表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達(勇者、デュラハン、魔王の娘)と異世界JK留学編と
175/367

第175話 シールダーと甘辛手羽先とジムビームデビルズカットと

「あー、あんっ! ンッ、アッ…やん…ンッ! 金糸雀らめぇ!」

「ミカンちゃん、変な声出さない!」

「気持ち良すぎて、勇者、絶頂せり!」

 

 ミカンちゃんは今、私の膝枕で耳を預けているの。まぁ、耳掃除ね。アキバで女の子に耳掃除してもらえるクソしょーもない店にオフ会で行ってから耳掃除にハマったミカンちゃん。それにしても形もいいし、可愛い耳ね。

 ただアヘ顔になってるけど……

 

「もう終わりよ」

「えー、もっとー! 勇者はもっと耳かきを所望!」

「だーめ。あんまり耳掃除しすぎると耳悪くなるわよ。そもそも耳垢って割と大事なんだから」

「えーーーー」

 

 上目遣いで私にそういうミカンちゃん、かわいい。でも、本来は世界を救う旅に出ているハズのこの娘が職務放棄していると思い出すとふと我に帰るわ。

 

「ミカンちゃんって世界を救う事ってどうでもいいの?」

「どうでもよき」

 

 うわ! 即答した。デュラさんが今日は手羽先料理を作ると、ワタツミちゃんに連れて行ってもらいスーパーで買い物中。そろそろ戻ってくると思うけど、ミカンちゃんは私に真理を話し出したわ。

 

「勇者に救ってもらわないといけないというのが世界の末期なりけり、勇者一人に全てを任せて救われた世界に未来はあり? 勇者なき後はどうせり?」

 

 ま、まぁ言わんとしてる事は分かるけど。そんな身も蓋もない事言うとあらゆるファンタジーの全否定になるんだけど……それ勇者であるミカンちゃんが言っちゃう?

 

 ガチャリ。

 

「その後の未来など知った事か! 今ある世界を救う。それこそが勇者と言うのではないだろうか?」

 

 誰かしら? なんというか凄いテンションでやってきたけど……にゅっと顔を出したのはポニーテールが可愛い女の子……ぉおお! なんか畳みたいなでっかい盾持ってるけど……

 

「げっ! 盾使いなり」

 

 あぁ、久々の勇者パーティーシリーズね。今日はどんなスポーツドリンクの名前なのかしら?

 

「申し遅れた。私はミカンの……恋人兼勇者ーパーティー、勇者の愛の盾。シールダーのスワンだ。オーエ・スワン」

 

 あぁ、熱中症とかの時のね。

 

「こんにちは、私は犬神金糸雀です。この家の家主です」

「つかぬ事をお伺いしますが、ミカンとはどういうご関係だ? 先ほどから貴殿の膝よりミカンの匂いがするのだが」

 

 うわっ、この娘、こわっ! ミカンちゃんがどちゃくそ嫌そうな顔をしているわ。この反応、ニケ様やセラさんがきた時と同様ね。

 

 ピーンポーン。

 ワタツミちゃん達のご帰宅ね。私はオートロックを解除すると、二人の声が……最近デュラさんをそのまま抱えてスーパーに行っても近所の人に慣れられているというのも凄い話ね。

 

「ただいまであるぞ! お腹すいたであるな? すぐに美味しい物を作ろうぞ!」

「わはー、デュラお兄ちゃんにお菓子を買ってもらったですぅ」

「なんのなんの、買い物に付き合ってもらったお礼であるぞ!」

 

 ミカンちゃんの動画配信コーナーの一つで最近お小遣いを作れているデュラさん。殆どを料理研究に使っていて、今日もその一環ね。

 

「大悪魔デュラハン! 首だけとは好都合! 死ねぇえええええええ!」

 

 大きな盾をデュラさんに向けるスワンさん。けど、このパターンって、デュラさんの超能力で盾は止まるわ。

 

「盾使いよ。今までどれほどの者と死合ったかは知らぬが未熟の極みであるな」

「一人また一人魔王軍を潰していけば、ミカンが私を見てくれるんだ。だから死ね!」

「うわー、怖い人がきたですぅ!」

 

 キョロキョロと周りを見渡して、怖がっている私可愛いの感じを全力でだすワタツミちゃん。もうこの部屋カオスの極みね

 

