです」
うっわー、めっちゃ重いわ。どうしよ。でもこんな美人と結婚破棄するとか、幼馴染バカなんじゃないの? 私が男なら、秒で幸せな家庭作るけど?
「くっそ、不幸そうな女きたり」
「うむ、信じたくないものであるが、我より負のオーラに満ちているであるな」
「こらー! 二人とも失礼でしょ! こちらはセレスティアさん、幼馴染の人に婚約破棄されちゃって心が折れそうなんだから」
「えっ、ガチの人なり?」
「おぉ、気を落とす事なかれであるぞ! そうだ。勝つ為にトンカツを一緒に食べようである!」
「えっ? えっ? 首だけの御仁に? どこかの姫騎士様?」
「こちら、デュラハンのデュラさんと勇者のミカンちゃんです」
「えっ? ????」
まぁ、よく考えればデュラハンの首と勇者でーす! とか言っても何言ってんだコイツみたいに思うわよね。
ガチャリ。
「わー! 金糸雀ちゃん、美味しそうな匂いがするから偶然きちゃった!」
「良い匂いがするなぁ! 偶然来たぞー」
なんて嘘が下手な女神なんだろう。まぁ、でも今日はこんな女神でもいてくれると助かるかも。
「ニケ様、ネメシスさん。かくかく、しかじかで、ご馳走してあげるので、何か力を貸してくれませんか? あと、なんか最近私ストーカーに合ってるのでこれもどうにかしてください」
と私は女神の二人にそう言うと、
「なんですと! こんな何処の貴族の娘の事はどうでもいいですが、金糸雀ちゃんにストーカーは許せませんね。即死の呪いをかけておきましょうか?」
「これまて、じわじわ100日かけて死ぬ呪いにするぞニケよ」
「殺すのは無しにしてもらっていいですか? なんか相手を懲らしめるような」
本当にこの二人、女神なのかしら? 私がマイルドな仕返しを提案すると、ネメシスさんがゴソゴソと真っ黒な水晶的な物を取り出して、それを掲げると、大山のぶ代さん的なニュアンスで、
「ツウシンヨウ! スイショー!」
と要するに相手にこちらの映像を見せれる的な水晶ね。で、ネメシスさん曰く、盛り上がっている姿を見せてやればいいと、と言う事で私たちはアサヒスーパードライのスペシャルパッケージとみぞれカツを用意。
「じゃあ、金糸雀ぁー、準備よいぞー! 3・2・1きゅーじゃ!」
ネメシスさんちょい古いわね。要するに撮影開始なので、私はピンク色のアサヒスーパードライの缶を持つてセレスティアさんの肩を抱いて、ミカンちゃんとデュラさんとニケ様と、
「ウェーイ! 元婚約者の幼馴染クンみてるー? 今から君の大事な元婚約者さんと私達で……」
「パーティーなりー!」
「くそ婚約破棄野郎を忘れるパーティーである!」
「女神を褒めてください! 金糸雀ちゃん!」
「この水晶レターが届いたら元婚約者さん……婚約破棄して良かったとしか思わないんじゃないかしら、とりあえずセレスティアさん、次があるわよ! 乾杯!」
「乾杯なりぃ!」
「乾杯であるぞ!」
「みんな、私を讃えてくーだーさーい!」
「皆さん、ありがとうございます! 乾杯」
いや、なんでこんな可愛くて美人の人と婚約破棄するのかしら? なんか私が腹立ってきたわ。なんなのほんと、そんな感じできゅうっとビールを飲み干す私。あっ、アサヒの春ビール。いつものスーパードライと違う感じがして美味しいわ。
「私、あまりお酒は得意じゃないんですが……この麦酒は王宮に送るような物よりも上品で……形容できないような美味しさです」
さすがは世界を虜にしたアサヒビール。異世界の人の心を虜にするなんてお茶のこさいさいね。事実お隣韓国なんかだと自国ビールよりアサヒの方が売れてるし、ただクラフトビール専門店で何故か日本代表がアサヒスーパードライを置いてあったのは謎だったわね。
「あさひ! すーぱぁ! どらあぃなりぃ! うみゃあああ!」
「金糸雀ちゃん! 美味しい! こんな麦酒、天界にはないですぅ!」
「金糸雀ー、天界はどうして日本のビールがないんじゃああ!」
知りませんよ。日本の大手メーカーと契約でもすればいいじゃないですか!
「ささぁ! しっかり大根おろしとポン酢が効いているおろしカツであるぞ!」
「わぁあああ! シュニッツェルですか? 凄いいい匂い」
んん? ドイツ料理が異世界に行ったか、異世界からの料理がドイツに伝わったか、また謎の文化が確認されたわね。はっきり言ってドイツのシュニッツェル魔改造料理のトンカツだけど、豚を揚げる料理としては日本のトンカツが世界一美味しいわね。
「これは、ドイツという国のシュニッツェル、あるいはフランスのコートレット。総称してカツレツという料理をこの日本風に生み出したトンカツという料理である。そしてソースはおろしポン酢。これまた女性に嬉しいヘルシー仕様であるぞ!」
よく考えたらデュラさん以外全員女の子ね。グビグビ飲んでるニケ様に対して、セレスティアさんはワインでも嗜むように上品に飲んでるわ。アサヒースーパードライのスペシャルパッケージもニケ様みたいな飲まれ方じゃなくてセレスティアさんみたいに味わって飲んでもらった方が嬉しいわよね。
さぁ、おろしカツをいざ実食。
サク、じゅわ! んんんっ、にがすっぱい中に大根と豚肉の甘みが広がって、これはビールが進むわぁあ!
「トンカツ、うみゃあああああああああ! つよつよぉお!」
ミカンちゃんの花丸も出たところで、デュラさんも「おぉおお! これは美味い。美味すぎる!」「美味しいなぁ? 金糸雀ぁ?」「金糸雀ちゃん、私はですね! 異世界の魔物が来た時に! トンカツ美味しい!」とカオスな状況になった状態だけど、
「ふふふ、ここは賑やかでお食事が楽しいですね? 金糸雀さん」
「そうですね。これだけは私もそう思います。もし、セレスティアさんさえ良ければしばらくウチに滞在しますか? 狭い家ですけど、毎食こんな感じですよ」
傷心の心を癒せるかは分からないけど、逃げていいことだって私はあると思うのよね。もうこのさいあと何人増えても変わらないし……
「あーしまった。しまったなぁ。金糸雀ぁ、しまった」
「どしたんですか? ネメシスさん」
「さっきの水晶の映像、あの娘の幼馴染だけでなく周辺国家全てに配信しちゃった! まぁ、失敗誰しもあること。次にいかさねばな?」
それは失敗した人が言っていいやつじゃないわ。どうしよ、セレスティアさん、もうこれは私が土下座してほとぼりが冷めるまでここに滞在してもらえればと思ったけど、
「私、帰りますね。なんか元気出ちゃいました! 金糸雀さんとミカンちゃんとデュラさんと女神様達を見てるとクヨクヨしてる自分が恥ずかしいです」
天使なの? セレスティアさん、天使の子か何かなの? こんな眩しい笑顔見せられたらウチの女神様達滅んじゃうわよ。
「もし、辛かったらいつでも来てください。きっとニケ様かネメシスさんに祈ればこれると思いますので」
「はい! ありがとうございました!」
そう言って私の玄関から出て行ったセレスティアさんから便りが届いたのはいつだっただろう? あのネトラレ風、クソ配信を見た何処ぞの王子様にセレスティアさんがめちゃくちゃ気に入られて、ご結婚されたとかそういう。
ちくしょーーーーー!




