第184話 【16万PV感謝特別編】魔王様とスタミナ太郎と宇宙捜査官と
前回のあらすじ……というわけではありませんが、魔王様が宇宙人に絡まれました。
「敵性宇宙人発見! オーバーキルリアン反応測定不可、コスモリボルバーを喰らえ!」
魔王様のせんべろ(1000円で飲めるサービスをしているお店です)の探索をしていた時、彗星のごとく現れて、ヘンテコな銃を魔王様に向けると、ヤクザのヒットマンも驚きの速度で弾いてきました。
バンバン!
「クハハハハ! ひなよ。この異常者は前にテレビのにゅうすで取り上げられていた最強の人という落伍者であるか?」
「いや、どうでしょう。多分、まともな人じゃない事は間違いないです」
魔王様は手を掲げると宇宙人の銃の弾丸らしいものを不思議な力で止めています。ボディスーツと甲冑を足したような痛々しい格好にアンテナでしょうか? ピンと空を向いた狐の耳のような形をしたゴーグルをした青年です。あなたの行くべき場所はここではなく秋葉ですよ。
最近秋葉も廃れてきましたけどね……
「こ……コスモリボルバーが……こうなったら! この青き美しい星の為に、この星ごと敵性宇宙人を惑星間虐殺決戦勝利砲ゴッデス・ニケでぶっ潰してやるぅ!」
何言ってるんだろうこの人、多分、目的と手段が完全にバグってますね。というかいきなり地球の危機です。空が真っ昼間だというのに夕焼けのように真っ赤に染まっています。周囲の人々もスマホを向けて幻想的な空を撮影。
「クハハハハハ! 貴様、さてはテロリストという連中であるな? 天空より異世界の魔物の咆哮程の力を感じる。ひなよ。余から離れるな。余の至高の暗黒魔法を見せてやろう」
「滅せよ! 敵性宇宙人! 美しい青き惑星と共にチリとなれぇ! しねぇええええええ!」
嗚呼、世界が終わる時ってこんな感じなんでしょうね。これはもうダメです。スカイツリーみたいな大きなの光が地球に向けて放たれました。
「クハハハハ! 余の至高の暗黒防御魔法! ダークセンチュリオン!」
奇跡です。
奇跡が起きました! 魔王様が放った黒いエネルギーの塊は宇宙人の放った地球終焉の光を防ぎました。
それには宇宙人も驚きです。そして、私たちの上空に……
「なんだあれ? エイ? マンタ?」「うわ! ユーマだ! 宇宙人か?」「さっきの光といい地球終了のお知らせ?」
そう、おそらく宇宙人の人が敵性宇宙人と言ったのはアレの事で、魔王様はとばっちりを受けたんだと思います。宇宙人の人は空を見上げて、そして魔王様を見て、
「もももももも、申し訳ない! 申し訳ない!」
勘違いで地球壊されたら申し訳ないでは許せないですよ。ここは魔王様、ガツンとやっちゃってください!
「許す! 中々面白かった」
魔王様は寛大な心を持ってました。それにしても空の怪物はどうするんでしょうか? と思いましたが、空に浮かんでいる怪物は見た目は世界を滅ぼしかねないですが、実はそんな事もない安全な宇宙生物という事で宇宙人さんがおい払って、これを見ていた人たちに、あの有名な記憶を消す光と宇宙人さんのオーバーテクノロジーでスマホの情報を改変し、何事もなく済みました。
そして宇宙人さんの土下座タイムです。
「俺は宇宙捜査官のナノ・ハザードです。今回は大変ご迷惑を」
「ナノさん、一つ間違えてたら地球終わりのお知らせでしたよ。というかナノさんもあのままだと死んでたんじゃないですか?」
「お詫びと言ってはなんですが、地球に来たら必ず来る行きつけの店があるんだ。二人を招待しよう」
!!!
宇宙捜査官なんて凄い人の行きつけのお店って、どんな高級店でしょう。とりあえず今回はそれで手打ちとしましょうか……
ナノさんの空飛ぶ円盤に乗ってやってきたのは某県のドンキホーテの中……嫌な予感がします。
「宇宙美食名鑑にも載る地球のオススメ店舗。食のテーマパーク・すたみな太郎だ」
やっぱり……せっかくだから、きんぐとかにして欲しいなと思いますが、魔王様の目が既に輝いています。
仕方ありませんね。私もすた太(プロの呼び方です)は嫌いじゃないです。しかし、魔王様、大丈夫でしょうか? すた太は数ある飲食店の中でもトップクラスのアングラです。
店内では海外の団体旅行ツアーのお客さん(実際ツアーのランチに含んでる事多いみたいです。間違った日本食を覚えそうでやめてほしいですね)。どこかの女子高生達が打ち上げか何かで活気があります。
「魔王様はすた太初めてですよね? ルールをご説明します。肉はトングを使ってよく焼く事です。その辺の食べ放題よりここは気をつけてください。食べ残しは厳禁ですよ! そして、すた太は一般的なお店では下品と思われるメニューも作っちゃおう! とまさかの公式が言っているバグった店です。その為、店内の食材を使ってなんでも作れてしまうのです」
「うむ、焼肉である事は理解した。沢山肉を喰らうとしよう」
「魔王様、それは初心者のするありがちな間違いです。すた太のプロはお寿司! これをメインに組み立てるのが正解です」
「ひなよ。いきなりどうした?」
魔王様はこれから今まで見たことのない世界と扉を開くでしょう。
お店に入ると目の死んでいる店員さんがやってきて、
「席に案内します」
店員さんが、ナノさんの格好を見て引きながら案内してくれます。広めの席に案内してもらいました。
「当店のルールは……」
「「120分で、アルコールの飲み放題はなし! トングなどの取り扱いは分かっています」」
(すた太、バイト歴10年の俺だからわかる。コイツらプロや!)