「勇者お腹減った。盾使いデュラさんの邪魔しちゃダメり!」

 

 もう殺し合い始まっている中でミカンちゃんが綺麗なお腹をさすりながらそう言うけど……

 

「勇者が言うなら仕方がない、盾をおろそう。すまなかったな大悪魔デュラハン」

「貴様はいつもそんな感じで迷惑であったな。魔王軍でも有名であったぞ、確か魔王様だけが面白い盾使いが魔王城に遊びに来たと言っておったが……」

「……魔王軍皆殺しにして魔王の椅子に腰掛けてミカンを待って、私がミカンの永遠お魔王だ! と喜ばせる作戦だったんだ。それなのに、魔王強すぎるだろう! 邪魔をせずに皆自害しろよ! 私に何か恨みでもあるのか?」

 

 この娘、何言ってるのホント……可愛い私を演じてたワタツミちゃんも流石にこいつヤヴェ奴だと確信したらしく、

 

「デュラお兄ちゃん……わらし、お手伝いしますぅ」

「おぉ、そうであるか? 助かるであるぞ!」

 

 ずるっ! この娘、部屋に置いとくのやだなぁ。怖いなぁ。ニケ様とかに押し付けたいんだけど、こういう時来ないのよねぇ。

 

「とりあえずお酒でも飲む? 悪魔の取り分の横取りという名のついたジムビーム。ジムビームデビルズカットよ」

 

 どんとボトルを置いてみせると、スワンさんはじっと見つめる。あー、これは酒飲みね。

 

「お、お酒は少し苦手なんだが少量なら」

「えぇ、いいじゃないですかショットグラス持ってきますねぇ?」

 

 オーク樽の中に原酒が染み込んで容量が減ってしまう悪魔の取り分。それを特別な方法で抽出したのがデビルズカット。悪魔の取り分まで奪ってしまうだなんてなんともジョークが聞いたお酒ね。

 

「デュラさん、ワタツミちゃん、乾杯しましょ!」

「分かったである! すぐに持っていくである」

「わふー、デュラお兄ちゃん手際いいれすぅ!」

 

 どんな簡単な料理作ったのかしら? すぐに匂いでわかったわ。名古屋で有名な手羽先料理。ゴマが振ってある。

 

「甘辛手羽先の完成であるぞ! 食欲がそそるである!」

「デュラさん神なりけりぃ! 勇者、手羽先スキー!」

「ワハハハハ! 神ではなく悪魔であるぞ!」

 

 そんなミカンちゃんとデュラさんの相棒感を見て、スワンさんは「は? あの悪魔、私のミカンになんであんな馴れ馴れしいんだ? 私が僧侶職なら絶対屠ってやるのに、盾職とかハズれなんだけど……というか何? もしかしてミカンここに監禁されてる?」

 

 自分のいいように解釈する。メンヘラ気質とストカー気質とその他諸々のダメ人間の集合体みたいな娘ね。

 

「とりあえず、最初はショットで超、癖のあるコクを楽しんでみて! デュラさんの取り分頂いちゃいます! 乾杯!」

「わー乾杯れすぅ!」

「デビルズカットとはいいジョークであるな! 乾杯」

「乾杯なりぃ!」

「チッ……ミカンはそもそも……かんぱい」

 

 そして奇跡が起きたわ。クイッとショットグラス一杯飲み干したところで、スワンさんが……唐突に土下座したわ。

 

「「「!!!!!」」」

「うわ、キモーい」

 

 ミカンちゃんだけは何か察してるわね。

 

「皆さん、表の私がご迷惑をおかけしました。私はスワンの良心です。お酒を飲んだ時だけこうして表に出て謝罪を繰り返しています。本当はいい娘なんですよ。ただ、表現が少し大袈裟で」

「まぁ、犯罪スレスレですけどね。でも裏スワンさんは、普通っぽいので飲みましょう! ほら、デュラさんの手羽先、これ絶対うまい奴なので」

「はい! いただきます」

 

 と言うことで、食べる前から美味しいのが確定しているデュラさんの甘辛手羽先をみんなで実食!

 

「はむっ」

「んんっ」

「はぐはぐ!」

「おぉ、パクッ!」

「んー、甘くて柔らかい」

 

 私達は手が汚れる事を気にせずに手羽先齧り付いたわ。あぁ、なんでこんなに美味しいのかしら、甘味の中にピリリとした辛さ、そのあと柔らかい手羽先の肉に味が染み込んでじゅわっと、ほんと腕を上げたわねデュラさん!

