第239話 オタクに優しいギャルとカップヌードルチーズチリトマトと−196 無糖レモン6度と
犬神家はローリングストックによる非常食備蓄をしているのよね。要するに、消費期限が近い物を食べて、新たに同じ食品を非常食にするという感じね。そんな感じで、デュラさんと非常食のストックと賞味期限チェックをしたところ、食べないといけない物が見つかったのよね。もちろん、同じ物をAmazonでポチったので本日はこれらを食事にしようかなと思ってるの。
「第一問なりぃ! 今日みた夢はどんな夢?」
ミカンちゃんが心理テストのくだらない本を図書館で借りて来たので私とデュラさんに問題をぶつけてきたわけなんだけど、ミカンちゃんって異世界の年齢でも高校生くらいよね? 完全に感覚小中学生なのなんでかしら?
異世界の人が総じて精神年齢が幼いか? というとそういうわけでもないし対してこっちと変わらないか、どちらかといえば私たちの世界より精神年齢は上というか人生観が達観している人が多い印象よね。まぁ、高度に発展した医療とか衣食住安定システムが構築された日本にいるからかもしれないけど。
「今日は殿下に仕え、魔王様の料理を持って行った夢であったなぁ」
えっ! デュラさん、夢みるの? いや、こういう偏見、最近しなかったんだけど、ちょっと普通に驚いたわ。
「私は、薬局に行く用事があったみたいで、行こうとするんだけど、なぜか到着しなかったわね」
「かなりあの夢、クソなり、勇者、かなりあの家でダラダラげぇむしながら、麦酒煽る夢見たり!」
「それもまぁ、普通にアレな夢ね。で? 夢の心理テスト結果はどうなの?」
でもまぁ、夢って見なくなる人と毎晩見る人といるけど、アレって覚えてるかどうかの違いらしいわね。レム睡眠とノンレム睡眠のどっちかが長いとか長くないとかで、動物でも夢見ているみたいだしね。寝てて突然驚く動物とかがそうじゃないかみたいな事言われてるわよね。
「デュラさんの夢は、現状に満足せず、向上心がある夢なり!」
「おぉ! なんかあたりの夢っぽいであるな」
「かなりあの夢は、準備不足で不安を感じている夢なり!」
「えぇ? 単純に記憶のバグで夢の中の道と本来の道のりに矛盾が生じただけじゃないの?」
「チッチッチなりけり! かなりあは理屈っぽく答えてり、でも否定的に反応する時は図星の時なりけり。夢の中でもちゃんといつもの理屈が通れれば薬局に到着できてり、よってかなりあは何か不安を抱えてり!」
そういえば、ミカンちゃんって美少女クソニート枠の癖に結構頭良かったわね。ほんと設定盛り盛りで嫌になるわね。
まぁ、不安があるといえばまぁ、私は大学生なわけで、いろんな資格を取得しているのだけど、税理士の資格はなんとか取得したものの、公認会計士の資格がとれないのよね。兄貴は高校在学中にどっちも合格してたから私も大学在学中には合格してたいという不安感はあるわね。
「ちょっとなんか嫌な事思い出したから、なんか食べて、なんか飲みましょ」
「勇者、ガッコーとか興味なき、でも酒飲みながら勉強するとかアニメでも見ぬ光景なりけり」
「まぁ、それでいて金糸雀殿は聡明であらせられるであるからな」
もう、モンスターというか本来悪役側の悪魔のデュラさんにも若干引かれてるけど、お酒飲みながら勉強なんてマストじゃない。コーヒー飲みながら勉強するようなもんよ。どっちも脳揺さぶりながら知識放り込んでるんだから。
※違います。
「−196の新製品売ってたんだけど、これ飲む? ミカンちゃん、レモン酎ハイ好きでしょ?」
「飲めり! レモンシュワシュワはデフォルトなりけり」
「まぁ、基本ハズレなしであるからな。少々口に合わなくても飲めるのがつよつよであるな」
なんだろう。本当に二人は異世界組なんだろうかってたまに思う時があるのよね。私は俄然ビール派なんだけど、二人は割とレモン酎ハイ推しだったりするのでなんか同じ大学でも私と同じタイプの酒好き少ないのよね。
いや、うん。レモン酎ハイは美味しいわよ。それは間違いないけど、ビールってなんかご褒美かん半端ないハズなんだけど、あんまりビール好きっていないわよね。大学の飲み会参加してもとりあえずビールの子は結構いるんだけど、どこのどのビールがどういう風に好きで、どんな女房とやるのが好きかとか話せる人いないのよね。
「かなりあが酒の事考えてる顔なりけり」
「おそらく独自の聡明なお酒持論を展開されているであるな」
うん、二人とも私の心読めて好きだわ。まぁ、そんな私と一緒に楽しく飲んでくれる最高の飲み友がいつの間にか二人だった事には脱帽よね。どっちも異世界の人だけど。
ガチャリ。
