雨音に包まれて
空を見上げると、嫌な雰囲気の雲が流れてきていた。一雨くるかもしれない。少し嫌だな、なんて思いながら、ほんの少しだけ駆け足になる。なるべく雨に濡れずに目的地に着けるように。
そんな風に思っていたけれど、ポツポツと、雫が降ってきた。少しずつ勢いを増すそれに、不快感を覚えながら、カバンの中に入れていた折り畳み傘を取り出して広げる。
傘をさしていても、足元は少し濡れてしまう。嫌だな、と思う。雨が降ることを悪いとは言わないけれど、雨の打たれるのはまあ嫌だ。
ただ、雨が滴る音を聞くのは、ちょっと好きかもしれない、なんて考える。
そんなことを考えている内に、雨は弱まって、晴れ間が見えてきた。徐々に、雨音がなくなっていく。
晴れた空を見上げて、ため息をつく。
うっすらと虹がかかっているのが見えた。キレイだな、なんて心の中で呟く。
空はもう、眩しいくらいに晴れていた。あまりの眩しさに少し目を細めた。
折り畳み傘をしまいながら、のんびりと歩いていく。もう既に雨に濡れてしまったので、目的地まで急ぐ必要もないだろう。
キレイな虹を横目に見ながら、僕は歩いていった。