第123話 ポンコツ魔法使いとお焼きとノンアル晩酌レモンサワーの焼酎割りと
最近、思うんですよね。私達、ちょっと飲み過ぎじゃないかなって……という事で今日はノンアル晩酌レモンサワーという美味しいのか飲んだ事のない飲み物を用意してみました。アズリたんちゃんはハチミツレモンね。
本日のおつまみ兼夕食はお焼きです。長野県の郷土料理にして居酒屋で稀にある食べ物ね。という事で野沢菜も用意してみました。
ガチャり……早速やってきたわね。アズリたんちゃんがいつも通りのお出迎え、
ブォオオオオオ! 白い煙? スモーク? そんな物と共に神々しい光と共にその人はやってきたわ。どこかの女神様よりも豪華な登場に私達は期待せざるをえなかったわ。
「ここは一体……」
「クハハハハ! 余は大魔王アズリタンである! 貴様は何者か!」
「わ、私はアリアンヌ・シリギリス。魔法使いです」
その名前を名乗った時、普段殆ど人に興味を示さないミカンちゃんが、飛び起きた。
そして同時にデュラさんも、
「「超魔導士ドロテアの弟子!」」
あぁ、ドロテアさん…… ※どうでもいいけど57話登場ね。
私の部屋に来た時ご都合的に地球の未曾有の危機を救った異世界で魔法を作った人、もう神様みたいな扱いを受けている人ね。
そのドロテアさんの弟子がマリアンヌさんということね。確かにそう言われると凄い神々しい登場も頷けるわ!
「超魔導士の弟子、余と魔法の力比べをせよ! クハハハハハ!」
アズリたんちゃんに連れられてやってきたマリアンヌさんは、巨大な魔法使いの帽子、巨大な魔法の杖、高価な宝石のついたピアス、そして高価そうなローブに身を包んでいるわね。
「す、全てが神話級の装備であるな」
「今夏最新モードもびっくりなり」
装備の事をモードって言っちゃうあたりミカンちゃんは完全に私の世界に染まってるわね。そんな凄い魔法使いのマリアンヌさんにミカンちゃんが尋ねた。
「悪神の洪水を止めたり!」
「うむ、彗星の暴走を止めたと聞いておるな!」
「クハハハハ! アズリエルと精霊王ティタンの戦いに割り込んだと伺っているがいかに?」
うわ、凄い人だ!
「ま、まぁ座ってください。私は犬神金糸雀、この家の家主です。今から夕食なんで一緒にどうですか? みんなも私もマリアンヌさんのお話聞きたいですし」
「え、えぇ……」
あんまり乗り気じゃないわね。まぁ、聞かれたくない事もあるし、お焼きが焼けたので、お皿に盛って、ノンアル酒場とええっと、あったあった。パックの焼酎すご麦と、アズリたんちゃんのはちみつレモン。
「今日はノンアル酒場のノンアル晩酌レモンサワー。普段お酒飲みすぎてるから、これに麦焼酎を入れて飲みましょう」
「え、意味あるなり?」
「ぬ?」
ミカンちゃんとデュラさんが不思議そうな顔をしているけど、何か私おかしい事言ったかしら?
トクトクとジョッキに入れたノンアル晩酌レモンサワーに麦焼酎を適量入れて7%くらいのサワーを作ると、全員に配り。
「ちょーまどーしの弟子に乾杯なのー!」
「「かんぱーい!」」
「クハハハハ! 乾杯である」
「あ……かんぱい」
んぐんぐんぐ、ぷはぁああ! やっぱりノンアルはいいわねぇ。自分でお酒の濃さを変えれるもん。
「完全にお酒なりにけり」
「うむ、たまに金糸雀殿はアレであるな」
なんか二人が少し変だけど、マリアンヌさん飲んでるかしら? 結構グイグイ飲んでるわね。
お焼き持ってきて、
「チーズお焼き、ラー油野沢菜お焼き、野沢菜お焼き、茄子お焼きでーす! 好きな物を食べてくださいね!」
「勇者チーズなり!」
「クハハハハ! 余もチーズである」
「我は茄子を」
「あの、私もチーズを」
やっぱりチーズが人気ね。地味に裏切らないからね。マリアンヌさんも小さく口を開けてパクリとお焼きを食べてますね。そしてぐびぐびとノンアル酒場、麦焼酎割りを飲んで、
「あの……私、超魔導士の弟子とかじゃないんです」
えっ……いきなりのカミングアウト。異世界組の三人はお焼きに齧り付いてマリアンヌさんを見つめ……
「超魔導士ドロテアが、悪神の洪水を止めた所に丁度、私が散歩してまして……出稼ぎに行った所で彗星の暴走が起きて、そこで丁度超魔導士ドロテアがそれを止めてまして、温泉旅行に行った先で魔王アズリエルと精霊王ティタンのカップリングが見れると聞いて、その男の子同士が好きな同士達と観に行った所、超魔導士ドロテアが二人の決闘邪魔してて、アレはほんとムカつきました……で、丁度ドロテアの現れる所に私がいた事で……勝手に私がドロテアの弟子とか言われて、行く先々でこれら杖とかローブとかもらって、自分の工房の道具を宣伝して欲しい的な?」
