とある旦那君と転生者奥さんのお話
「お疲れ様でしたーッッ!!」
任務を終えた俺は愛する人の待つ家へ一目散に帰っていく。
「ただいまー!!」
「うん。おかえり、旦那君」
エプロン姿の奥さんが微笑みながら出迎えてくれる。
その姿を見て、俺は思わず涙ぐむ。
「あれ?どうしたの?何かあったの?」
「いや、幸せだなと思ってさ……」
ここに至るまで、本当に長かった……
「あー、はいはい。いつものだね……ちょっとびっくりしちゃったよ。とりあえず手洗いとうがいをきちんとしてこようね?」
「はーい」
洗面所に向かい手を洗いうがいをする
「洗うものはカゴに放り込んどいてね。後、お弁当箱もちゃんと出すんだよ?」
次々と指示が飛んでくる。
「分かってるって」
「明日の用意はここに置いてあるからもうカバンに入れといてね?後回しにしたらダメだよ?」
「………」
「あれ?どうしたの?」
「いや、奥さんって何だかんだで相変わらず俺を子ども扱いだなぁって」
何か『奥さん』じゃなくて『お母さん』だ
ふふっと奥さんが笑う。
「そりゃあ、私の実年齢からすれば旦那君は子どもだからねぇ」
彼女は転生者。
それを換算すれば俺との年齢差は20歳以上だ。
確かに子どもなんだよなぁ。
「で、でも俺だってもう立派な大人なわけだし」
「うんうん、そうだねー。わかってるよ」
「……むぅ」
「ほら、膨れないの!可愛い顔が台無しだよ?」
言いながら奥さんは俺の頭を撫でる。
あっ、これはこれで気持ちいなぁ。
「か、可愛くないよ!」
「えー?私の中では旦那君はとっても可愛くてカッコいい自慢の旦那君なんだけどなぁ」
「そ、そう?えへへ……」
「うんうん、そうだよ」
「……じゃ、じゃあもっと撫でてほしいな~、なんて……」
「はいはい、よしよし」
やべぇ。やっぱり子どもじゃん俺。
でも頭を撫でられる。とても心地が良い。
「さて、ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」
やべぇ、時々出てくる『異世界ドキドキフレーズ攻撃』来やがった!!
「え、えっと……奥さんかな……?」
「ふふっ、正直者だねー。でもまずはご飯でしたー。今日はお義母さんに教わった『スペーンフオムレツ』をアレンジしたものとにんにくの冷製スープ。旦那君の好物だよー」
楽しそうに笑いながら奥さんは台所へ戻っていった。
「……はぁ、全くあの人は本当に適わないなぁ……」
いつも手玉に取られている。
でも、それがたまらなく嬉しい。
俺は彼女を追いかけてリビングへと向かうのだった。