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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
異世界の宅飲み編
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第139話 女神アテナとかき氷とタランチュラアズールと

「異世界の問題点はエアコンがない事ね」

「金糸雀ちゃん、私も全く同じ事を考えています! 今度、私にエアコンをお布施してくださいね」

「やだなー! ニケ様、そんな高級品お布施するわけないじゃないですか、プリンちゃんの所に戻しますよ。もぐもぐ」

「……金糸雀ちゃん、女神を脅すのは良くないですよ? もぐもぐ」

 

 私たちは西のジェノスザインからノビスの街へと戻っている最中、若い女の子達が長蛇の列を作っているお店を見つけたの。異世界の人気スイーツといったところかしら?

 

「あれは何を売ってるんでしょうね?」

「氷を売ってるんですよ。魔法で作り出す物より長持ちする氷ですよ! ちなみにその氷を運ぶ為の氷の容器は魔法で作られているんです」

 

 なんかこう努力の矛先が間違っているような気がするけど、氷を削って甘い果物の蜜をかけて食べるかき氷的な物を同時に販売してるのね。確かにこう暑いと氷が食べたくなるわね。

 そしてかき氷といえばお酒との相性も抜群よね。梅酒はもちろん、ワイン、ウィスキー、かの有名なルパン三世はビールかけて食べてたわね。

 

 あぁ、ダメだ。周りの人が食べているのを見ると食べたくなるわ。私は路銀を確認すると、

 

「ニケ様、かき氷食べますか?」

「そうですね。食べましょう! ここは私に任せておけばタダでくれますよ」

「やめましょう……なんか私の品位まで落ちそうですから、私が奢りますよ」

 

 私は異世界の小銭を持って並んでいると私の前で並んでいるすっぽりと頭からローブを被った人が、

 

「あれ、足りない……確かこのあたりに……あれ……」

 

 お金が足りないんですね……仕方ない、

 

「すみません! この人の分も合わせてかき氷3つお願いします」

「はいよ」

 

 という事で私はローブの人にもかき氷を渡してあげる。いざお金がなぜか足りなくなるとテンパるのよね。私はおじさんから受け取ったかき氷をローブの人に渡してあげる。

 

「はい、どうぞ」

「ごめんなさい。お金はあとで払います」

「いいですいいです。困った時はお互い様じゃないですか」

 

 私がそういった時、ローブの人は顔を見せてくれたわ。薄い桃色の長い髪をした……事ある事に攫わられそうな美人。

 

「この人々の心が汚れ、気遣い心遣いが失われつつある世界にて、君はとても美しい心を持っているね。私は女神アテナ。女神達を束ねる。女神の最高神さ」

 

 気がつくと、私は見知らぬ宮殿のような所で、これまた重そうな杖を持っているアテナ様と、私の後ろでローブを頭からすっぽりかぶっているニケ様の姿。

 

「女神様でしたか、通りでお綺麗で、でもなんであんな場所で?」

「うん。最近、女神の名を語り、無銭飲食している者がいると、各国の王や土地神達にクレームを聞いて地上世界をパトロールしていたんだ」

 

 多分、それ女神の名を語っている本物の女神様だと私は知っているけど、笑顔で何も答えないでおきましょう。

 

「この最高女神アテナに優しさと慈しみの心を見せた君」

「犬神金糸雀です。なんかこう不慮の事態でこの世界に来てしまった令和時代の日本人です」

「なんと! あのニートが異常発生し重い重税を課せられる事が横行する地獄のような世界で生きてきたわけか、どうりで顔つきが違う」

 

 神様達の中で私達の世界どういう認識になってるのかしら……まぁ、あれね。日本国民が餓死してたりするのに海外へのばら撒き30兆円は流石に私でも笑えなかったわ。選挙へ行こう! ってやつね。

 というかこれ帰れるんじゃない?

 

 

「アテナ様、元の世界に戻してくれたりできませんか?」

「君は、あの地獄に自ら帰ろうというのかい?」

「まぁ、生まれ故郷ですし」

「分かった。その前に少しお礼と言ってはなんだが、このかき氷を私の女神神殿で食べていくといい……シロップを貰うのを忘れてしまった……何かミードでも」

「それだったらいいのがありますよ! ニケ様、この前間違って持ってきたタランチュラアズール出してください」

「ニケ? まさか、女神の中で最も高貴でもっとも残酷なあのニケかい? 悪業と曲がった事と酒に溺れる人間が大嫌いなあの堅物。ふふっ、久しぶりだ。その顔をこのアテナに見せておくれ」

 

 ニケ様ってそんな感じなんですか? てゆーか、女神様の中でどういう立ち位置なの? というかどの口が酒に溺れる人間が嫌いとか言えるのかしら。

 

「は、はい」

 

 フードをとるとニケ様は、普段とは違ってキリリとした表情をしてるわね。これよそ行きのニケ様の顔なのかしら……

 

「おぉ、これは酒に溺れた某王国を天の裁きとして滅ぼしたあのニケで間違いないな!」

「はい、アテナ様」

「しかし、金糸雀と共に何をしている? 群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、女神の持つ加護と叩き上げのユニークスキルだけがお前の武器だったね。勝利の女神、ニケ。またの名を、殺戮の女神」

「金糸雀ちゃ……私の加護を与えている金糸雀です」

「ほぉ、ニケがそこまで目をかけるとは聖女見習いか?」

 

 そんな風にニケ様、呼ばれてるんですか? この人、お酒を前にすると絶対失敗しますよ!

