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【38万PV感謝】宅飲みすると必ず異世界の人が相席してくる件  作者: アヌビス兄さん
異世界の宅飲み編
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第131話 魔王軍大幹部・暴獣王ディダロスとシロック(ブドウのウォッカ)とシーシャと

 ノビスの街にやってきて初めての朝、ミカンちゃん達は大丈夫かしら?


“昨日デュラハンが冷しゃぶを作っていましたよ! あれは美味しかったです”


 ず、ずるい。私もデュラさんの冷しゃぶ食べたい! まぁ、みんな普通にやれてそうで良かったわ。デュラさんがいるので食事と掃除は問題ないと思うからいいんだけど、ニケ様いい加減私を元の世界に戻してくださいよ


“それは、金糸雀ちゃん。できない相談なのです”


 そもそもニケ様が私をここに連れてきたんじゃないですか、


「かなりあ、食事が出来たぞ?」

「あっ、はーい!」


 もう完全に私がミカンちゃんやデュラさん状態ね。ボソボソの硬いパンが出てくるかと思ったんだけど、意外とこの世界のパン柔らかいのよね。凄く日本に近いわ。海外のパンも飽きがこないけど、滅茶苦茶美味しい! って思えるパンがあんまりないからこのパンは間違いなく日本からの逆輸入とみていいでしょう。それになんの鳥かは分からない大きな目玉焼きとぐるぐる巻いてあるソーセージ。味付けはまだまだ発展途上だけど、普通に美味しいわね。


「ゆっくり食べて、今日は町の見学でもすればいい。お前のような不思議な旅人との出会いも初めてではないからな」


 意外と異世界に来てるのよね。あー、そういえば前に新幹線で出会った職業魔法使いの人も仕事で異世界通ってたわよね。こうなると、あの人に会えれば家に帰れるんじゃないかしら。


“金糸雀ちゃん、そういうズルは女神的にはいけないと思いますよ?”


 どの口が……


 しかたがないから、今日はこのノビスの街とやらを探索しましょうか、お金はそういえば、私の部屋にあったわよね。ニケ様、お金を持ってきてもらっていいですか?


“金糸雀ちゃん、金糸雀ちゃんの特殊能力はお酒を女神の奇跡で取り出せる事ですよ”


 いや、ニケ様がもってきてくれるだけじゃないですか……じゃあいいですよ。その代わりに棚の一番上にあるウォッカのシロックもってきてください。それでカクテル作って売ってお金にします。経営戦略の実地訓練とでも思いましょうか、


 私が注文すると、ガラガラと馬車らしき物からニケ様がやってきてその手にはブドウで作ったウォッカ、シロックが握られているわ。ブドウのスピリッツといえば、ブランデーが有名だけど、ウォッカも結構あるのよね。

 さて、どうしようかしら? きょろきょろとあたりを見渡してみると……


「ベコポンジュースいりませんか?」


 レモネードスタンドかしら?(アメリカで子供がレモネード売ってお小遣い稼ぎをするアレね)


 それにしても全然売れてないわね。ざっと見て1ガロンくらいはありそうなタンクでベコポンジュースというのを売ってるけど、


「由緒正しい柑橘類農家のベコポンジュースですよー!」


 ミカンちゃんの家の農家で作られた物じゃない! これも何かの縁ね。私はその女の子の元に行くと、


「ベコポンジュース売れないの?」

「うん」

「もし一杯飲ませてくれたら私売るの手伝っちゃうけどどう?」


 女の子は少し考えると私にコップ一杯分のベコポンジュースを入れてくれた。思いの外すっきりしてて美味しいわね。私はベコポンジュースにシロックを混ぜて、即席スクリュードライバーを作る。


「氷があればもっといいんだけどね」

「私、氷作れるよ! クリエイトアイス!」


 どどーんとデュラさんみたいに魔法で氷を作っちゃったわ。魔法って凄いわね。じゃあこれがあれば、


「みなさーん! ほらほら、安くて美味しいお酒が今なら……このジュースいくらで売ってるの?」

「1ガルドだよ」

「お金の価格が分からないから3倍くらいにしておきましょうか? 今なら3ガルドポッキリ、持ってけシーフ!」


 異世界でもお酒は大人気だからその3ガルドが安いかどうかはこの人の列を見て理解したわ。激安ね。一度飲んだ人はまた並んで二杯目を飲もうとしているわね。私はここで女の子に交渉。


「一杯売れるごとに、私に1ガルドもらえないかしら? 貴女には2ガルド入ってくるんだけど」

「うん、いいよ!」


 さて、これで当分のお小遣いは作れそうだなと思った時、カンカンカンと鐘が鳴る。


『特級警戒! SSSランク事変勃発。南のザナルガラン、魔王三柱の暴獣王ディダロス襲来。冒険者の方は集まってください! 繰り返します!』


 なんだか騒がしい事になったわね。私はそれでも商売をしようとしていたら「ネムちゃん、こんな所にいた! 逃げるわよ」と女の子の母親がそう言って連れて行ってしまった。何か大変な事が起きているみたいだけど……あー来たわね。デッカいサイズのライオンか何かのモンスター。ズシンズシンとやってくるとので、私はベコポンジュースとシロックを見せて、


