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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
JC金糸雀さん編と居候の(勇者、デュラハン)と異世界JK留学と
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第228話【22万PV感謝特別編】魔王様と干物専門店とサンドリヨンと

「クハハハハ! 本日は八重地下で一杯だ! ひなよ。サニーズに行くぞ!」


 こんにちは、天童ひなです。魔王様の飲み方はいくつかパターンがあります。1000ベロでサッと帰るパターン。めちゃくちゃいいお店に行ってコース等を楽しむパターン。

 そして、今回は近所のお店でまったり時間を過ごすという趣向なんですが……魔王様の仰るサニーズというお店は八重洲地下に五十年も続いていたサラリーマン御用達のお店、コロナウィルスによる影響で3年程前に閉店してしまったんですよね。

 

「魔王様、心苦しいのですが、サニーズは閉店してしまってるんですよね」

 

 元々日進ハムという百年くらい前から続くお肉屋さん系列の居酒屋だったので、復活してくれる事を心よりお祈りしています。という事で今日は魔王様との飲み会はプラン変更でしょうか?

 

「うむ、そうか……それは実に残念であるな。が、別れがあれば出会いもあろう。八重洲地下に行ってみるぞひなよ!」

「そうですね。行ってみて決めましょうか」


 コロナで物凄い数の居酒屋が減ったんですが、それでも八重洲地下には色々ありますからね。行ってみれば何か面白そうなお店もあるかもしれませんしね。私たちが準備をして家を出ると、そこには人だかりができていますね。

 ダークエルフさんあたりが何かしでかしてるんでしょうか?

 

「あぁ……魔法使いはきてくれないみたい」

 

 うん、ヤバい人っぽいですね。

 虚な瞳をした女性、何故か彼女の頭上からは雪のような? 灰ですかね? が降ってます。きっと彼女は魔王様関係の人っぽいですね。魔王様を見ると、

 

「くーはっはっはっは! 貴様、灰かぶりではないか!」

 

 チラリと魔王様をみた灰かぶりさんは……

 

「あら、魔王様、ごきげんよう。待てども待てでもカボチャの馬車も来なければガラスの靴もないんですよ」

「くはははは! そんな物あるわけなかろう!」

 

 し、辛辣ぅ。

 でも魔王様は突き放すだけじゃないのを私は知ってますよ!

 

 パチン。と魔王様が指を鳴らすとそこには……

 

「ガラスの靴ですか?」

「ガラスの靴など、割れて危ないであろう? アダマンタイトの靴である! これを履くといい灰かぶりよ。カボチャの馬車はないが、余はこれより余の家来であるひなとタクシーにて東京駅へと参る。共をするがいい」

「それさえあれば、慎んでお供しますわ!」

 

 おぉ! おおお! 真っ黒いガラスみたいなヒールを履くと見る見るうちに灰かぶりさん、漆黒のドレスを身に纏い、瞳には裏五芒を宿してますねぇ。うん、私の知るシンデレラとは対極の所にいるシンデレラと魔女が合体しちゃってますよ。

 

「魔王様の家来さん、初めまして数々の王族の王子をたぶらかして、国家に巣喰い滅ぼしてきた大悪魔サンドリヨンです」

 

 あぁ、シンデレラって悪魔だったんですねぇ。でも確か原作では嫌がらせをしてきた姉達と母を王族の力で拷問にかけたんでしたっけ?

 

「初めまして、天童ひなです。じゃあ、行きましょうか?」

 

 私はあえて、魔王様とサンドリヨンさんどういうご関係かは聞くつもりもなく、八重洲地下へと到着すると、そこで魔王様は、

 

「干物専門か、くはははは! 余は干物が好きである! ここにするぞひな」

「分かりました」

 

 という事でお店が決まりました。

 チェーン店のひもの野郎 八重洲店です。私の知る限り、異世界の人はお魚が凄い好きです。魔王様も同様で、初めてお刺身を見たときは驚いていましたね。

 

「乾杯はビールで、後は日本酒といったところでしょうか?」

「うむ、ひなに任せる。灰かぶりもそれで良いか?」

「構いません事よ! 何をいっているか分かりませんけど」

「すみませーん! サッポロ黒ラベルの生中3つお願いしまーす」

 

 すぐに用意されるビールを前に私たちは、グラスを掲げて乾杯です。

 

「では灰かぶりとの再会に乾杯!」

「わー! かんぱーい!」

「麦酒ですね。乾杯」

 

 ぐっぐっぐっと喉を鳴らしてから、私は……

 

「っぷはー! さいこー!」

「うむ、ビリビリと良いホップであるな」

「……これ、王宮のワインとか到底及ばない麦酒ですね。舐めていましたわ。美味しい」

 

 うんうん、そうでしょうね。ほんと日本って国はビールだけは間違い無いですから。さて二杯目もビールと行きたいところですけど……

 

「干物選びましょうか? 私はやっぱり鯖の塩物ですね。トロサバを頼みますのでみんなでつつきましょう! 後はイカの一夜干しと、ししゃももいいですね。魔王様とサンドリヨンさんは何か食べたい物ありますか?」

「お構いなく、お呼ばれされて口は出しませんわ」

「うむ、後は日本酒であるな。とりあえずそれで良かろう。沢山並びすぎるのは見苦しい故な」

 

 日本全国のお酒を満遍なく用意されているんです! 

