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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達(勇者、デュラハン、魔王の娘)と異世界JK留学編と
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第168話 毘沙門天とリーフメモリーとマルヴァジア(マディラワイン)と

 ワタツミちゃんの友達が今日はやってきているのよね。それも無病息災、戦いの神様、日本人なら高確率で知っている毘沙門天さん。確か、インドの最高神の一人で日本だと七福神なのよね。欧米諸国だと悪魔扱いされるんだけど、日本は八百万の神様なんで大概神様として崇められてるんだったかしら?

 

 そんな毘沙門天さん、

 

「まさかワタツミちゃんがこっちに来てるとは思わなかったのじゃ! 勇者も見ぬ内に成長しよって!」

「ロリババアうぜぇなりぃ」

 

 ミカンちゃんが週刊漫画雑誌をひっくり返りながらそう返すので、知り合いなのね。毘沙門天さんは中華系の民族服に羽衣、首にはマングースのマフラーをしたまぁ、お子様ね。

 

「して、家主、金糸雀よ」

「はい?」

 

 もじもじと上目遣いで何か言いたそう。うはー! 超可愛い! ミカンちゃんは死んだような目でそんな毘沙門天さんを見つめているけど、彼女の所望する事は、

 

「ここに来ると美味い酒が飲めると聞いたのだが?」

「毘沙門天さん、お酒飲めるんですか? オレンジーナとかの方がよくないですか?」

「ば! バカにするでないぞぉ! 福禄寿や恵比寿も飲み負かしたんじゃからなぁ!」

「へー、そうなんですね」

 

 異世界の種族の人って一見すると未成年みたいな見た目の人多いから飲んでるヴィジュアル犯罪臭が凄いのよね。毘沙門天さんどんなお酒がいいかしら? インド系だし、キングフィッシャーとかもあるけど、中国から渡ってきた神様だったら、ワインかしら?

 

「マデイラワインとかどうですか?」

「ワインは好きじゃが、マデイラとは?」

「私もぉ、知らないれすぅ」

 

 すると先ほどから年末に食べるお漬物の準備を終えたデュラさんが戻ってきて、私を見ると、

 

「確か、酒精強化ワインであったかな?」

「ですです! デュラさんよく知ってましたね」

「暇な時は動画サイトで色々勉強しておるからな!」

 

 ワイン置き場から適当なマデイラワインを取ってくると、銘柄は……

 

「マルヴァジアか、これならチョコとか合いそうね」

 

 マデイラワインは、シェリーやポートワインとかと一緒で発酵しているワインに蒸留酒を入れて強制的に発酵を止めて度数を上げてるお酒ね。かつては、これらを焼きワインって言ってた人もいるらしいけど、焼きワインはブランデーが一般的ね。常温保管できるのも嬉しいわね。

 

「じゃあ、まずはストレートで飲みましょうか? おつまみは……リーフメモリーもらったからこれ開けましょうか?」

「モンロワールなりぃ! 勇者すきー!」

 

 リーフチョコレートが有名なチョコレートのお店、目が死んでいる女の子テレビCMが絶妙に癖になるのよね。マデイラワインは度数が高いから少量をグラスに注いで、

 

「じゃあ、毘沙門天さんのご来訪にかんぱーい!」

「わー、乾杯れすぅ!」

「乾杯なりぃ」

「乾杯である!」

 

 私はこの時、予想だにもしない事実を毘沙門天さんが語る事を知る由もなかったわ。

 

「催促したようですまんな! これでも勝利の神じゃ! お前達の勝利に乾杯! ワシ以外の勝利の神は全部偽物の犯罪じゃからな! 気をつけよ! おぉ、なんと甘くて美味い酒か!」

 

 そう、私たちは一瞬にしてこの状況下で私の部屋に入り浸る女神様が来ると戦争になるなと確信したわ。そんな事は知らない毘沙門天さんは、リーフロワイヤルを見て、

 

「可愛いお菓子じゃな? どれ一つ! うきゃああ! 甘くておいちー、これをこの酒で」

 

 チョコレート食べた後にマデイラワインで流すと美味しいのよね。私達も毘沙門天さんに倣って同じく。

 

「うみゃあああああああ! 勇者、これしゅきー うまうまなりぃ!」

「つよつよですねぇ!」

「うむ! つよつよであるな!」

 

 めちゃくちゃ合うという事を異世界組はつよつよって表現するけど、それってなんか元ネタあるのかしら? 毘沙門天さん、ぽわーんとしてきてるけど大丈夫かしら?