あぁ……芸能人にブランド着せて人気を出させようとしているアレね。というかまぁまぁとばっちりね。
「ゆ、勇者超がっかりしたり……」
「ううむ……なんというかアレであるな」
「貴様、魔法は使えんのか?」
「私が使える魔法は、さっきの白い煙出せる魔法と、ピカピカ光った光を出せる魔法以外使えませんよ……なんか、すみません。あぁ、この食べ物おいし」
まぁ、私はあんまりがっかりしないわよ。なんでもそうだけどステマって言葉があって……うん、ねぇ……実はあんまり私もこれは言えない理由があるんだけど察してほしいわ。
「マリアンヌさん、飲みましょう!」
私は空になったマリアンヌさんのジョッキにノンアル晩酌をそして半分の量の麦焼酎を入れる。おおよそ12%のノンアルコールサワーの焼酎割りよ。
「いただきますぅ。あぁ! このお漬物美味しいです」
「でしょでしょ! お焼きと一緒に食べてみてください」
ラー油野沢菜お焼きをみんなでパクリ。なんだろうこの安心感。アズリたんちゃんはナイフとフォークで綺麗に切り分けて口に運んでるわね。
「クハハハハ! 野菜がピリ辛でうまい! 金糸雀よ。この飲み物を所望する」
「はいはいー! デュラさんお酌してあげて」
「殿下、どうぞ!」
もっもっも、ゴキュゴキュと私達は食事を楽しんでいると、ガチャガチャと扉を開けて入ってくる……多分女神様。
「みっなさーん! 女神が戻りましたよ! ただいまを言うのでお帰りなさいを言ってください!」
「貴様の家ではあるまい! お邪魔しますの間違いであろ! クハハハハハ!」
アズリたんちゃんの正論。
「まぁ、魔王の娘。なんという口の聞き方ですか! お邪魔します。さぁ、女神にも……ええっと勉強したんです。御神酒をください」
「今日はあのノンアル晩酌ですけど」
そう言って私が缶を差し出すと……
「その麦焼酎はなんですか?」
「これは……そのですねぇ」
あぁ、もうなんでこの女神様はこう目ざといのかなぁ……そんな時、凄い酔っ払ったマリアンヌさんが……あの白いスモーク。そしてピカピカの魔法を使った。
「な、なんですかこの存在感ありありな人間は……」
据わった目でマリアンヌさんは、
「我は超魔導士ドロテアの弟子。マリアンヌ・シリギリスなり」
私達はそんな彼女の一発芸をぼーっと眺めていると……ニケ様は、少し考えると……
「あ、あの超魔導士の……私、少し用を思い出したので今日はその食べ物とその飲み物をもらって帰りますね! 皆さん、名残惜しいと思いますが、またきますね! では」
あせあせとニケ様が去っていったわ。女神とかでも超魔導士ドロテアは危険な存在なのね。まぁ世界滅ぼそうとしているし、神々やら各世界を滅ぼしたとかなんとか言ってたし……
それにしても、ミカンちゃんとデュラさんが羨望の眼差しでマリアンヌさんを見つめているわ。
「伝説に嘘偽りなしなり! クソ女神を追い返したり!」
「うむ、我ら歴史の生き証人であるな! 超魔導士の弟子、ここにありである!」
「クハハハハハ! あの物乞い女神、全て食い物を持って行きよったぞ!」
ほらぁ、なんでニケ様そういう事するのかなぁ……そういうところなんですよ。普通、一個か二個でしょ。
仕方ないなぁ。
「マリアンヌさんの功績を讃えて、日本一高いデリバリ……宅配ピザでも頼もっか?」
「おぉ! おぉ! 勇者、上がるぅ!」
「宅配ピザとはなんだぁ!」
「殿下、大変美味しゅうございますよ!」
「我こそは超魔導士ドロテアの弟子……」
この日、一日私達はマリアンヌさんが帰るまで、ゆるりとした飲み会を過ごしたわ。しばらくたつと酔いが冷めたマリアンヌさんは意味も分からず感謝されミカンちゃんはスマホケースにマリアンヌさんのサインを、デュラさんは水筒にサインをもらって、アズリたんちゃんにマリアンヌさんは魔法使いの帽子を、私にはすんごい大きな魔石のついたピアスをくれて帰っていきます。
でもこんな高価な物いいのかしら? と思ったら……
「あはは、毎日のように各国の武器屋さんや装飾品店さんから身につけてほしいと色々頂きますので……私も勇者様、魔王のお姫様、そしてその従者の大幹部さんからお墨付きをいただいたので、本気で魔法を覚えようと思います! きっと十年後くらいにはファイアーボールを覚えます!」
そう微笑んで去っていく、マリアンヌさん。私は念の為にみんなに聞いてみたわ。
「ファイアーボールってそんなに難しいの?」
「10歳の人間の子供が最初に覚える魔法なりけり」
「ゴブリンマジシャンが生まれた時に使える魔法であるな」
「クハハハハハ! 余はそんなクズ魔法、使った事もなし」
頑張れ! マリアンヌさん!