第248話 ゼルエルと肉じゃがと焼酎ハイボール(特製コーラ割り)と
「ギャンブル依存症こえー」
「嘘つきは堕女神の始まりであるな!」
大リーグ選手の通訳の人がやらかしたニュースを見ながらミカンちゃんとデュラさんが戦々恐々としてるわ。
「金は人間を狂わせる最大の麻薬であるからな。しかし、金糸雀殿の世界、ギャンブル多すぎではないか?」
「そうね。何気に日本が世界で一番ギャンブル多くて、さらにカジノまで作ろうとしてるから、恥ずかしい限りね」
私って経済以外はニュースとかあんまり見ないんだけど、ミカンちゃんとデュラさんは時事問題大好きよね。昔は私も誰と誰が結婚したーとかくだらないニュースに一喜一憂してたわね。
今となっては、どうでもいいわね。わざわざ結婚報道されたり、離婚報道されたり、ある意味英国の中世王族みたいな扱い受けてる芸能人って大変ね。今日は冷蔵庫の中の野菜を使い切ろうかなと、
「デュラさん、肉じゃがでも作りましょうか?」
「おぉ、コーラが残っていたであるな。隠し味に入れるとしよう」
「コーラ煮ですね。コーラとジンジャエールはある種調味料って、デュラさん、染まりすぎでしょ」
昔キャンプでのスペアリブ作りでコーラ派の私と、ジンジャエール派の兄貴と揉めたわね。気がつけば酒飲みになった私はご飯のおかずならコーラ、おつまみならジンジャエールって兄貴よりの舌になってるわ。
でも今回は肉じゃが、ジンジャエールに出番はないわよ!
※ジンジャエールでもコーラとは違った旨味の肉じゃが出来上がります。
「野菜と蒟蒻を適当なサイズに切って、豚肉も適当なサイズに切って」
「いつもの金糸雀殿の料理に比べてちと雑であるな?」
「残り物で作る際は意外と適当な方がジャンク感あっていいんですよ。本気で肉じゃが作るとなったら、出汁から本気でいくわよ。今回はお酒に合う肉じゃがってテーマね」
「肉じゃがとすき焼きの違いはなんなり?」
「お肉の違いよ。まぁ色々違うけど、鍋か煮物かって、でも西では肉じゃがって牛肉よね?」
私の家は家族全員が鶏肉好きなので、鶏肉での肉じゃがが多かったような気がするわね。デュラさんが切った食材を鍋に入れるので、私は料理酒とみりん、すき焼きのタレ、そして水とコーラをドバドバと入れて火をかけるわ。雑に作る方が趣のある味になるのはなんなのかしらね?
大学の数少ない先輩の家でご馳走になった、男子学生が作った謎のパスタとか異様に美味しいのよね。
「本日のお酒は数量限定生産の焼酎ハイボール(特製コーラ割り)よ! 今まで各種コーラサワーは飲んできたと思うけど、宝酒造の焼酎ハイボールは初めてね! キンキンに冷やしといたんで、肉じゃがができたらやりましょうか?」
ガチャリ。
丁度いい時にやってきたわね。どんな人かしら?
「はーおー! わー!」
青と黒のツートンカラーに染めたロングの髪。一見するとVtuberにでもいそうな風貌の女の子? それとも男の子? この感覚、そして私の経験上。
「天使の人?」
「ラストアンサー?」
「ラストアンサー」
「正解! ゼルエル様だー!」
「私はこの家の家主の犬神金糸雀です」
ミカンちゃんが、天使のゼルエルさんを前にして、目をキラッキラと輝かせて、目の前までくると、
「最強の拒絶タイプなり!」
「あー、エヴァであるな。クソ強かったである。あれはATフィールドが最強なのか、死海文書に、ゼルエルちょーやべぇーと書かれているのかどっちなのであろうな?」
ほんと、二人とも、私よりも絶対地球の事知ってるわよね。きゃっきゃとミカンちゃんとデュラさんが盛り上がっている中、
「待て待て、待て待て! そんなんじゃないよ。ゼルエル様は力を司る大天使様だ! くるしゅうないぞ!」
「我は大悪魔であるぞ」
「勇者は勇者なり」
まぁ、今更天使の人きてもねぇ。ミカエルさんとか前例はあったけど、今やここ特異点なのかしらってくらい古今東西の神様はくるし、変な女神様にはたかられてるし。
