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体験談系エッセイ

みてはいけない

作者: 七宝

 これはまだ私が小学生だった頃のお話です。


 この年頃の男子はみんなやってたと思うんですけど、両親の留守中に父の部屋でエロ本やエロビデオを探すのが私の(ひそ)かな楽しみでした。


 その日もいつもと同じようにDVDの棚を漁っていたのですが、1枚1枚取り出して確認するのがめんどくさくなった私は、一気にDVDを半分ほど取り出し、カードのようにめくっていって良さそうなタイトルのものを選別するという行動に出ました。


 もちろん、戻した時に順番がバラバラにならないよう、漁ったことがバレることがないように慎重に、丁寧にやりました。


 チャングムの誓い、チャーリーとチョコレート工場、クレヨンしんちゃん、ナースのお仕事⋯⋯


 借りてきたDVDや録画していたものをダビングした無地のDVDにタイトルが書かれたものばかりです。


 デジカメデータ、桃太郎、風呂ベタ⋯⋯風呂ベタ!? なんそれ!


 とりあえずストックです。


 ナースのお仕事、ナースのお仕事、ナースのお仕事、ポケモン、口淫6⋯⋯口淫6!? よっしゃ!


 こういう漢字だけはちゃんと覚えているガキでした。


 そんな何枚も用意しても見る時間ないし、残りの宝探しはまたの機会にしよう。そう思った私はさっきの2枚だけ避け、その2枚があった場所に付箋を挟み、順番通り戻すことにしました。


 10枚くらいを一気に持ち上げて、ふと棚の方を見ると、奥に『みてはいけない』と書かれたビデオテープが立てかけてあるのに気がつきました。


 ホラー好きでもあった私は、そのビデオテープにとても興味を持ちました。


 エロビデオを隠すためにこういったタイトルをつけるというケースがよくありますが、DVDのくだりで見た通り、父はどストレートにタイトルを書くのです。忘れないためでしょうか。


『みてはいけない』を手に取ると、その隣にもビデオテープが立っていることに気がつきました。こちらはほとんどDVDの裏に隠れてしまっています。


 取り出してみると、背ラベルに『勇気百倍うちわ』と書かれていました。


 これは知っています。勇気百倍うちわとはドラえもんの道具の名前で、私が特に好きな話でした。けっこう怖いホラー回です。ビデオに残してくれていたんですね。


 ということは、やはり『みてはいけない』もホラーなのでしょう。ワクワクが止まりません。


 私は勇気百倍うちわと風呂ベタと口淫6を棚に戻し、『みてはいけない』を持って居間に戻りました。


 さて⋯⋯あっ。


 ビデオデッキがありません。ちょっと前に全部取っ替えたんでした。廊下にホコリを被ったビデオデッキがあったので、それを使うことにしました。


 DVDの機械のコードを外してテレビ台から出すのは怖かったのですが、『みてはいけない』への好奇心が(まさ)ったため、頑張って交換しました。


 入力切替をして、ビデオデッキにビデオを入れます。

 ここで私はあることに気がつきました。


 リモコンがない!!!!


 どうしよう、リモコンなくても見れるかな。そんな私の心配をよそに、ビデオが再生されました。


 画面に映し出されたのはなんの変哲もない普通の部屋でした。寝室でしょうか、畳に布団が敷いてあります。暗いです。


 数分待っても画面に変化がないので、「なんじゃこりゃ」と思いながらビデオデッキの取り出しボタンに手をかけました。その時です。


 画面の端から裸の男女が登場しました。画質が悪いのと、2人が遠いところに写っているのと、暗いのとで良く見えません。


 ただ、エロビデオだということは分かりました。元々そういうものを見るつもりだったので、多少画質が粗くても我慢するか、とそのまま見続けることにしました。


 仁王立ちの男性の前に、女性が(ひざまず)いています。遠くて暗くてよく見えないので、とても地味な画です。


 しばらくして体勢を変え、男性が女性に覆いかぶさりました。ここでやっと女性が声を出します。


「そんな、そんな激しくしちゃダメ⋯⋯」


 なんか、全っっっっっ然エロくないので飽きてきました。さっきの風呂ベタが気になってきたので、ビデオを出すことにしました。

 私がビデオデッキに近づくと、女性がこんなことを言いました。


「○○ちゃんが起きちゃう⋯⋯」


 ○○ちゃん!?


 ○○ちゃんとは私の愛称です。よく聞いてみると、その女性の声が私の母の声であることに気がつきました。


 ということは⋯⋯


 目を凝らして見てみると、男性のシルエットがなんとなく父に似ているような気がします。今よりだいぶ痩せていますが、顔の形が似ています。


「なるほどねぇ」


 私は1人で呟いていました。


 ショックを受けた訳でも、興奮した訳でもありません。合点(がてん)がいったからそう呟いただけなのです。


 私はこの部屋に見覚えがありませんでした。ただ、2人の会話を聞くに私はまだ小さく、隣の部屋かどこかで寝ていると推測できます。


 おそらくここは私が2歳くらいまで住んでいた団地なのでしょう。


 私はビデオデッキからビデオを取り出し、DVDの裏に戻し、風呂ベタを持って戻ってきました。口直しです。


 めんどくさがりながらもビデオデッキを外し、繋ぎ直します。そして風呂ベタを入れます。


 最高でした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 期待通りのオチでした(笑) あるあるっちゃあ、あるあるな話ですね(笑) 私はありませんけど(笑) [一言] 両親の情事を見てトラウマになってしまう人もいるそうですが、猫大長老七宝様はそう…
[良い点] 衝撃のオチが待ち受けていましたね。 もし自分だったらどう思っただろう…と考えてしまいます。 「親の秘密を知ってしまう」というのは大人への第一歩なのかもしれません。 [一言] 「勇気百倍うち…
[気になる点] ……つまり、御父上は七宝さんがDVDやビデオを見ているのを知っていた、と。
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