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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達(勇者、デュラハン)と異世界JK留学編と
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第194話 【17万PV感謝特別編】魔王様の三代目鳥メロのボトルキープと探偵登場

 私は探偵、古里調ふるさとしらべ、もちろん偽名である。名前の由来はシャーロック・ホームズの直訳とでも言えば大体伝わる。現役女子大生であり、探偵。頭脳と身体は大人、やや童顔。その正体は!

 私は探偵なのである。私が探偵であるという事は私が探偵であるという事なのだ。私のそう祖父はかつてこの国が帝国と呼ばれていた時代に東部第三十三部隊に所属し、この日本という国においてのスパイとして暗躍した。

 言うなれば私はスパイファミリーなのだ。

 超能力はない。暗殺技術も変装技術もない。

 が、私は探偵なのである。

 

 そして本日、勤労感謝の日。政府的に言えば、奴隷感謝祭とでも言うのだろうか? 勤労感謝の日なんだから全ての勤労を停止し馬鹿になれくらいの事は言えないのだろうか? そしてそんな勤労感謝の日に実にくだらない依頼を政府から受け現在に至る。本日は最近知り合った友人とお酒を飲みに行く約束をしているのにだ。

 

「異世界から来たであろう人物を調査しろぉ? ついにこの国、税金の新しい使い方でも覚えたのか? こんなありもしない調査依頼をして中抜きをするつもりだろう。が、受けた仕事は断らないのが、この私、古里調。21歳、現在彼氏募集中だ!」

 

 さて、このくだらない仕事をチャチャっと終わらせて飲みに行こう。まずは……近所のラウンドワンのゲーセンに勇者が出没する。実に、実に馬鹿馬鹿しい! ゲーセンにいる勇者なんぞ、ゲームが上手いだけでなんの役にも立たない狭いコミュニティで生きるまさに遊者だろう。

 ラウンドワンのゲーセンに入り、クソガキ共に私は一応聞き込む。

 

「おい貴様、このあたりに勇者が出没すると聞いたが、知ってるか? 知らんよな? あいわかった」

「勇者? ミカンちゃんの事かな」

「ミカン?」

「あの滅茶苦茶可愛い子だよ」

 

 ゲーセンの滅茶苦茶可愛い子なんてのは、学校でパッとしない喪女が痛々しい格好で狭いコミュニティの姫になっているに過ぎない。まぁ、そのミカン、もとい、勇者、もとい、ゲーセンの姫に挨拶でもするとしようか、

 

「貴様がミカンか?」

「いかにもなりっ!」

「うおっ、眩しい!」

 

 そこには……自分がなんだか、嫌になるくらいの美少女が対戦型ゲームをプレイしていた。ジャンクフードにまみれ、確かにポジション的にはオタサーの姫なんだろうが、本人は引かず、媚びず、顧みない。まさかに後光差し込む勇者の如き少女だったが……彼女が勇者というのは、キャラ付けか? 一人称が……

 

「勇者の勝ちなりにけり! 四十四連勝。記録更新。いけね! かなりあに大根を買って来いと申しつけられり! 勇者、これにてドロン」

 

 ほら、お母さんにお使いを依頼されているだけのただの可愛い女の子じゃないか……くだらない。

 次は……歓楽街で占いを行っているハイエルフの調査……ハァ、こんなくだらない事に税金を使われる国民が不憫でならない。ちなみに私も国民だ。私は不憫だ。そして、私は探偵である。

 

「お姉さん、ホストどうですかホスト?」

「うわっ、きっしょ! 私は貢ぐんじゃなくて貢がれるのが好きなんだ。そんな事より自分がカッコいいと思っている痛い貴様、このあたりでハイエルフの占い師など知らんか?」

「……アンタ、あの人の、ただ飯食いのセラの知り合いか?」

「いや、ちょっと調べていてな。知っているなら場所を教えろ」

「俺が言ったって絶対に言うなよ?」

「安心しろ、私は探偵だ。口は金剛石よりも硬い」

「この路地裏、立ちんぼ達がいる並びの一番奥に運が良ければいるだろうよ」

 

 要するに売春婦か? この国もいよいよ終わりが近いのかもしれんな。その要因が貴様ら風俗店も関係しているのだがな、が私には関係のない話だ。

 さて……そのハイエルフとやら……あの耳の長い中々美人の女の占い師か?

