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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達(勇者、デュラハン)と異世界JK留学編と
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第190話 ルシファーと生ハムいちじくとバランタイン17年と

「そなたが私の契約者か?」

「いえ違います」

 

 私とこの黒い翼が生えた人とはしばらく見つめ合い。黒い翼の生えた人は多分来るところを間違えたんでしょうね? 顔を真っ赤にして顔を隠して座り込んだわ。相当恥ずかしかったのね……

 

「あの、私は犬神金糸雀、この部屋の家主になります。貴女は……サタナキアさんのお友達ですか?」

 

 顔を隠した手の指を少し広げてチラっとリビングを見る。そこでは満腹、お酒も楽しんでソファーで寝ているサタナキアさんとテレビを見ているワタツミちゃんの姿。知り合いを見つけて元気が戻ったのか再び直立。

 

「私は悪魔の頂点にして始祖。ルシファー。サタナキアに先を越されたというわけだ。サタナキアの契約者よ」

「それも違いますよ」

「……」

 

 再び顔を隠してジタバタするルシファーさん。恥ずかしかったらやらなければいいのに、カッコつけなければならない理由があるのかしら。正直、しばらく見てても面白そうだけど私はルシファーさんに声をかけた。

 

「とりあえずせっかく来られたのでお茶でもどうですか?」

「………!」

 

 優等生お姉さんタイプの美人、ルシファーさん。されど子犬みたいな表情で私を上目遣いに見つめているわ。

 控えめに言って悪魔的可愛さね。

 

 ガチャリ。

 

 このタイミング?

 

「やっほー! みんなの女神がやってきましたよー!」

「……女神」


 ニケ様は両手をあげて自分が来た事を主張しているんだけど、何だか見ている私が辛くなってくるわ。私とルシファーさんがニケ様を見ているとニケ様は目を細めてルシファーさんを見る。

 

「んん? んんん? 何だか非常に不快な空気を感じると思ったら悪魔がいるじゃないですか? 金糸雀ちゃん、これはどういうことですか?」

「いや、ウチの部屋デュラさんも住んでますから、先住悪魔いますから」

「デュラハンは……あれはいいんですよ!」

 

 ニケ様もデュラさんに餌付けされてるからね。ニケ様、ルシファーさんに向かって軽蔑の目を向けるそんなニケ様に私が軽蔑している事をいいかげん気づかないかしら。

 

「金糸雀ちゃん、こんな悪魔なんか放っておいてお酒飲みましょ!」

「えっ? いやですよ。今からルシファーさんとお茶しばくんですから」

「金糸雀未契約者、茶をやっつけるのか?」

 

 まぁ、所謂西日本の方でお茶を飲むというね……渾身の金糸雀ギャグだったんだけど異世界組には通じないわね。

 

「私は、お酒が飲みたいんです!」

 

 知りませんよ。なんだこの女神、来る度にニケ様頭悪くなってるような気がするのは私だけかしら。ルシファーさんは今にも駄々をこねそうなニケ様を見て……

 

「まぁ、私もお酒は好きよりの好きだけど……」

「ほんと卑しい悪魔ですね! 仕方がありません。この部屋は不戦の領域、同席を許します。ありがたく思いなさい」

「ルシファーさん、ニケ様の言う事は気にしなくていいですよ。私も様付けしてるのは語呂がいいだけで別に尊敬も信仰もしてませんから。ただのニックネームみたいなものですし」

 

 何なら神様だとも思ってないわね。もう小さいワガママな子が来たくらいで考えるようになった自分がいるわ。

 さて、何を作ろうか……

 

「金糸雀未契約者、手伝おう。これでも料理は得意だ」

「そうですねぇ、ルシファーさんは果物好きですか? ワタツミちゃーん、ニケ様の相手お願いします」

「はーいなのれすよー」

 

 ニケ様は国会中継を見ながらワタツミちゃんと何やら話してるわね。遠目で見てたらほんと美人なのに残念がすぎるわ。

 

「ルシファーさん、いちじくを一口大に切ってください」

「承知」

 

 さて、私は生ハムを切ろうかしら、いろはさんから貰ったハモンセラーノを薄く、薄く切ってそれをルシファーさんが切ってくれたいちじくを巻くだけで完成。

 

「お手軽おつまみ生ハムメロンならぬ生ハムいちじくの完成です。お酒はさっきワイン飲んだしな……ルシファーさんは好きなお酒とかありますか?」

「どちらかと言えば火酒が」

 

 かしゅか……うちの家、いくらでもあるわね。テキーラやジン、ウォッカよりブランデーかウィスキーの方がいいわよね。だとすると、万人ウケしやすいバランタインあたりがいいかしら、1000円くらいのレギュラーボトルでもめちゃくちゃ美味しいバランタインの今回は17年出しちゃおうかしら!

 バランタインはレギュラーボトルは割と激安ウィスキーだけど、最高ランクの30年はウィスキー界ではトップクラスの味とそれに伴うお値段がするのよね。

 そんな上から二番目の17年はストレートでいただきましょうか。

 ニケ様だけ薄めの水割りにしておこう。

 

「ではみなさん! 乾杯!」

「乾杯、金糸雀未契約者」

「乾杯れすぅ!」

「私だけ細長いグラスに入れているのは女神だけ特別扱いですか? 金糸雀ちゃん! そういうの好きですよ!」

 

 チビりと一口、そしてチェイサーを一口。

 あぁ……あぁああ! バランタインの17年うんまぁ!