「「濃いめのハイボール三つ!」」
(コイツら分かってる…………久々に熱い1日になりそうや!)
私とナノさんはお互いを見て、理解し合います。コイツ、できるな! と。そして店員さんと魔王様は驚いた顔をしています。
「ひなよ。お酒の飲み放題なしとは貴様にしては珍しいな?」
「魔王様、説明させていただきます。すた太では飲み放題は不要です。濃いめのハイボールは三杯でアフリカ象でも失神する程強烈です。これを注文してお店のソフトドリンクと割って飲む事でお酒代を大幅に節約できるんです」
「ほ、ほぉ……」
魔王様も驚きの顔を隠せませんね。そしてすた太は注文するのではなく、自分で食材を取りに行き焼いて食べる完全客放置方経営になっています。
「ひなさん、貴女はプロフェッショナルだ。さぁ、魔王さんも食材を取りにいきましょう」
「ナノさんも中々ですよ。魔王様も是非」
「う、うむ」
すた太は焼肉、お寿司、おでん、お惣菜。カレーやビーフシチュー、もつ鍋、デザート、もう何屋なのか全く分からない配置になっています。
魔王様はニコニコと揚げ餃子や唐揚げなんかをお皿に入れてますね。
残念ながらど素人です。
このお店で取るべきは……さすがですね。ナノさん、ウィンクをして必要な食材を確保してくれています。
牛カルビ、そしてサムギョプサル。焼き野菜はネギにしめじです。
「ひなさん、タレはどうしますか?」
「私はガッツリ行きたいのでニンニクとんこつです!!」
「では俺は味噌ケチャップで行こうかな」
「貴様ら、タレは席に置いてあろう?」
「「初心者はその方がいいですね!」」
「貴様らの言うタレはなんの事だ?」
「魔王様、説明させていただきます。タレの利用にも制限はありません。私のニンニクとんこつは山盛りのニンニクにラーメンコーナーにある豚骨ラーメンのタレを原液のままかけたものです。ガツンとくるしょっぱさの後に来るニンニクの風味は一度食べたらやめられなくなります。ナノさんの味噌ケチャップは同じく味噌ラーメンのタレ原液を調味料コーナーにあるケチャップを加えた物でケチャップの酸味と味噌のコクのバランスが堪らない一品です」
「…………」
魔王様も流石について来れなくなっているかもしれませんね。ですが、誰しもが最初はすた太初心者です。
「ナノさん、サムギョプサルはどのような食べ方にしますか? カレー? ハヤシ? それともミートソースですか?」
「普通に食べれば良いのではないか?」
「今日は魔王さんもいるのでハヤシでどうだろう?」
「いいですね! 決まりです。魔王様、説明させていただきます。サムギョプサルのような味のついていないお肉は先にとっておいて好みのソース、カレーやハヤシ、ミートソースに漬け込んでおきます。食べ放題後半にダレてきた時のカンフル剤にします。是非お試しください」
「…………うむ」
魔王様は手作りラーメンに興味を持っていますが、それはラストです。私とナノさんがお寿司コーナーにいるのを見て、やってきます。焼きそばを入れましたか……魔王様が食べたいのであれば止めませんが……
「魔王様、先ほど私が入店前にお寿司で組み立てると言ったのを覚えていますか?」
「覚えておるぞ」
「お寿司は本当に万能なんです。ただ焼くだけのお肉とは違います」
「そうそう、俺はセパレートが得意なんだ」
「魔王様、説明します。お寿司の可能性は無限大です。皿に並べてそのままカレーをかけたり、ドンブリに入れてから熱々のカルビスープやもつ鍋のスープをかけて雑炊風にネタを外して焼いたお肉と食べれば寿司on theミート。シャリ部分を数個集めて握り直し醤油をかけて網で焼けば焼きおにぎり等、お寿司を中心になんでも作れます。ナノさんの言っているセパレートとはネタとシャリを分けて食べるスタイルのことです」
「貴様らイカれておるな」
席に戻る前に、私とナノさんはラーメンコーナーに行きます。魔王様はシメのラーメンをという顔をしていますが、驚くでしょう。
「魔王さん、ここではラーメンは食べないんだ。取るものはメンマとネギ」
「!!!!! ドンブリに大量のネギとメンマ?」
「魔王様、そこにタバスコを大量にかけます……最強のオツマミの完成です」
私たちは席に戻ります。私も久々ですが腕は鈍っていないようです。及第点のテーブルの食材達。
「では食べましょうか? まずは乾杯ですね!」
「同志に乾杯!」
「うむ乾杯である!」
魔王様は強烈な濃いめハイボールを飲んで「うまい!」とご満足のようです。唐揚げ、揚げ餃子、焼きそば、初心者らしい食べ物、そして焼肉。お寿司を食べ満足のようです。
私とナノさんはやや苦笑し、プロのすた太を楽しみます。
120分と言う制限の中で、私たちは食べ続けます。残す事は許されない、まるでそういうアトラクションのようです。
120分後、私たちの胃ははち切れんばかりに膨張し、若干の後悔と吐き気に見舞われるでしょう。
でも私たちは食べます。それが、増税ばかりする政府に対して私たちができる唯一の反政府運動だからです。
…………そんな私たちのすた太公式が推薦している作っちゃおう! な食べ方を見た魔王様が、デザートのケーキを食べながら、
「貴様ら、食べ物で遊ぶでない! けしからん事だぞ! くーはっはっは! この店はそんな下品な食い方をせずとも普通に美味い! 文化の日に食文化を侮辱する真似は無粋である!」
私と、ナノさんのアイデンティティが崩れた日。
魔王様に下品だと言われたから、11月3日はすた太記念日。