 

 無言でウェットテッシュを超能力でポンとテーブルに置いてくれる気配りも合わせて120点! 私の120点が出たわ!

 私は、デュラさんの気配りに負けじと心配りよ! 炭酸水と氷、そしてマドラーを用意するとこの甘辛手羽先に120点合う。

 

「はい! デビルズカットハイボールよ!」

「うきゃああああ! 勇者、しゅわしゅわスキー」

 

 ミカンちゃんが甘辛手羽先をパクリと齧り、そしてゴクゴクとハイボールで喉を鳴らす。

 くるわね。


「うんみゃああああああああああ! これサイキョー! サイキョーなり!」

「ふぇー、ではわらしも。すごく合いますぅ」

「はっはっはっ! 気に入ってもらって良かったであるぞ! しかし、金糸雀殿の作ったハイボールの配合。完璧であるな! この手羽先の為だけに考えられたと言っても過言ではあるまいよ」

 

 ほらぁ、デュラさんのこう言うところ。こう言うところですよー! ホント、誰からも好かれる人って発言が憎いのよね!

 

「スワンさんも飲んでますか?」

「えぇ、本当にとっても美味しいですね。表の私も喜んでますよ」

「もう永遠に表の方出てこなくていいかもー」

 

 ミカンちゃんってホント、思った事を口にするタイプよね。そこはもう少しオブラートに包んで言わないと、ワタツミちゃんは……むしゃむしゃごくごくと美味しい物には目が無いのはやっぱり神様だからね。

 この面倒ごとには全力で関わらない姿勢、見習いたいわ。

 

「まぁ、ちょっと表現下手なところがあるけど、ねぇ。スワンさんにはスワンさんのいいところ(あるのかしら)がね。うん」

 

 お茶を濁してお酒が回っている内に帰ってもらおう作戦よ! 

 そして、この日本人特有の事なかれ主義が起こすデメリットを私は即座に後悔することになるわ。

 

「スワンさん?」


 ぽーっと私を見ているスワンさん。一体何かしらと思っていると、スワンさんはミカンちゃんをチラ見して、

 

「ミカンとのロマンスは終わりだ。これからは金糸雀さんの恋人として生きていく所存」

「えっ?」

「照れるな照れるな! 金糸雀さん、ちゅき!」

 

 恋人って本来、どっちもの了承があってなるものであって一方的なそれは……違わなくない? そもそも、彼氏とか高校の文化祭後に二週間くらいノリで付き合っただけで全然経験ないから分からないけど、えっ?

 

「と言うことで私も金糸雀さんとの愛の巣に囚われる事としよう」

「盾使い」

「ん? ミカン、なんだ?」

「こっちなり」

 

 ミカンちゃんがスワンさんの手を引いててくてくと玄関まで連れていくと扉を開けて、ミカンちゃんは「てい! なり」と後ろから蹴り飛ばして無理矢理元の世界に戻したわね。そして戻ってきてミカンちゃんは、

 

「シュワシュワお代わりなりけり!」

 

 となんかちょっと怒ってハイボールを飲んで、手ばきをバクバクと食べて、あれぇ? もしかしてミカンちゃん嫉妬?

 

 嫉妬かしらぁ?

 ニヤニヤしながら私はミカンちゃんを見ていると……離れたところに畳くらいの大きさの盾が転がっている事に気づいたわ。

 しばらくはお風呂の蓋にでもしようかしら、てゆーか勇者パーティーの道具ほとんどコンプしてるんだけど、あっちの世界大丈夫かしら?

 

 ガチャリ。

 足音で分かるのよね。あとミカンちゃんが逃げないので、

 

「金糸雀、きょ、今日邪魔していいか?」

「犬神様、こんにちは!」

「あー。お二人ともお久しぶりです!」

 

 久々のレヴィアタンさん、そしてルーさんのご来場に私のお部屋は超歓迎ムードでワタツミちゃんも姉妹水入らずでおしゃべりを楽しんで、実は一緒にきて驚かそうとしていたニケ様が30分後にお酒を飲んで自分がきた時と態度が違うと泣きながらキレ散らかす未来が待っている事は私はまだこの時は知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