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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達編(デュラハンと勇者)※コンドミニアム
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第21話 ノームとお雑煮と美少年大吟醸幻夜と

 明けましておめでとうございます。

 犬神金糸雀です。

 

 感動の別れから5分後、奇跡の再会を果たした私とデュラさん、そして……

 

「プププ! このポテチとかいう食べ物うまし! カレー煎なる食べ物も捨てがたし」

 

 下着姿でソファーの上を陣取ってお菓子を食べている……勇者ちゃんこと、ミカンちゃん。世界を救わなくていいのかしら、

 

「デュラさん、ミカンちゃん。明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」

「!!!!」

「!?!?」

 

 デュラさんとミカンちゃんが不思議そうな顔をしているので、

 

「えっとね、今日は一月一日、私の世界での新年の始まりなのね? おめでたい日だから、こんな感じのご挨拶をするの」

 

 それを聞いたデュラさんとミカンちゃんは、

 

「明けましておめでとうである金糸雀殿」

「おめでとう金糸雀」

 

 パパ、ママ! 不思議な事に、異世界の人たちと新年の挨拶をしてるわよ私。とはいえ、今日は一人で正月を迎えるつもりだったからまともな物がないのよね。ちょっとしたお祝いをしたいのに、

 そして一つの大きな問題があるのよね。


 う〜ん、お酒がないのよね。食べ物も絶望的に何もない。実家から送ってもらったお餅があるくらい、適当なお雑煮を作って食べようかくらいしか考えてなかったからお正月のお祝いが微妙……

 

 ガチャガチャガチャ。

 えっ? まだお酒飲んでないのに誰かきた。

 

 ガンガンガン!

 

「飲もうぜぇーい! かーなー」

 

 あっ! いろはさん来た。

 いろはさんは同じアルバイト先、ガールズバーの先輩、学生なのかフリーターなのか何をしているのか全然分からない。

 ドアを開けると顔を真っ赤にしたいろはさん。もう飲んでいる。いや、昨日から飲み明かしたのかも知れない。

 今日も髪の色を染め直していて水色だ……

 

「おっ、ハッピーニューヤー! デュラさーん」

「これはこれはいろは殿。今年もよろしくお願いいたす」

「いろはさん、新年明けましておめでとうございます」

 

 いろはさんは私とデュラさんから視線をソファーで寝転がっているミカンちゃんに移し、じーっと見つめて、

 

「何この美少女? 攫ってきたの?」

「人聞きの悪い……えっと、勇者らしいんだけど、住み着いちゃって……」

 

 ふーんとミカンちゃんは寝転がり、カレー煎をぱきりと食べると、起き上がった。

 

「いかにも! 勇者ミカン、現在この休憩ポイントに永久就職を決めた所存」

「ギャハハハハ! 勇者きたの? 勇者! すげーじゃん! 暇してると思ったからこれ、カナから預かってたお酒持ってきたから飲もーよー!」

 

 飲もうよって、もう既に飲んでるし、しかも預けているお酒なのに勝手に開けてるんだけど……それも、

 

「じゃじゃーん! 美少年・大吟醸幻夜」

 

 あっ、ぶなかったぁ……兄貴の飲んじゃいけないお酒じゃなかった。とは言え高級酒じゃんか……

 

 ドンと、一升瓶を置くいろはさん。

 

「はい、デュラさん! はい、勇者ちゃーん!」

 

 グラスになみなみと注いだ日本酒、あぁ、そんな飲み方するお酒じゃないのにぃ! 私のグラスにも同じように注いだそれを見て、こんな贅沢な飲み方、次はいつできるのやら……ありがたくいただきましょう。

 

「ねぇ、なんかオツマミ作ってよぅ! これ買ってきたんだぜぇ」

 

 どさどさっといろはさんが買って来た物、鴨肉……すげぇ! 