「一杯どうかしら? アズリたんちゃんやデュラさんの知り合い?」


 とお酒を誘ってみた。すると私をまじまじとみて、腰を下ろす。


「我が名は暴獣王ディダロス。殿下とデュラハンを知っているのか?」

「私は犬神金糸雀です。わけあってこの世界にいますが、本来は二人とも私の家に下宿しているから」


 とそんな身の上話をして私はキョロキョロとあたりを見渡して、食事用の器に並々とスクリュードライバーを作るとディダロスさんの前に、


「何もおつまみないですけど」


 と言った私の前でディダロスさんは何かを何もない所から取り出した。それはフラスコ容器のような物が二本。


「これは……」

「水タバコ。吸った事はあるか? いい酒の女房になる」


 私は愛煙家じゃない。喫煙趣味があるわけでもない、だけどオツマミとしての葉巻やシーシャを嗜む事はごく稀にある。大抵はリゾート地とかなんだけどね。


「いただきますよう」

「ふっ、面白い人間だ」


 しかしディダロスさん手際いいわね。シーシャのシロップ漬けフレーバーを入れて水をやっぱり「クリエイトウォータ!」と魔法で呼び出してブクブクと熱する。準備を終えると私とディダロスさんは向かい合って座る。


「こうなるとお酒はシロックのストレートでもいいかもですね」


 コップにシロックのストレートを注いで、それもディダロスさんに渡す。代わりにディダロスさんは私の前にシーシャーのフラスコを用意。


「じゃあ! 異世界二日目とアズリたんちゃん達の知り合いのディダロスさんに!」

「殿下と我が配下デュラハンの友である金糸雀殿に」


かんぱーい!  まずは御神酒としてのシロックを一舐め、そしてシーシャを胸いっぱい吸って……煙をもわぁああと吐き出す。


「あぁ、このシーシャおいし」

「魔王様と天界を襲った時に仕入れた物だ。連中、こんな物を隠しておって」


 ぞぉおおおとシーシャを吸って、凄い量の煙を吐くディダロスさん、そしてシロックを一口。


「美味い! 美味すぎる! なんだこの酒は……」


 ドンとシロックを置いて私はウィンク。


「いくらでもありますからどんどんやりましょう!」


 スゥとシーシャを吸って、煙をすぐに吐く私。紙タバコよりは体に悪くないけど一応タバコだからそんなしょっちゅうはシーガーバーもシーシャバーも行かない方がいいでしょうね。特にお酒飲みは……

 はぁあああ、おいし。


「しかし、いい飲みっぷり、そして吸いっぷりだ。気に入ったぞ金糸雀殿」

「えぇ、そうですかぁ? ありがとうございますぅ。グラス空いてますよ」


 そう言ってシロックを注ぐ。ディダロスさんは嬉しそうに口の端を緩めてそれをゴクリと、一気にいかない、巨体なのに美味しいお酒の飲み方熟知してるわね。


 まったりとしたゆったりとした時間が流れる。シーシャーの煙を時折吸って、吐いて、シロックを引っ掛ける。そういえば最近、若者にシーシャ流行ってるのよね。推しの色のフレーバーを吸うだとかで……

 ニケ様の反応がないのは、多分私の部屋で呑み食い散らかして説教タイムってところかしら?


「ところでディダロスさんは何でこんな普通の街に来たんですか? ディダロスってボスとかでしょ? これ負けイベントか何かなんですか?」


 シロックの入ったグラスを指で摘まむように持って、ディダロスさんは遠い目をする。時折シーシゃを吸って。ゆっくりと話し出したわ。


「魔王様がいなくなり、殿下であるアズリタン様まで失踪。魔王軍の中では血の気の多い者もいる。人間が魔王様達をどうにかしたという噂が絶えず、全面戦争をしようという者も我と同じ三柱の中にもいてな? 原因を我、自ら突き止める為に殿下や魔王様が足を運んだ人間の街や村にこうしてでばったわけだ」


  め、めいわくー! だって身の丈何メートルもあるモンスターが突然やってきたら大パニックよ。私は空になる度にシロックをディダロスさんのコップに注いでて足らなくなったから、ニケ様、追加のシロックもってきてください。


“金糸雀ちゃん! 女神をパシリにするとはどういう事ですか!”


 いやいや、貴女が……もういいですから早く持ってきてください。そう言ってもうだうだニケ様は酔った状態で訳の分からない事ばかり言って話にならない。私がやむなしシーシャに口をつけていると、ディダロスさんが立ち上がったわ。よくみると、周囲には冒険者達。だけどディダロスさんが怖くて近づけないと言ったところかしら、


「ごちそうになった。金糸雀殿、嫁にこぬか? こんな楽しい酒を飲んだのははじめてだ」

「えぇ、えぇええ!」


 お父さん、お母さん、プロポーズされちゃいました。モンスターですけど。まぁ、でも私はこの世界から元の世界に戻るから、笑顔を返すと、


「殿下も無事なら魔王様も無事だろう。魔王軍には今、動く事はなしと伝える事にしよう。さらばだ。また飲みたいものだな」


 ざっざっざと足音を響かせて、ディダロスさんは冒険者達の事を見もせずに去っていく。


 そしてディダロスさんが去って、お決まりの……


「金糸雀ちゃん! 女神がきましたよ! 褒めてください!」


 そう言っていいちこと、トリスクラシックを持っているニケ様。呆れ気味の私とは違い、ノビスの街の人たちの反応は違った。


「ニケ様が魔王軍大幹部をおいかえしたぞ! 凄い!」

「毎回みかじめ料みたいに飲み食いしていくだけの女神じゃなかったんだ!」


 ニケ様ばんざーい! とニケ様の周りにあつまってニケ様をたたえるノビスの街のみんな、今までにない展開ね。でもお説教モードのニケ様は……


「みなさん、私がいれば万事なんでも解決です!」


 とニッコり微笑んでありがたい説法の時間が始まりました。

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