第225話 ジンと栗カステラとジムビーム・アイスティーハイボールと
本日はいきなり来たわ。
ガチャリ。
「こんにちわぁ! あら、貴族の犬小屋かしらぁ?」
んん? ん? 失礼な言動はいいとして……下半身が煙みたいになってる。これってアラジンとかに出てくる。
「ジーニー!!」
「ざぁーんねん! ジンよ」
ふわふわと浮いているジンさん。めっちゃジーニーなんだけどなぁ。ちなみに私はディズニー大好きよ。ググるとジーニーはジンさんがモデルなのね。ランプの精でやっぱり有名な方っぽいわね。
「こんにちはジンさん、私はこの家の家主の」
「あーまってまって! 当てる! 貴女ジャスミンでしょう!」
「あー、惜しいですね。犬神金糸雀です」
「どこが惜しいんじゃい! 小娘! ランプに詰めて海に沈めんぞ!」
おぉ、やべぇなジンさん。感情の起伏がぶっ壊れてるな。本日はミカンちゃんがいないのよね。アニメの映画を観に行くとデュラさんを連れて行っちゃったので、ジンさんとさし飲みね。
「ジンさん、ジンさんやい」
「なぁに? 小娘・カナリア」
「酒、やりませんか?」
「いただくわぁ!」
私は異世界研究者でもなんでもないから、私調べなんだけど、実際にこの目で見た異世界は中世ヨーロッパ風ではあるんだけど、生活水準は日本の江戸時代、政治体系は後期封建社会って感じなのよね。
よって、めちゃくちゃお酒飲むのよね。
要するに異世界の人とは言葉が通じなかったとしても酒を飲み交わせば大体なんとかなるのよね。
という事で、本日に飲むお酒は缶のジムビームの期間限定商品。
「ジムビームのアイスティーハイボールですよ」
おつまみなんかあったかな? いやあるんだけど、何が合うかな? バーボンに紅茶だから……お菓子系合わせてみようかな。
戸棚には甘食、ビスケット……あっ!
栗カステラだ。これはミカンちゃんあたりが買ってきたのかしら?
これでいいかな?
「じゃあ乾杯しましょ!」
「はぁい! いい香りね」
カツンと缶を合わせて乾杯。
ん? あー、これ普通に美味しいわ。度数は5%に抑えてあるからそのまま氷とか入れなくてもいけるわね。というか、このジムビーム系の缶って自宅で再現不可能な味わいはなんなのかしら?
「あら! 美味しいじゃない小娘・カナリア! いいわ! いいわ!」
「あはは、そりゃよかったですよ」
マッチョのお姉って本当にいるんだなぁ。昔、お酒の入っていないティーソーダってのが売ってたけど正直口に合わなかったのよね。でもバーボンがツイストされてるだけでこんな美味しくなるんだ。ではでは、おつまみの栗カステラをお一つ。
パクり。
うん、これも安定と安心と栗カステラね。
普通に美味しいわ。
「ジンさんも、栗カステラどうぞ」
「何これ? かーわーいーいー!」
ミカンちゃんいなくて良かったわ。絶対ジンさんを見てキメェキメェ言いそう。そしてたら間違いなく戦争でしょうね。
「ぷはー、美味しかったわ。ありがと小娘・カナリア」
「いえいえ、まだまだありますのでどうぞどうぞ」
冷蔵庫から冷えているジムビームのアイスティーハイボールを私の分も合わせてもう二本取り出すとプルトップを開けてジンさんに渡す。
「あら……ありがと」
「いやー、栗カステラとジムビームのアイスティーハイボール。よく合いますねぇ! やっぱりザラザラしている砂糖とバーボン、カステラと紅茶の組み合わせがフルマッチしてるんですかね?」
「さ、さぁ……」
お徳用栗カステラはほぼ無限に食べ続けられるような量だし、もちろんジムビームのアイスティーハイボールもミカンちゃんとデュラさん、あと……ニケ様入れて飲んでも無くならない程度にはあるのでジンさんも満足してくれるでしょうね。
「ふぅ、美味しい! ちょっとエンジンかかってきましたね! はい、三本目どうぞ!」
「え? あ、ちょっと飲み過ぎじゃない? 小娘・カナリア」
「何言ってるんですか? ロング缶じゃなくて350mlの缶ですよ?」
「ん? 何を言ってるのかしら、この小娘」
「ジンさんこそ何言ってんですか、どうぞどうぞ。遠慮なんていりませんから!」
んっんっん。
んまっ!