 私はお餅、鴨肉、白菜、キャベツ、ニンジン等など、ピクルスを作った時のクズ野菜を入れて干し椎茸と醤油で適当に味付けをする。

 

「みなさんお待たせしました! 鴨肉の入ったお雑煮でーす! お正月用じゃないけど、昨日のそば前で使ったかまぼこ板を使った味噌焼きも作ってみました!」

 

 かまぼこ板にみりんと美少年と醤油を味噌と一緒に混ぜて塗る。それをオーブントースターで焼くと日本酒のおつまみに早変わりよ。

 

 

「じゃあみなさん! 新年最初の一杯を! ご馳走とは言えないけど」

 

 飲んで一年を終えて、飲んで一年を始めるのか、大丈夫かな私。しかも何やってるか分からないバイトの同僚と、首だけのデュラハンと職務放棄している勇者。

 でも、まぁ正月休みにそんな事言ってられないか……

 

「「「「かんぱーい!」」」」

 

 全員が押し黙る。青リンゴのような風味、白ワインを思わせる芳醇な味わい。嗚呼、最高! これが美少年なのね。

 

「ふぁあ、うまし! 金糸雀の作ったこのスープとの相性ぐー! この板に貼り付けて焼いた物も癖になる」

「うむ。このカモと言う肉。煮込めば煮込む程味が染みて、この酒がより引き立つ……見事!」

 

 もうね。何食べても褒めてくれるから異世界の人、好き! でも鴨肉が入った事で出汁がでて確かにお雑煮の味ランクが数段上がったわね。クズ野菜の大根、ニンジンも美味しい!

 

 私たちが新年一回目の食事を楽しんでいる中、いろはさんはミカンちゃんを見ながらちびりちびりと美少年を楽しんでいる。

 

「いや、美少年をこんな美少年見ながら飲めるなんてねぇ!」

「またまたぁ! ミカンちゃんは美少年じゃなくて美少女でしょ!」

 

 なに酔ってるのよ。と私が指摘するといろはさんは少し困ったような顔をして、私に教えてくれた。

 

「あのさ……カナ。美少年って美少女も含めた言葉なのよ。だから、勇者ちゃんは美少女であり、美少年……って事だったんだけど、あー、なんかごめんね? 分かりづらくて」

 

 あっ、私の方が無知なやつじゃん……超はずぃ……くそぅ、いろはさんめ! なんでこの人、微妙に博識なのかなぁ、普段適当なのに……。

 それにしてもお雑煮パーティーは好評だった。

 

「んまぃ! この肉。今までに食べたことのない味。たまらない!」

「こら勇者! 肉ばかり食べていたらみんなの分が無くなるであろう! 少しは配慮し、加減をせぬか!」

「私はまだ二回しか食べていない! きっとノームが一人で肉を貪っている!」

 

 ノーム? とデュラさんも含めて、ミカンちゃんが指差す方を見ていると、手に乗るくらいの小さな小人みたいな人がお猪口に入った美少年と鴨肉で一杯やってる。私たちに見つかり唖然としている小人、ノーム。

 

「あっ、あっしは……」

「イエー! 小人、ハッピーニューヤー! 飲め飲め! 食え食え! んなもん早いもん勝ちだぁ!」

「へ、へい!」

 

 いろはさんはいつものテンションでそう言い。やや怯えていたノームにも笑顔が咲いた。すげー!

 

 正月早々、異世界からいらしてたのね。私たちはお雑煮ベースの鴨鍋をつつきながら美少年を呑む。

 嗚呼、美味しい。一年の最終日は少しいいウィスキーで締めて、一年の始まりはいい日本酒で始める。

 

 私たちのペースでお酒を呑むとすぐにお酒もおつまみもなくなるわけ。そして無くなると買いにかなければならないのが世の常で、手を挙げていろはさんが、

 

「おつまみ買ってきまー!」

「よし、勇者である私も行こう。ノームも来るといい」

 

 ノームさんは頷くといろはさんの後ろをついていく、そして扉を通過して元の世界に帰るのを見た勇者ちゃんことミカンちゃんは、少し考えて、

 

「なるほど、この扉を越えなければいい。隣の壁よりでる。勇者のスキルをとくとみよ! 精霊の剣・フェニックスブレードの力を使い! 壁抜け!」

 

 腰に刺してある短剣、そんな名前だったんだ! そしてミカンちゃんはきっと世界を守ための勇者の力をお酒の買い出しに行く為に使った。

 なんと……扉を使わずに、ミカンちゃんはいろはさんについて外に出て行ったのである。

 

「金糸雀殿、勇者のやつ。ノームを使って自分がここからいかにして自由に出るか試しよった! 恐るべき存在である! あれこそが我が恐る勇者の姿そのものであるっ!」

 

 うん、すごいしょうもない事に勇者の力を見せつけられたんだけど、同時にそれは半永久的に異世界から来た人がこの世界からいなくならない方法という信じられない証明になってしまった年の始まり。

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