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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
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第235話 異能力者と牛肉とニンニクの芽の炒め物と超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸と

「日本盛は!」

「良いおさけー! であるな!」

 

 日本三大酒どころ、神戸の灘・京都の伏見、福岡の久留米。その中でも日本一の酒どころ灘のお酒、その西宮郷は日本でも知らぬ人のいない日本盛のお酒が蔵開きで送られてきたわけなのよね。個人的には日本盛のお酒は辛口が好きな私はあんまり飲まないんだけど、異世界組は日本酒って大好きなのよね。

 

 そんな中で、私の手元には……大手酒造のなせる技である比較的安価な商品が多い日本盛の中でも、中々にいいお値段がする。超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸があるのよね。これ、飲んでいいのかしら? 

 どこにも飲んだらダメなお酒……という記載はないんだけど、いいのよね?

 横目にミカンちゃんとデュラさんを見ると、デュラさんお手製のガレットを美味しそうに食べながら二人は超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸をすっごく楽しみにしてるのよね。


「かなりあに聞きたい事があり」

「え、なになに?」

「勇者、最近。ヤンキー漫画にハマれり、東リベ! 疾風伝説特攻の拓(しっぷうでんせつ、とっこうのたく)」

「ミカンちゃん、かぜでんせつ、ぶっこみのたくよ。で? どうしたの?」

「さすがリアルヤンキーは違えり」

「もう、私がヤンキーなわけないじゃん!」

「…………どうしてヤンキーは頭にフランスパンを乗せてり?」

「あぁ、リーゼント? 保存食よ。そんなことより、今日は何を食べる?」

 

 バイトの給料日前、お財布事情が少し寂しくなってきた頃なのよね。ここはうちの家の料理長、デュラさんの意見を……デュラさんは私を見て頷くわ。

 

「ここは大皿系料理はどうであるか? 回鍋肉とか麻婆豆腐とかであるな!」

「やっぱりそうよね。お腹一杯になるし、満足もするし」

 

 デュラさんと私は料理をする時、鍋とかじゃない限り、基本ワンプレートで料理を出すのよね。単純に洗い物が楽という事もあるんだけど、飲みメインの私達にとってあれこれオツマミがあるのは楽なのよね。

 大皿料理は雑に作れて美味しくてお腹いっぱいでそれでいてお皿を洗うのもくっそ楽なのよね。

 冷蔵庫には……牛カルビの切り落とし、これは……ニンニクの芽なかったかしら? あの野蛮でガツンとした最強のおつまみが作れるわ。

 そう、

 

「牛肉とニンニクの芽の炒め物でもつくろうであるか?」

 

 そう、正式な名称はない。ただ美味しい物同士を炒めたらくっそ美味いわけよ。私の家ではお金がない時、これとご飯をたくさん炊いて、満足感を得るのよね。

 

「勇者、甘辛い炒め物スキー! デュラさん飯も炊いてー」

「うむ分かった! 半升マックスで炊くであるぞ!」

「んじゃ、私はお漬物でも切ろうかな。雑候屋甚兵衞はワインクーラーで冷やしておこっか?」

 

 ガチャリ。

 

 おや、お出ましね。今日は誰かしら? でも今日はお酒以外は割と適当だからお酒好きの人だといいわね。と玄関に向かうと、

 

「あら、普通の人」

「普通の人ってなんだよ。普通の人って……というか、ここ何処何県?」

「東京だけど、ちなみに23区よ! ドヤァ!」

「東京? 23区? 随分昔にそんな場所があるって聞いた事あるけど、ここもしかして過去の日本か」

 

 うーん? さて、なんか面倒そうな人がきたわね。私と同い年くらいの男性。ミカンちゃんが興味深そうに見つめてるわ。

 

「えらくしっかりした部屋だなぁ」

「私は、犬神金糸雀。この部屋の家主だけど貴方は?」

「犬神? 俺は犬神黒鹿。S級能力者さ」

 

 ふーん、犬神。犬神ねぇ……これ絶対私の関係者なんだろうけど知らないわねぇ。しかもS級能力者さ! とか言う痛いやつは私の一族にはいなかったわね。という事は、

 

「貴方、異世界から来た人ね」

「いやいや、首都の京都を目指してるんだよ。同じ日本人だって!」

 

 ほら、首都が京都とかになってるから、完全に異世界の人ね。どおりで話が通じないわけだわ。まぁ、この人も犬神姓なんだったら、

 

「とりあえず飲みましょ」

 