 

「お姉ちゃん、話は聞いてるんだ。よく当たるんだろ? いくらよ?」

「占いは一回二十万だ!」

 

 高すぎるだろ!

 

「が、今回はこれだけに負けておいてやろう」

 

 と言って手を開く、5。500円というわけじゃないだろう。5000円でも高すぎるが……

 

「何を占ってほしい?」

「俺の明日の運勢だ」

「安心しろ。お前に明日は来ない。これから六時間後くらいにお前、射殺されるぞ。はい、占い料5万だ」

 

 適当だし、高い。なんだアイツ、詐欺師か? にしても雑がすぎる。そんな占い師に強面の男は無言で5万を払って行った。どういう事だ? とりあえず注意だけはしてくとするか、

 

「おい貴様、ハイエルフか?」

「おや? そうだが? お前は?」

「私は警察じゃないが、そのヘンテコな格好で詐欺はよくないぞ。今回は見逃してやる。いずれ警察にパクられる前にやめておけ」

「よく分からんが注告痛みいる。さて、この金で飲みに行って帰りは金糸雀の家で二次会と洒落込むか」

 

 やはり詐欺師か……

 異世界から来た者の調査とは……異世界レベルの増税をしている政府の連中が異世界からやってきたんじゃないだろうな。

 さて、仕事終わり。

 さてさて、さてさてさて……

 

 私は知り合いとの待ち合わせの場に行くと、既に待っている。私の飲み友。

 

「魔王さまぁ! 待ったか?」

「うむ! 貴様、二時間遅刻は人間として終わっておるぞ」

 

 そう、いつも笑顔で、容姿端麗、物腰穏やかでご飯を美味しそうに食べる私の自慢の飲み友、魔王様……と、

 

「調ちゃん、またガールズバー、無断欠勤したでしょ? やばいよ。いろはさんブチギレてたよ。本来ブチギレるハズのオーナーがいろはさん宥めてたんだから」

「ふん、天童ひな。ガールズバーの店員など私の表の姿でしかない。そんな事より最高の一杯を飲みに行こうじゃないか」

 

 魔王様の金魚のフンの分際で天童ひな。私に先輩ヅラとは全く可愛いやつめ。

 

「魔王様、天童ひな。今日はどこに行くんだ?」

「それがですねぇ、魔王様。この前、ボトルキープしてそれが気に入ったらしく」

 

 やってきたのはファミリー居酒屋。俗に言う、乱立している焼き鳥チェーン。

 

「くーはっはっは! 余は三代目鳥メロが好きである! 余のボトルを所望するぞ!」

「魔王様、いらっしゃい! こちらへどうぞ!」

 

 さすがは魔王様、どんなお店でも慕われている。そして麦焼酎の壱岐ボトルが運ばれてきたじゃないか! キープを分かっている。シャンパンと同じで壱岐を名乗っていいのはその地域のお酒だけ、

 

「寒いのでお湯割りである!」

 

 お任せ焼き鳥五種盛りを三人分、とりわさにサーモンのっけ寿司。多過ぎず少なずぎない量で楽しみ。店も客も満足できるラインを維持するのがお互いにとって最高の関係と言える。

 ここも魔王様の配慮が感じられる。

 

「では皆の衆、乾杯である!」

「わーい、乾杯!」

「ふふっ、乾杯!」

 

 麦焼酎のお湯割り、質の悪いお酒でも香りが立ち、壱岐のような本格麦焼酎であれば尚香り高い逸品となる。

 口内から身体が温まったところでとりわさを一口。

 

「くぅうう! 整う!」

「うむ、美味い! お湯割り、熱燗、グリューワインとこの世界の飲み方は実に興味深い! くーはっはっはー!」

「魔王様のところでは温かいお酒ってなかったんですか?」

「ミードのミルク割りくらいはあったが、それ以外は冷たい物か常温であったな」

「世界と言えば……聞いてくださいよ! 魔王様、それに天童ひな。政府の馬鹿共が異世界の住人がこの世界に紛れ込んでいるから調査しろ! だぞ? 馬鹿馬鹿しい」

 

 二人は大笑いするだろうと思ったネタだったが、魔王様はいつも通りの笑顔で壱岐のお湯割りを一口、そして焼き鳥をパクリと食べ、天童ひなは、二杯目のお湯割りを作り出した。こいつ呑むの早いな。

