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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
女子大生と居候達(勇者、デュラハン、魔王の娘)と異世界JK留学編と
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第165話 ガストと牛蒡と牛肉のしぐれ煮とひやおろしと

「金糸雀お姉ちゃん」

「どしたのワタツミちゃん?」

 

 今日はいろはさんがミカンちゃとデュラさんを連れてコストコに買い物に行っちゃったから、私たちは留守番組で、ワタツミちゃんと二人っきり。さっきまで可愛いポーズで自撮りとかしてたワタツミちゃんが、私にこう質問してきたわ。

 

「ステーションバーってやばくないれすかぁ?」

 

 また古いネタを持ち出してきたわねぇ。一時期、瞬間風速だけは伊勢湾台風クラスのパワーワード。ステーションバー。要するに駅の片隅でお酒を飲んでいる落伍者に片足を突っ込んだ人たちね。突然そんな話をワタツミちゃんがするという事はそういう人を見たんでしょうね。


「まぁ、ヤバいわね。関わらない方がいいわよ」

「学校のぉ、男子達がぁ、やってましたぁ」

 

 男子あるあるね。それにしてもいい機会なので一度、私は聞いてみる事にしたわ。

 

「ワタツミちゃんって女の子のお友達はいないの?」

「いなくないれすよぉ。みんな友達れすぅ」

 

 これはあれね。ワタツミちゃんだけがそう思ってるパターンかしら? これ以上問い詰めると私の性格に難ありみたいなので、大人な金糸雀さんはこのあたりでお話し切りあげるわ。

 

「もうお昼過ぎね。なんか食べよっか? 何か食べたい物ある?」

「実はれすねぇ! わらし、気になってる食べ物があるんれすよぉ」

「なんか、ヤヴァイ難易度の物じゃないければいいけど」

 

 ふっふっふと笑うワタツミちゃん、そう。こういうところね。そして人差し指を出す。小動物のような行動が男子からすればたまらないんでしょうね。

 

「牛蒡と牛肉のしぐれ煮れすぅ。この前ぇ、デュラさんのぉ、お弁当をぉ忘れた時にぃ、食堂でぇ、定食をぉ、食べた時にぃ、はまりましたぁ」

「あー、美味しいわよねぇ。それくらいなら私でも作れるから、ちょっと待っててね」

 

 豚汁用のごぼうを拝借してささがきにして酢の中に、生姜を千切りに牛肉を炒めて、牛蒡、紹興酒、すき焼きの割下を入れて炒めて完成ね。

 お酒はこれからくる秋本番に備えて、ひやおろし!

 

 ガチャ。

 

「た、助けてぇ!」

 

 穏やかじゃない、助けを求める声、私が玄関に慌てて見にいくと、そこには生気を感じられないな真っ白い肌、それなのに艶々の長い紫がかった長い髪、そして何かに怯える表情がこれまたたまらなくいい美女……いえ、多分人ならざる何かね。

 というか……けしからん身体付きでおへそ見えてるその人物は信じられない事にワタツミちゃんと同じ学校の制服を着ているわ。

 

「あれぇ? ガッちゃんれすかぁ?」

「あ! ワッちゃん? なんでここに? そっか、ここがホームステイ先なんだ!」

「そうれすぅ! わらしの保護者のぉ、金糸雀お姉ちゃんれーす!」

「初めまして、ガストです。人間の世界に紛れて生活するのに学校に入ってワッちゃんとは仲良くさせてもらってます。男の子の友達は多いんですが、女の子の友達はワッちゃんだけで……人間じゃない私ってやっぱり差別されてるのかな」

 

 なんだか釈然としない紹介を受けたわね。うん、貴女もナチュラルに猛毒ね。女子の世界では異端を良しとしない傾向が割と強いのよ。ワタツミちゃんが学校で女子の友達が限りなく0だということを知ったわ。

 

「この部屋の家主の犬神金糸雀です。よろしくね! それにしても、どうしたの? 助けて! って」

 

 私の問いかけにガストさんは再び怯えたような表情を見せて、ゆっくりと話してくれたわ。

 

「家に帰ろうとしたんです。それで電車に乗るのに、駅にいくと、自動販売機の隣に並び、風景に溶け込んだハイエルフが真っ昼間からお酒の缶をハンカチで隠して飲んでたんです」

「ステーションバーれすぅ! どうしてそんなところに野性のハイエルフぅがぁ?」

 

 もう、野性のハイエルフなんて絶対あの人じゃない……

 

「私と目が合うと、こんな人間が大勢いるところに紛れていてもお前がグールだってことはお見通しだと言われて」

 

 ガストさんってグールなの? ちょちょいと調べていると、同義語みたいね。へぇ、また一つ無駄知識が増えたわ。それにしてもセラさん、

 

「一応、あの人凄い人みたいだから、魔法とかで襲われたの?」

「いえ、ハイボールを飲みたいから、500円、いや300円でいいから貸してくないか? と、私のお尻を触りながら耳元で、中々可愛いグールだなとか言ってきて怖くて」

 

 いや、ほんと怖いわね。ヤバい酔い方する人だけど、しかも学生にたかってるじゃない。

 

「それは怖かったわね。とりあえず私がいるからここなら安心よ。とりあえずいま、ご飯作ったから食べていきなさいよ。あー、でもガストさんって、食べ物」

 

 東京グールとかでは普通の食事を食べてもまずい! ってなってるけど、

 

「あー、大丈夫です。最近の若いグールは人肉なんて食べないんですよ! なんかダサいじゃないですか!」

 

 その感覚、私には一生わからないけど、そういう物なのね。牛蒡と牛肉のしぐれ煮、そしてひやおろしを用意すると、

 

「ガストさんってお酒は?」

「大大、大好きです!」

 