 ドンと日本酒をみせると、黒鹿さん目を輝かせてるわ。

 

「に、に、日本酒ぅうう! その作り手が全て、攫われて二度と飲めないと思ってたのに、しかも日本盛の超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸!」

 

 それはあるんだ……マジ意味わかんないわね。まぁいいわ。

 

「じゃあ、黒鹿さん。ガンガン飲んで行ってください。多分、別世界線の親戚かなんかなんでしょうね」

「あー、なるほどね。こんな可愛い犬神の子がいたら覚えてるもんね」

 

 うん、黒鹿さん、とってもいい人という事だけは分かったわ。日本酒グラスにトクトクと超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸を注いで、乾杯を日本酒で! いいじゃない。

 

「じゃあ、きっと遠い世界線の親戚。黒鹿さんに乾杯!」

「うーし、金糸雀ちゃんのご好意に乾杯!」

「乾杯なりぃ!」

「乾杯であるぞぉ!」

 

 私たちはんっ、んっ、ん! と超特撰 雑候屋甚兵衞 純米大吟醸を飲みみんな天を仰いだわ。さすがは400年の歴史をもつお酒ね。何この味わい。そして甘口のお酒。これはコッテリとしたカルビとニンニクの芽の炒め物が……

 

「黒鹿殿、どうぞどうぞであるぞ! おつまみである!」

「おぉ、サンキュー、首だけ騎士様。んメェ! すげぇうめぇ! 牛肉なんて何年ぶりだろう」

 

 一体、黒鹿さんの住んでる日本はどんな世界なのよ? 21世紀少年の世界観かしら? 雑候屋甚兵衞を飲みながら、牛肉を食べて感動してるわ。

 分かる! 牛肉とか焼肉と日本酒ってやばいくらい合うのよね。

 

「うまー! うまー! かなりあおかわリィ!」

「はいはい、それにしてもミカンちゃん、炭酸割りにしなくていいの?」

「かなりあー、いいお酒を炭酸で割るのは失礼なりけりぃ……これ、常識なり」

 

 は? いつもいつもクソみたいに炭酸で割って飲むくせに! ミカンちゃんナチュラルに煽ってくるわよね。

 

「そうだぜ金糸雀ちゃん、超特選の雑候屋甚兵衞を炭酸で割るなんて、自分が信仰している神に唾を吐きかけるようなもんだ! なっちゃねぇ。君は知らないかもしれないが、すごいいい酒なんだ」

 

 は? はぁ? そんなの知ってるわよ。なんか私が酒の飲み方知らないみたいになってんじゃん! 潰すかこいつら? いや、無理か、ミカンちゃんはざるだし、黒鹿さんも同じ犬神姓だから私より強い可能性ありそうだし、我慢よ我慢!

 

「しかし、グラスも徳利もいいものが揃ってるなぁ」

「あー、兄貴の趣味なんですよ。ぐい呑みは全酒造メーカーが揃ってますし、日本酒グラスはバカラに特注で作ってもらった物です」

「へぇ、凄いな。金糸雀ちゃんももう少しお酒の勉強しような?」

 

 あ、ダメだこいつ殺りてぇ……それにしてもこの良いお酒が飲兵衛四人で飲んでるとスルスル無くなるわね。

 

「ところで黒鹿さんの特殊能力ってなんなんですか? 異能力とか言ってるだけの痛い人なんですかー?」

 

 とちょっと私は嫌な言い方をして仕返ししてみたわ。すると、グラスから手を離して、黒鹿さんは玄関を指差したわ。

 

「ん? 俺の能力。なんか玄関の方からよくない気配を二人感じたから結界を張って入れないようにしておいた」

 

 それにミカンちゃんとデュラさんが大きく口を開けて驚いているわ。だってあの二人を入れなくしたって事だもんね。

 

「くろしかぁ! 感謝せり! あの邪悪なクソ女神共の追い出し」

「感謝するであるぞ! 黒鹿殿。今の我らでは奴らを倒す事はできぬである。我を導いてくれである」

「まぁ、Sランクって言っても結界だから補助系の力なんだけどな!」

「攻撃なんて飾りなり! 補助の方がよき! 偉い人にはわからぬ所業なりけり!」

 

 あ、ニケ様とネメシスさんの追い出しを黒鹿さんがしたから、二人は黒鹿さんに懐いたわ。何これ、なんか釈然としないわね。

 

 という事で私は玄関に行って扉を開けたわ。

 

「ニケ様、ネメシスさん、いらっしゃい! どうぞ! 良いお酒がありますよ!」

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