あら、変なタイミングで誰か来たわ。「我が見てこよう」とデュラさんが玄関に行って「うぉおおお! やめるである!」と叫んでいるので、ミカンちゃんと玄関見に行くと、
「うおー! うおー! 騎乗型ドラゴンなりぃ!」
「うん、そうかもしれないけど、デュラさん喰われてない? あのー、食べるのやめてくれませんか?」
「よ、翼竜から我を助けて欲しいである!」
私の部屋には立ったら3メートルくらいありそうなドラゴンの姿。乗るところと掴まるところがあるので、騎乗型という事なんでしょうね? 乗ってる人はいないけど、ミカンちゃんがデュラさんの頭を持つとデュラさん曰く、翼竜さんの口からゴリッと無理やり引き抜いたので翼竜さんが怒ってミカンちゃんに噛みつこうとしたけど、
「勇者、騎乗型ドラゴン好きー! なでり!」
と、明らかに敵意剥き出しの翼竜さんをゴシゴシと撫でて、ミカンちゃんはめちゃくちゃ自分に懐いていると思ってわ。こういうすれ違いから悲しい事件って起きるのよね。
「翼竜さんは言葉は通じなさそうね。久しぶりに来たわね。人語を介さない系。まぁニケ様やセラさんみたいに人語を介すだけの厄災よりは全然マシよね。とりあえず上がってもらいましょうか?」
ミカンちゃんに威嚇をするも、ミカンちゃんのヤバい力で抑えられて撫でられている翼竜さん。今日はクソ簡単な日清カップヌードル。チリトマト味で−196無糖レモンを飲もうと思ってたので、お湯を沸かしてちょい足し準備。微塵切りにした玉ねぎに酢を混ぜた物とブラックペッパーとをさらに潰して粉チーズと混ぜた物。あとレンチンした冷飯。
「さぁ、今日は三分待ってすぐに食べれるわよ。翼竜さんは、大きなお椀を用意したので、あと付け合わせの酢玉ねぎと粉チーズブラックペッパーをかけた部分と分けてみたので、食べやすいのを食べてくださいね。−196もボウルに入れましたので! お酒飲むのかわからないですけど」
じーっと私を見つめている翼竜さん、よく見ると大きな瞳が可愛いわね。
準備は完成、今回は缶のまま行きましょう。
「じゃあ、翼竜さんが何故迷い込んできたのかわからないけど! フードロスを減らす事に乾杯!」
「勇者カップ麺超好き! 乾杯!」
「乾杯である!」
「ギャルゥルウ!」
きっと今までの経験上乾杯って言ってるわ。かつんと合わせてひとまず350ml缶を一気にみんな流し込むわ。
ビールだとプハーって感じなんだけど、レモンハイは!
「んま」
「うんみゃい!」
「ほほー、氷結とは違った味わいであるな!」
「ギャ! ギャルル! ギャルーウ!」
お椀を揺らしてるのでめっちゃ美味しかったのかしら。私はロング缶を二本取り出すと、翼竜さんの器に入れてあげる。すると鼻なのか口なのかで私にすりすりするので、うん。可愛いわ。
「翼竜さん。チリトマトも美味しいですよ。どうぞ!」
私はカップヌードルはレギュラーが一番好きなんだけど、たまにチリトマト食べたくなるのよね。デュラさんはシーフード、ミカンちゃんはカレーがフェイバリットよ。
「うおー! うおー! かなりあ天才っ! うみゃああああ! このチリトマト神! つよつよー!」
ずるずるとミカンちゃんがチリトマトをオプションをつけながら食べているのをみてデュラさんも、
「……簡易的に作れるカップ麺をこれまた手間のかからないオプションでここまでチリトマト味を引き上げるとは恐れ入ったである。−196が止まらん!」
カップ麺と缶の炭酸系のお酒、死ぬほど合うのよね。まぁ、翌日の体重計も死ぬほど怖いけど。
やめられないわ。
「あら? 翼竜さん、もう食べないの?」
「ギャル?」
玄関の方を見ている翼竜さん、これはニケ様でも来たのかしら? ガチャリと玄関が空き、
「あのぉ、こんにちわ……誰かいませんかぁ?」
もっさい男の子来たわね。なんというか、地味でかといって可もなく不可もない男の子。そんな男の子は翼竜さんを見て、翼竜さんは男の子を見て、
「レイナ!」
だれ? と思ったら、翼竜さんの姿がめっちゃ際どい服を着たギャルの姿に、確かに鳴き声もギャルだったわね。
「オタっち、探したんだからぁ! 金糸雀さんのところでご飯いただいてたんだからぁ!」
「ご、ごめん」
「んーん! いーよ。オタっち、これアーン!」
「あ、アーン」
何これ? 何を見せられているの? というかこの男の子、オタっちって言われてるの? いじめられてるのかしら? 何が何だか分からないけど、しばらく私の部屋をラブホよろしくいちゃついてから帰って行ったわ。
オタクに優しいギャルってさ、オタクに優しいんじゃなくてみんなに優しいだけで、基本チャラいか真面目かオタクでもイケメン彼氏いるから、幻想を抱かない方がいいわね。
だってさっきのオタっちでもそこそこ顔は悪くなかったから、良くもなかったけど、そういう事なのよ。