 

「しかし、その青い液体の入ったボトルはなんだ? ポーションか」

「こ、これは……かき氷のシロップです」

 

 違うでしょ。それタランチュラアズール。テキーラベースのリキュールですよ! 美しい青い色からパリピ酒と言われている今の時期にもってこいのお酒ですよ!

 

「おぉ! でかしたよニケ、かき氷のシロップをもらい忘れてな。それを早速かけて食べようか?」

「はい、おかけしますアテナ様」

「すまないね? ならお返しに」

 

 私はニケ様を見ると、俯いて物凄いきょどってますな。それなりに自分の体裁を意識してるんでしょうね。しゃーない。少しだけ力を貸してあげますか、

 

「アテナ様、ニケ様はそのお酒、苦手なんで何か蜂蜜とかあればかけてあげてください」

「お酒?」

「あーいえ、私のところではシロップの事をオサーケーと言うんです、方言です」

「そうか、ならニケは蜂蜜だね? なら金糸雀や、私が入れてあげよう」

「ありがとうございます」

 

 私たちはかくしてタランチュラアズールをブルーハワイシロップの代わりにかけたかき氷と、ニケ様用の蜂蜜のかかったかき氷をカチンと合わせる。

 

「今日は素晴らしい日だ。孤独故に私が目をかけている女神ニケとそのニケに目をかけられている金糸雀との出会に、乾杯だね!」

「乾杯!」

「乾杯」

 

 いやぁ、タランチュラアズールのかかったかき氷の背徳感半端ないわね。これ凄いわ。

 

「おぉ! これは実に美味しいね。食べたことのないフレーバーだよ。蜂蜜はどうだい? ニケ」

「美味しいです」


 借りてきた猫みたいになったニケ様、なんか面白いわね。カキ氷食べながらしばらく眺めていようかしら、

 

「ノビスのギルド酒場で無銭飲食、北の商王のフードコートで無銭飲食、西の神国ジェノスザインであの邪智暴虐な聖女王とドンぱちやらかした何者か、ニケなら殺してしまうかもしれないな! 奴は必ず私が見つけて是正しよう」

 

 その犯人が貴女が目をかけているニケ様なんですけどね。それにしてもアテナ様、お酒強いわね。かき氷にかけてても十五度くらいはあるのに、ニケ様とは全然違うわね。さすがは最高神。

 

「うーん、このシロップ、今までに味わった事がないね。おかわりをいただけるかな? 金糸雀」

「あ、はい」

「金糸雀の分も作ってあげよう」

 

 指をパチンと鳴らすとアテナ様の手から粉雪みたいな氷が降り注ぐ。そこにタランチュラアズールを注いであげるととても愛らしい表情でスプーンを手に取って、ほんと女神ね。方や、蜂蜜味のかき氷を食べているニケ様は物凄く物足りなさそう。

 

 我慢ですよ我慢、お酒飲んであのだらしない姿を見せない為に私が協力してあげてるんですから……

 

「これは実に美味しい。これ酒だね」

「うっ……お酒です。テキーラってお酒です」

「そうか、だが嘘はよくないな」

「はい、ごめんなさい」

 

 もうこれ騙すの無理じゃない? アテナ様はグラスに氷を注いで、そこにタランチュラアズールを注いで普通にオンザロックで飲み始めたけど、

 

「金糸雀よ。ニケは酒を飲み自分を失う者を嫌う。飲むなとは言わないが気をつけるんだよ?」

「はい」

 

 もうなんだろう、面白くなってきたんだけど、ニケ様はちょいちょい自分のやらかした事をアテナ様に聞かされながら蜂蜜味のカキ氷を食べ終わると、ゆっくりと、アテナ様の前に立って、

 

「どうしたニケ、お前もお代わりかい?」

 

 私は人生において、それはそれは美しい姿勢での土下座を見たのは初めてでした。ニケ様はもう逃げられまいと思ったのか、それとも一応女神としての良心の呵責からか、

 

「アテナ様、金糸雀ちゃんを導くにあたって、おそらく各方面にご迷惑をおかけしました」

 

 とか、若干私のせいにして謝罪を始めたわね。そんな告白を聞いて、アテナ様はボトルごとタランチュラアズールをゴキュゴキュと飲み始めたわ。これ、私元の世界に帰れるのかしら……

 

「うん、よく正直に話してくれたね?」

 

 あら、これ許される奴じゃないかしら。よかったわね。ニケ様、

 

「金糸雀、君には迷惑をかけてようだ。元の世界、そして家に帰らせてあげよう。この青いお酒は実に美味しかった」

「そりゃ良かったです。ところでニケ様は?」

「ニケは、女神裁判を受けて罪を償わせる」

 

 絶望的な表情をするニケ様、まぁ、ついに来るべき時が来たと言う感じかしら? 

 

「あぁ、じゃあきつく反省するようにニケ様には伝えておいてください」

「うん、わかったよ! じゃあね」

 

 アテナ様が指差す方向、そこには扉、半開きだけど私の部屋ね。ニケ様がお酒断ちできる事を祈って、

 

「あっ!」

「ニケ、何をする!」

 

 ほんと何してるんですか! ニケ様は私の手を引いて、私の部屋に続く扉を開いたわ。そこではタコパをしているミカンちゃん、デュラさん、そしてアズリたんちゃんの姿。

 久しぶりの再会にみんなが感動する前に、ニケ様が、

 

「女神達を金糸雀ちゃんが敵に回してしまいました。みなさん匿ってください」

 

 ほらややこしくなった。まぁいいけど、久しぶりの我が家なんでビールでも飲もっかな。

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