 

「これは何というか……美味い」

「わふー、美味しいれすぅ、サタナキアちゃんが寝ているのが残念れす」

 

 ワタツミちゃんって今思えばお酒結構強いわよね。さっきあれだけワイン鱈腹飲んだのに素面だし……

 

「金糸雀ちゃん、何だかが異様に薄く感じますよ? でも香りは凄い」

「気のせいですよ。バランタインはバニラのような香りが逸品ですから嗅覚と味覚で楽しんでください」

 

 加水して分かるいいウィスキーの性質よね。ニケ様にはあんまり関係ないんでしょうけど、ゆっくりとちびちびウィスキーを舐めながら時折……

 

「生ハムいちじくを食べてみてください。合うと思いますよ」

 

 フルーツ用の小さいフォークでいちじくを突き刺し恐る恐るルシファーさんはそれを口に運ぶ。

 パクリ。むぐむぐと口を閉じてルシファーさんの表情がみるみる内に笑顔が咲くのでこれはきっと。

 

「おいしー! こんなの魔界にはない。さすがは金糸雀未契約者、よほどの対価がなければ契約をしないと言う事か」

「そもそも何の契約なんですか? 保険とか新聞とか間に合ってますし」

 

 ウィスキーをこくり、そして目を瞑って口内が焼かれるのを楽しみながら再び生ハムいちじくを食べて、トンとショットグラスを置いたルシファーさん。

 

「魂の契約さ! 死した時、その魂を我ら悪魔に捧げ、わずかばかりの間、主従関係を結ぶ。どんな願いだって叶えてみせよう。億万長者になる事も、世界中の異性から求婚される事も、何だってだ」

「億万長者には今度、私の計画でなるつもりだし。世界中のイケメンからはそういう力なしで求婚されたいし? えへへ」

 

 ミカンちゃんはキモいキモい言ってくるんだけど、ワタツミちゃんはちょっと引いた目で私を見てるんだけど、そっちの方が来るのよね。

 

「ならば、世界中のありとあらゆる美酒を心ゆくまで楽しむ事も容易い……が金糸雀未契約者にはこんな事じゃ心は揺らがないか」

「えっ……ちょっとそれいいわね」

「えっ?」

「えっ?」

 

 生涯飲めないと思ってたあれやこれやを呑めるって事でしょ? そんなの兄貴なら秒で悪魔と契約するでしょうね。

 

「金糸雀ちゃーん、女神のグラスが空いてますよ?」

「はいはい、ニケ様はもうお水飲んでてください」

 

 コポコポと水を入れるとニケ様は水の入ったグラスを見て、それを置いて…………

 

「金糸雀ちゃんが、女神を邪険にするぅ! うわーーーー」

 

 ジタバタ泣き叫び出した。薄いお酒を延々飲んでと泣き上戸になるのかしら……これは正直、クソ面倒臭いな。

 

「め、女神は大丈夫なんだろうか? 飲みすぎ? 飲み過ぎなのか?」

「ルシファーさん、すみません。ウチに勝手にやってくる女神が、こんなんで」

「いや……、わ。私もそろそろお暇するよ。サタナキアを連れて帰れないと……ご馳走になった。これ金糸雀未契約者に、今日のお礼として」

「ん? お試し悪魔使役券5回回数券。(※使用期限は寿命までです)へー、こんなのあるのね」

「あぁ、それでよかったら契約してもらうという形に最近は悪魔も営業方針を変えたんだ」

 

 営業方針って言っちゃったわ。でもこれがあると……

 

「またこれ使ってルシファーさんを呼んで一緒に飲み会できますね?」

「んんっ? んん! そ、そうだね……じゃあ」

「玄関まで送りますよ」

「そんな事より、女神に構ってぇえええ! 金糸雀ちゃーーーん!」

 

 ウゼェ……。

 私は足にしがみつくニケ様を引っ張りながらルシファーさんと寝ているサタナキアさんを見送って、私からくっついて離れないニケ様にトクトクトクとショットグラスに入れたバランタイン17年を飲ませてみた。

 すると、ピコーんとニケ様の髪が逆立って……

 

「金糸雀ちゃん、いいですか? これから話すお話は神話時代のお話です。かつて異世界の魔物が攻めてきて、人間、魔物、精霊達は力を合わせてもその強大な力の前になす術もなく、世界は終焉に向かうと思われたその時……その時ですよ? 神々の中で唯一、それらに力を貸した者がいるのです! 誰か分かりますか?」

 

 ここでニケ様と言ったら、めちゃくちゃ拗ねて怒るので、ここでの正答は、

 

「ちょっと分からないですね」

「勝利の女神ニケ。そう私なんです!」

 

 多分、どんな昔話より聞かされたニケ様のくっだらない世界を救ったお話を聞いていると、外出準備を始めたワタツミちゃんが渋谷に行くと言って私を残して行った事をきっと生涯忘れないと思ったわ。

 だって、その後私のスマホにワタツミちゃんから送られてきたメッセージ、男性生徒5、6人とワタツミちゃん一人でカラオケに行って楽しんでいる写真だったから……

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