なんだろうなぁ、このたまーに栗カステラをつまみながら、飲みたいお酒に集中する。あっ、音楽かけよっかな。スマホで音楽をかけながら、四本目、そして五本目。
「小娘・カナリア。だ、大丈夫なの? 貴女」
「何がですか?」
「お酒よ。お酒、そんな飲み方して失恋でもしたの?」
「えっと、これ5%ですよ」
「うん、そうね。それと小娘の飲み方に関係あるかしら?」
「こんなのいくら飲んでも酔わなくないですか?」
「さっきからそうかなーとか私思ってたけど貴女、おかしいわ! いや、狂ってるわ! もっと自分を大切にしなさい!」
ん? ジンさんは一体何を言ってるのかしら? ちょっと言ってる意味が全然分からないわね。もしかしてジンさん、酔ってるのかしら? というか飲み足りないので冷蔵庫から六本目を、
プシュ。
「ちょ、ちょっとまだ飲むの! やぁーだぁ! ザルどころじゃないわよそれぇ」
「そうですか? そろそろ味編しようかと思ってレモン切ってみたりしてるんですけど、まぁ、いくらでもありますのでじゃんじゃん飲みましょう」
グラスにジムビームのアイスティーハイボールを注ぎ、レモンを絞り、そしてガムシロップ。これでいきなりデザートカクテルになると思うのよね。
「んーん、美味しいー! これ最高ですよ! ジンさんもいかがですか?」
「…………」
私は栗カステラを……湯煎したチョコレートでチョコフォンデュにしてパクり。そしてカスタムしたジムビームのアイスティーハイボールを一口。
これはいいわ。
ほんとに健やかで、オヤツ的な感じでいいわね。私はジンさんを見つめると、私が話す前にジンさんが、
「私はいいわぁ。それより、小娘・カナリア。貴女持ってる側ね」
「持ってる側ですか? それなんですか?」
私が持っている物、お金は……当然ないわね。彼氏は……いないわ。容姿は……平均以上……だとは思いたけど……私ってこの部屋とこの部屋のお酒くらいしか持ってる物なくない?
「何も持ってないですよ」
「ううん、そんな事ないわぁ! 実は私、願いをなんでも一つ叶える事ができるの。こんな可憐な見た目なのにね! ウフ!」
知ってる。
でも願いなぁ、代償なしに手に入る願いってろくな事ないからなぁ、というかそれが代償なのよねぇ。
でもまぁ? 叶えてくれるって言うならぁ?
「イケメンでお金持ちで浮気をしない、小娘にはとびきり甘い恋人とかは無理だけど」
私の心を読んだのかしら……じゃああとお金とか? でもなぁ、いきなり大金が手に入ってもろくなことにならないし。
「あ、やっぱいいで」
「じゃじゃーん! 女神を呼ぶ笛!」
出たな特級呪物。
そんな物喜んで吹く奴がこの世界のどこにいるのよ……
ぷぉーん!
ジンさんが吹くんかーい! と、吹いちゃったわ。来ちゃうじゃない。
ガチャリ。
来た。
「この至高の女神ネメシスを呼ぶとはどこのどいつだくらぁ!」
おや? 褐色のショートカットのロリがやってきたわ。ニケ様じゃない! ニケ様じゃないよ!
「じゃあ、可憐なランプの妖精はおいとまするわぁ! 私、女神って嫌いなのよね! 女ってつくところが!」
うん、じゃあなんで女神を呼ぶ笛を持っていたんだろう。
さて、私は「おい、人間の女! 聞いているのか!」と八重歯を見せて喚いているちびっこい女神ネメシスさんに、
「ホットケーキでも食べますか?」
と言ってみることにしたわ。