 

「まぁ、余も調。貴様が言う異世界からの来訪者であるからな」

「えぇ、またまたぁ! 魔王様、それは住んでる世界が違う住人ってことでしょ?」

「うむ、まぁそうであるな」

 

 この貴賓、ありとあらゆる食に感謝する姿、そしてどう見ても日本人のそれではない見た目、間違いなくお忍びできたどこかの国の王侯貴族なのだろう。魔王というのも俗称なのだろうな。

 

「でも言われてみれば結構いますよね。サリエルさんとかダークエルフさんとか、なんでこんなに別の所から人が来てるんでしょうね」

「はん、留学や日本の文化、技術、学問を学びにきている者は多い。天童ひな。貴様も海外にゆくゆくは飛び出したんだろう?」

「まぁ、そうですけどそれとこれとはベクトル違くないですか?」

「同じだ!」

 

 これだから田舎の芋娘は困る。海外の人間の日本留学と、日本から海外留学が違うものだと思っているんだ。こいつ社会教育ちゃんと受けてきたのか? まさか、沖縄に行くのに今だにパスポートがいるとか思ってるんじゃなかろうな? ※嘘みたいな話だが、1972年より前は沖縄行くのにパスポートが必要だったらしいですよ。面白いですね。

 

「サーモン乗っけ寿司とお湯割り、奇跡のマリアージュであるな! くーはっはっは! 美味い。もう一杯いただくとするか、ひなよ」

「はーい」

 

 六四配合じゃなくて、お湯と壱岐の量を半々にしている。馬鹿な! 天童ひな。それは愚か極まりない。

 

「くーはっはっは! 余は半々割りが好きである! 美味い!」

 

 魔王様の味の趣味を理解した上での配合か、やるな。魔王様の金魚のフンをしているだけはある。お湯割り、悪くないが……私はどちらかというとシュワシュワしているお酒の方が……

 

「調ちゃん、二杯目、ソーダ割りどうですか?」

「天童ひな……貴様……いただこう。そして今日はお金が入った。私はご馳走しようじゃないか」

 

 食事が終わり、会計の為、レジに向かった際。そこには店内でコスプレをしている愚かな店員が対応していた。

 

「魔王様、おかえりですか? いつも大変ありがとうございます!」

「うむ。悪魔エストリエよ。貴様も居酒屋のバイトが板についてきたな。精進するといい! ゆくゆくは魔王城にて居酒屋を開店する」

「お任せください! 最近は串打ちも教わっていますから! 魔王様の腹心として命を賭す所存」

 

 このコスプレ女、魔王様の部下か何かなのか……なるほど、行動範囲に知り合いを配置する事で毒殺などの危険回避か、やはり魔王様、只者ではあるまい。なんせ私の探偵の情報網を駆使しても、何も得るものはなかった。

 

「調よ! 余が誘ったのに馳走になったぞ」

「とんでもございません」

「調さんご馳走様です」

「うん、お前は少し遠慮を覚えた方がいい。私でなければ嫌がられるぞ」

「うむ、余も稀にひなには引く事がある。シメを二杯食うのは今後やめよ」

 

 魔王様、そして天童ひな。幼少期から今に至るまで何故か私は友達という存在ができなかったが、言うなれば二人は私の初めての友達だ。恐らく、私の高貴なイメージから近寄りがたかったのだろうが、魔王様は同じ匂いを感じ取り私と仲良くなり、天童ひなは金魚のフンとして私と仲良くなり、もうこれは親友と言っていいんじゃないだろうか?

 そもそも、親友がいなかったので分からないが、私はスマホを取り出すと政府関係者に電話をした。

 

「もしもし、私だ。あぁ? 探偵風情? 貴様ら政治屋風情がなんという口の聞き方だ! 貴様らのくだらない仕事の報告だ。ありがたく聞け、異世界からの住人なんぞいるわけなかろう。馬鹿者どもめが! 悔しかったら消費税下げろ!」

 

 私は古里調、これは偽名だ。どんな者にも例えそれが異世界ファンタジーの魔王や勇者、そして国家権力相手でも私は堂々と振る舞っている。

 そんな私の正体は……

 探偵なのだ。

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