 

「うーん、いい気持ちになってきたのじゃあ! もーいっぱい!」

 

 あれねファッション酒豪ってやつね。大学にいるわ。少々、お酒飲める程度で自分が酒豪か何かだと勘違いしている人。お酒は味や雰囲気を楽しむもので量を競う物じゃないんだけどね。

 

「毘沙門天さん、そろそろやめておいた方がよくないですか?」

「何を言っとるぅ……まだ宵の口じゃ、そもそもわしは」

「まだお昼ですよ……せめてロックにしましょ」

 

 オンザロックにオレンジをたらして、それを毘沙門天さんに渡すと、ゆっくり飲んで、目を瞑ったわ。

 

「はぁー、これも美味いのぉ!」

 

 ミカンちゃんが無言で席を立ったわ。これは嵐が来る前ぶれね。デュラさんはハァとため息をつきながらマデイラワインを一口。ワタツミちゃんはもう既に学校の友達と電話を始めてるわね。

 

「金糸雀、金糸雀! 先ほどのもーいっぱい!」

「ダメって言っても飲むんでしょうからもう出しますけど、知りませんよ?」

「金糸雀よ、恋と酒は病気じゃ! いつも誰かを狂おしくさせるな」

 

 なんかそんな哲学的な事を言ってるけど、全然中身がないのがちょっと面白いわね。これだから飲兵衛という連中は……

 

 ガチャリ!

 きた……

 

「みんなさーん! 勝利の専売特許、女神ニケがきましたよー! お出迎えはないんですか?」

 

 どうして今日に限っていつもよりウザめにテンション高いのかしら……そして私達は絶対に混ぜてはいけない、ニケ様と毘沙門天さんが……出会ってしまった。

 

「……なんじゃ? 他国、いや異界の神といったところか?」

「そういう貴女は金糸雀ちゃんの世界の神ですか? 初めまして、私は勝利の女神ニケです」

 

 ポーズをつけながら素面のニケ様がそう言ったわ。それに毘沙門天さんは笑顔のまま、

 

「よぅ聞こえんかった。何の女神と?」

「勝利です! この世界のスポーツブランドにナイキという物があるでしょう? あれも私の名前が由来なのですよ! えっへん! 私の他に勝利の神はいませんから!」


 さぁ、毘沙門天さんはどう言うのかしら?

 

「うわっ……きっしょ」

 

 何、この地獄みたいな空気……というかのじゃ! とか言わないのね。これが素なのかしら? デュラさんに視線を動かしてみると、

 

「さて、我は来年のおせちについて少し勉強でもしようか」

 

 あ、逃げた。ワタツミちゃんも「金糸雀おねーちゃん、友達のみんながマックにいるから行ってくるのれすぅ!」

 

 まぁ、いいわ。私がこのラグナロクのいく末を見届ける事にしようかしら、「金糸雀ちゃん、お酒!」とややキレ気味にニケ様が言うので私はマデイラワインをストレートで差し出す。


「女神に“きっしょ“とはなんですか?」

「勝利の神はわしなのじゃ、それ以外には異論は認めん」

「まぁ! スポーツブランドにもなっている私を差し置いて、恥を知りなさい!」

 

 めちゃくちゃナイキを今日は推してくるわね。まぁ、確かに毘沙門天なんてスポーツ用品は聞いた事ないけどさ。

 

「毘沙門天ははるか宇宙にも響き渡るビックネームじゃ。頭が高いわ!」

 

 凄い嘘松出たけど、ニケ様は……

 

「いえいえ、女神ニケと言えば、旧支配者達もいまだに信仰している女神ですから! 聞いた事ありませんよ? びしゃなんとかさん!」

 

 ニケ様もお酒の勢いで適当な事言い始めたわね。でも面白いからこのままにしておこうかしら、トニックウォーターとソーダ水を使ったマデイラスプラッシュを作って飲んでいると、

 

「なんですか金糸雀ちゃん! 自分一人だけ美味しそうなのを飲んで!」

「そうじゃぞ! 金糸雀、わしにも!」

 

 勝利の女神(笑)と勝利の神(笑)がついに私に絡んできたわね。そこまで言うなら人間とどちらが勝利により近い所にいるか、わからせてあげようかしら?

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

 かつて、このマデイラワインを飲んだ有名な劇作家、シェイクスピアはこう表現したわ。“命と引き換えにしてもいい“だなんてね。それだけ飲みやすく酔いやすいお酒。私はニキタという本来はパイナップルジュース、バニラアイス、白ワイン、ビールを合わせたカクテルを、パイナップルワイン、ラムレーズンアイス、マデイラワイン、度数14%のロシアビールで作った。度数がオーバーキルしているニキタを二人に作ってあげた。

 

「はいどうぞ!」

「金糸雀ちゃん! 美味しい!!」

「これわぁ、美味いのおぉ!」

 

 三杯も飲ませれば、いい夢見られるでしょう? どっちが勝利を冠した神様かとかどうでもいいのよ。私は二人を酔いつぶす為に使った材料を見て、片付けをする事にため息をついたわ。

 

「勝利って虚しいわね」

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