 いける口と! それにしても今の言い方、女子に嫌われそう。むしろ、人ならざるガストさんやワタツミちゃんは男子限定とはいえ、相手を夢中にさせるそのスキルというべきか、カリスマな部分は本気で尊敬するわね。

 

「沢の鶴のひやおろし。今年も冬まで楽しませてもらいましょうか? それじゃあお二人さんも一献」

 

 ぐい呑みにトクトクとひやおろしを注ぎ、私はそれを掲げて、

 

「じゃあ、ワタツミちゃんと同級生のガストさんに乾杯!」

「「けーぴー」」

 

 あぁ、一瞬イラっとしたけど、ひやおろしが美味しくて良かったわ。

 

「うん、今年のもいい味ね」

「はぁあ、甘くて美味しいれすぅ」

「ほんとだ! おーいーしー!」

 

 飲める口ね! まぁ、私は誰かに迷惑をかけなくて、こうして楽しくお酒を飲める相手ならどんな人でも楽しく飲めるけどね。二人におかわりを注いで、牛蒡と牛肉のしぐれ煮を用意するわ。

 

「本日のおつまみよ! 口に合うか少し心配だけど、どうぞ」

 

 二人は綺麗なお箸の持ち方で、実食!

 流石に大量に作られる食堂のしぐれ煮より美味しいという自信はないけど、そこそこ美味しいわね。

 

「金糸雀お姉ちゃんのこれ、美味しいれすぅ! 食堂のより断然れすぅ」

「ほんとだ! 金糸雀さんのしぐれ煮、めちゃくちゃ美味しいです。いいなぁ、ワッちゃんは美人で料理も上手なお姉ちゃんがいて」

 

 美人に美人って言われるの、割と何かが減るからやめて欲しいけど、まぁいいでしょう。私もお一つ、うん。まぁこんな物ね。とある料亭の味を再現しようとしてるんだけど、あと一歩足りない感じかしら。

 

「金糸雀さん、お酒……いいですか?」

「えー、ガストさん、飲みますねぇ! 全然、この一升瓶無くなってもまだまだあるから遠慮せずに、でも飲みすぎないように楽しんでくださいね!」

 

 よくよく考えたら可愛い女の子二人に囲まれて飲んでると思うと悪くないわね。私も昔はJKだったのよね。学校でも一番人気の男子の先輩が私を遊びに誘ってくれた事があったんだけど、私をダシにこれまた学校で一番人気の私の親友にお近づきになりたかっただけ事件を思い出して殺意が湧いてきたわ。

 

「金糸雀お姉ちゃんわぁ、どんなJKだったんれすかぁ?」

「あー、私も知りたいです!」

 

 えぇ、恥ずかしいわねぇ。スマホになんか写真あったかしら、私はクイっとぐい呑みのお酒を飲み干して、お代わりを、短時間で味をつける為に酢につけてた牛蒡がいい味してるわぁ。

 

「ほんと普通のJKだったよー、これとか……これとかかなぁ」

「「!!!!!!」」


 二人が私の写真を見て驚愕してるので、あれ……女子だけでカラオケ行った写真を見せたハズなのに……いやぁあああああ!

 そのカラオケボックスの部屋にJKだけだからとナンパ目的で乱入してきたどこぞの頭の悪そうな男子達を私がボコボコにしてそいつらに腰掛けて歌っている姿だったわ。当時の私、耳に何個ピアスしてるのよ。髪の毛も素人が染めた金髪で……痛い子がそこに写ってたわ。というか私だけど。

 

「まぁ、そんなことより飲みましょ! 牛肉も味が染みてて美味しいわよ! あー、日本酒と牛肉ってどうしてこんなに合うのかしら」

「そ、そうれすね」

「お、おいしー」

 

 いやぁああああ。

 どちゃくそ、引かれてるわ。そんな時、ガチャリと扉が開かれる。そして、第一声。

 

「かなりあー、すまん。水かビールくれないかぁ?」

 

 私は呆れてその人物が来るのを待っていたら、その人物を見た瞬間、ガストさんが、

 

「きゃああああああ! ステーションバーの怪物ぅ!」

 

 と叫ぶのでやっぱり野性のエルフはセラさんだったのね。セラさんはひっくとしゃっくりをしながらじーっとガストさんを見て、

 

「んん? んん? 私の目は誤魔化せんぞ? グールか、全くけしからん身体をして鼻の下を伸ばした男でも喰らうつもりか? あぁ?」

「そ、そんな事しません!」

「だったら、どうして貴様はそんなどすけべな身体をしてるんだぁ? えぇ?」

 

 史上最悪クラスのウザ絡みね。オッサンだろうとハイエルフだろうと最近の世間は許してくれない発言よ!

 もう泣きそうなガストさんの為に私はセラさんに、

 

「セラさん、やめてください! 可哀想でしょ! はい、お水」

「かなりあよ。だがな? 連中は」


 はぁ、私はセラさんの顔を覗き込んで、

 

「やめろっつてんだろ? このクソ耳なが。テメェの耳は作りもんか? あ?」

「い、犬神さん、すみません。この通りですから、出て行けだけはお許しを、グールさん、誠に失礼がすぎた」

 

 私が怒ったら、セラさん、酔ってるから兄貴と間違えたっぽくてしおらしくなったわね。土下座してガストさんが許してくれるまで地面とキスしてたわ。

 

「じゃあ、飲み直そっか?」

 

 そう言った笑顔の私に対して、なぜかワタツミちゃんとガストさんはその日、全く目を合わせてくれなかったわ。

 なんか、ミカンちゃんとデュラさん早く帰ってきて欲しいわ。

 というかもう今日はニケ様でもいいから来て欲しいんだけど、こういう時には来ないのよね。使えねー女神様ね。

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