「ゼルエルさん、とりあえず一杯やって行かない?」
トンと焼酎ハイボール(特製コーラ割り)を見せると、それを睨みつける。そういえば天使って戒律でお酒に厳しい人もいたのよね。
「いただこう金糸雀」
「じゃあ、恐らく三人目か四人目の天使、ゼルエルさんに乾杯」
「乾杯であるぞ」
「わー、乾杯なりぃ!」
「うふふ、かんぱー」
ゴキュゴキュと私たちは喉を鳴らして、プハーと声をあげている中、ゼルエルさんが、
「待てーい! 今、四人目とか言わなかったか?」
「えぇ、三人目かもしれませんけど」
「ゼルエル様、ここに導く者が、いるぅー! 的な感じで来たのに、先越されたの? 誰?」
「ミカエルさんとか、メタトロンさんとか、あと誰か来たんだけどな」
「ちょー、ちょー、ちょー、ほんとにそんなの来たの? マジで?」
「ゼルエル殿ぉ! 肉じゃが炊けたであるぞ! 熱い内に」
そう言ってデュラさんが超能力で浮かせて持ってきた肉じゃがの入った鍋がふよふよやってくる。とてもいい匂いだわ。食べる前から美味しいのが分かっちゃう。
「わー! おいちぃ! なにこれ? 天界じゃ絶対ないやつぅー!」
いちいち、可愛いポーズを取っているのはなんなんだろう? でも異世界の人がやることにいちいちツッコミ入れてたら日が暮れるわ。私も肉じゃがたーべよ!。
ジャガイモはホクホク、ニンジンは甘くて、玉ねぎはとろける。そしてそれらと共存している豚肉の脂が美味しい。ここですかさず焼酎ハイボール(特製コーラ割り)よ。なんだろう。想像以上! とは絶対にならない安心と安定の焼酎ハイボールね。後味にグッとコーラ味がくるわ。
「うみゃー! 肉じゃがうんみゃあああああ! 勇者、これ好きー!! んぐんぐ」
キューっとロング缶を飲み干してミカンちゃんは二本目に突入。ゼルエルさんも負けじとミカンちゃんに張り合い出したわ。
「ちょっとー! 勇者ぁ、これはゼルエル様に人間と大悪魔が供物したものだったり?」
「はっはっは! ゼルエル殿、狂った事を言うであるな! 大悪魔がわざわざ大天使に何かを捧げたりするわけあるまいよ。お客さんなので振る舞っただけであるぞ」
むぐむぐとこれでもかと口に肉じゃがを頬張ったゼルエルさんは、焼酎ハイボール(特製コーラ割り)で無理やり流し込み、同じく二本目に手を伸ばしたわ。というか今までミカンちゃん以来の遠慮なしね。ここまでくると気持ちいいけどね。
「金糸雀ちゃーん! 女神、到着ですよー! お帰りなさいをお願いします」
「金糸雀ぁー、お腹すいたー!」
ダブル女神降臨。ミカンちゃんの眉にシワがよってるけど、帰らないわね。ゼルエルさんが「なんだなんだ? 次はどんな……あ!」
ニケ様とネメシスさんが登場すると、ニケ様は上から覗き込むように、ゼルエルさんを見つめて、「おや? 天使がなぜここに?」「天使、仕事はしているのか? ここは貴様が来るには早すぎる場所」とネメシスさんもゼルエルさんに近づいて、さながらカツアゲをするヤンキーのようね。
「あっ、なんでこんな所に女神様がいるし! じゃ、じゃあ仕事戻ろっかなー! 金糸雀。ごっちんー!」
ご馳走様的なやつなのかしら? 流石に神様には弱いのか、走り去って玄関に向かって帰って行ったゼルエルさん。
【ゼルエルちゃんねるの時間でぇす!】
「みんなー! 今日はどうしてもこのゼルエル様に食事とお酒を供えたいって人間の所に行ったよー! ゼルエル様が降臨すると泣いて喜んだのが、人間の金糸雀、人間の勇者ミカン、そしてなんとなんと、大悪魔のデュラハンまでゼルエル様にくびったけさー! 首だけにね! おー、スーパー知恵の実の投げ銭ありあり! でねー! なんかー、ゼルエル様を邪魔しにー、異界の女神的な? というか、邪神的な? 変なのに絡まれてぇ! ゼルエル様が全員を叱咤して、そこを諌めたってわけさー! また尊敬されちった! 今日もバンバン投げ銭よろ! この後、20時からも配信するから! 天界で見る番組はー! ゼルエルちゃんねるでキマリ!」