 今回は地震で被害に遭われた石川県への少しでも貢献になるように、私は石川の日本酒、天狗舞 山廃純米を3人分、6合頼みました。

 

「じゃあ、トロサバから頂きましょう」

 

 ほぐして、一口。ホクホクして、口の中でとろける。文化干しだと思うんですけど、火の通り方も塩梅も最高ですね。

 そしてここで天狗舞です。

 トロサバがまだ風味として残っている間にキュッと流し込みます。

 

「んーんー! 魔王様ぁー! これー」

「うむ、美味いのであるな? 見苦しい故、余の肩をパタパタ叩くのはよすといい。では我もいただこう。灰かぶりよ、遠慮するでないぞ?」

 

 パクりと食べて、キュッと日本酒を飲むと魔王様はニコニコ笑顔で「んまい!」と最高の一言を、イカの一夜干しで一杯やっているサンドリヨンさん……凄い不似合いな場所にいる海外のお姫様が日本酒と炙ったイカで飲んでるの、抵抗あるなぁ。だって私も子供の頃はシンデレラとか好きでしたからね……


「楽しんでますよ。魔王様、このイカ。噛めば噛む程味が出て、この無色のワイン、飲む手が止まりません事」

「お口にあってよかったです。ところで魔王様とサンドリヨンさんはどういうご関係なんですか?」

 

 正直、あんまり聞きたく無いんですけど、話題ないですからね。私はししゃもを齧りながら、天狗舞を一献。酒といえば天狗舞だなんて言われた事もある万人受けしやすいお酒なんですよね。お酒の力を借りながら、私はサンドリヨンさんの話を聞きますよー

 

「かつて、私をイジメにイジメていた継母とその娘の姉妹達。私のお父様が残した魔術書を全て奪い、魔法で好き放題暮らしていました。王子様の婚約者を決めるパーティーに出るんだと世迷いごとを姉妹は言っていましたね」

 

 ん?

 

「私がお父様から賜った魔法の杖も奪われ、私は餓死してしまいます。そしてそこで悪魔に魂を売り復讐を願ったのですが、その悪魔が勇者に退治されてしまい。悪魔と契約したもののその悪魔も滅び、憎悪のまま私の魂は彷徨っていたのです……そんな時に偶然、ピクニックをしていた魔王様一行と出会いました。そこで魔王様の腹心の大魔獣様に0時まで人間の受肉をいただける魔法を施していただきました」

「あっ、もういいですよ。お酒無くなりましたね! 次、何のもっかなー? 岩手の南部美人、3人分お願いしゃーす。あと真鯛の頭煮お願いします」

 

 ろくなお話になりそうじゃないので、私は強制的にそのお話をリセットして、サンドリヨンさんのぐい呑みに、

 

「どうぞどうぞ! サンドリヨンさん」

「いただきますー」

 

 と日本酒沼に落としてしまいましょう。岩手の南部美人、飲みやすさを美人に例えたこの表現力は実に素晴らしいですね。

 

「まぁ、余ら魔王軍は復讐などという物はくだらないという事をサンドリヨンに教えてやったのだがな。そして余の力で、彷徨うゴーストであったサンドリヨンを悪魔に変えてやったのだ! くははははは! 久しい話である」

「えぇ、感謝してますとも、復讐の無意味さ、生かさず殺さず搾り取る事こそが至高でございますねー!」

 

 全然いい話じゃないけど、まぁ、私は日本酒と干物が美味しいので考えない事にしました。最後にデザートのアイスも食べてサンドリヨンさんと別れる事になったんですけど、

 

「魔王様、ひなさん、良ければ私の働くお店に来ませんか?」

「へぇ、働いてるんですね。行きます行きます」

 

 私たちはそこからタクシーで歌舞伎町へ、そして、ついて行ったお店は……

 

【ラウンジ・おとぎ話】

 

 なるラウンジです。ラウンジというのはクラブとスナックの中間くらいのママがいて高級感ありそうな雰囲気でそれなりに飲んで遊べるお店でね。私や金糸雀さんの働くガールズバーより女の子の距離が近い感じですね。というか、サンドリヨンさん、あの灰に埋もれてた時から客引きしてたんですね……

 

「くははははは! あやつ、余とひなをハメよったな! まぁ良い。許す!」

「許すんですか? まぁいいですけど、ぼったくられたら魔王様なんとかしてくださいよ。私、あんまりお金ないんですから」


 すぐに、サンドリヨンさんは戻ってきました。真っ白い純白のドレス。頭には痛々しいティアラなんかしています。

 

「いらっしゃいませー! シンデレラ! 22歳でーす!」

「「!!!!!!」」

 

 私と魔王様は一瞬固まってしまいました。

 何を言っているんだコイツは……という表情のまま動かない私たちに、咥えタバコの不思議の国のアリスがやってきました。

 

「いらっしゃい。この店のママやってるアリスだ。楽しんで行ってくれよ。最近入ったサンドリヨンちゃん、22歳って毎回言うけど、痛いよなぁ。はい、これメニュー。ボトル入れるなら黒霧とオールドあるから」

「は、はぁ……」

 

 私はガールズバーでももう少し頑張っているんですが、これはいくらなんでもやる気がですねぇ……

 こんな雰囲気、魔王様だったら!

 

「クハハハハ! このやる気のなさ、気に入った! 許す!」

 

 ですよねー

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