仲間集め?
半年以上経ってた
変わらず不定期更新です
息苦しさから目が覚める。
溺れていた夢を見た。
実際起きたらリオが私の鼻をつまみながら口に無理矢理流し込んでいた。
2リットルのペットボトルで。
「がぼっ!?ごばぶっ……!」
「あ、起きた。水で起こすの良くないね。割と普通に殺せそうだったよ。」
「…………何。」
「え、なんでそんなに不機嫌なの?」
「明日の朝はお礼に粘土飲ませてあげる。」
「嘘嘘、冗談。」
しょうもない起こされ方をした。
リオってこんなんだっけ……。
「こんなのを見つけたよ。」
そう言って見せてきたものはどこからどう見ても私の財布だった。
こいつがそう簡単に返してくれるはずもない。
「拾った。」
「あっそ、勝手に使えば。」
「あれ、意外。金に興味なし?」
「私は奴隷なので、指示がなければ動けません。起こすなよクソ女が。」
布団に潜り込んだ瞬間、頭目掛けて水を撒き散らしてきやがった。
「……なんなの。」
「人に嫌がらせするのが生き甲斐だから。」
「やるならキリカにして。本当に寝たい。」
ノータイムで顔に水をかけてきた。
流石にナメられすぎて癪。
気付いたら手が出た。
両腕で首を鷲掴み。
引きちぎるくらい力を入れて殺しにかかる。
どうせ殺せやしないんだけど。
……そりゃ首をやってるので、ピクリとも動かなくなったリオ。
両腕を粉々に粉砕する。
千切りにするみたいに腕を殴りまくって、骨が粉になるまでボコボコにする。
「……。」
パクパクと口を動かしてる。
喉に障害を与えたので声が出ないらしい。
なんと言っているか予想したところ、痛すぎ。
イライラする。
サンドバッグにしたとしてもスッキリしない。
10秒もしないうちにメキメキと変な音を立ててカスの女は再生した。
「致命傷が弱点じゃないのキモすぎる。」
「チリも残さないくらいの破壊力でようやっと。」
「……で、本命は何。」
「なんでかは分からないけど目を付けられてるみたいだよ。きあは昨日のヒーローさんを嬲った罪で、キリカは無実の人間を惨殺した罪で、私はよくわかんないけど何らかの罪で。」
「あんたが動けないうちに警察にでも差し出して罪を帳消しにしてもらうべきだった。」
朝から殺気むき出しの言葉のキャッチボールをする。
コイツ、本当に人間性が終わってる。
「そろそろ私も色々聞きたいことあるけどいい?」
「んー、まあ、いいよ。」
「鮮血少女、私らってなんなの?他にもいるの?」
「さあ?ただ私は1番目の鮮血少女だよ。」
「お前がが黒幕でしょ。」
「そうかもね、あはは。」
服の乱れを正して、彩香を吸いに行こうと立ち上がった。
「失礼しますわ死んでくださいまし〜。」
優しく、なおかつ物凄い速さで扉を開けて流れるようにリオの首を刺突して捉えた。
血が溢れる。
「朝っぱらから2回死ぬなんて、余程前世はいい事をしたんだ。」
「コイツ本当に許せませんわ、私のお洋服と血みどろの服を一緒に洗濯してましたの。」
「あっそ。……あーあ、眠気も飛んじゃった。」
どこでも宜しくやってるバカ2人は放置。
彩香の姿が見えなかったので探しに行く。
階段を降りて、リビングへ。
料理中のようだ、いい匂いが漂っている。
「……あ、おはようございます。」
「おはよ。随分早い朝みたいだけど何か用事?」
「いえ……いつもこの時間に起きちゃうので……。」
「そ。早速だけど血吸わせて、喉乾いた。」
「お、お水ではダメですか……?」
「吐く。」
否応関係なく近づいて腕を掴む。
「ひえ〜っ……や、優しくしてくださいよっ。」
使っていた包丁を借りて、腕傷をつけようとした。
同時に引き戸のドアが勢いよく開けられる。
「変態!援交!犯罪者!」
リオに関わると疲れるだけと分かったので全無視で行く。
彩香の腕に2つ目の切り傷。
「血のストックが欲しいな。」
「病院行けば?輸血パックとかあるよ。」
「ああ、アンタの頭の治療ついでに?」
「治療は無駄ですわよ?根絶不可の癌細胞ですもの。」
その意見には概ね賛成だが嫌な笑顔だ。
最悪なのは、その癌細胞が悪意を持って全力でこっち来ることだが。
わたわたしてる彩香を再度掴んで腕に被りつく。
「んむ。」
「私もいい?」
「いいわへあいえひょ。」
人の飲んでるジュース奪うとか有り得ない。
……ダメだ、私もそろそろイカれてきてる。
倫理観のないヤツらといると染まっていく。
「さて、今日からどういたしましょうか?なんの捻りもなくずっと学校に通い続けていましたけど、無くなりましたし。」
「私は別にやる事あるけどね。街に飛び出て偽善者狩りとか、警察を拷問して精神的に破壊するとか。」
「良くもまあそんなこと飽きもせずやりますわね。」
考えてみればこれでもまだ出会って数日しか経っていない。
この2人が普段何をしているか、私は知らない。
正直知りたくもないが、知っておいた方が役に立つはずだ。
鮮血少女は何をすべきなのかを知れると思う。
「正義だけが存在する世界は面白くない。陳腐な正義を間引くためにしっかりと活動しよう。」
「……ホントなのソレ。」
「私の認識じゃ別に何もしなくていいと思いますわ。……ただ。」
「何さ。」
「何をするのかは、それぞれ鮮血少女に秘められていると思います。リオにも、私にもそういうものに従っています。きあも何か覚えがあるのではなくて?」
ふと、いつか見た夢が何となくフラッシュバックする。
心臓と鎖、血で溺れる私。
えも言われぬ快楽。
「……まあ、ある。」
「実質的な第2の生なんですから、好き放題暴れても構わないのですよ?きあはきあで元々死ぬのがご予定だったのでしょうし今死のうが後で死のうが変わりませんもの。」
リオより鋭い、コイツの暴言。
ちゃんとした悪意が込められてない分余計言い返しにくい。
「それはそうと、コレ見てよ。」
投げ渡されたのは赤い結晶。
強い血の匂いがする。
「純血っていうんだけど。詳しいことは私でもよく分かってない。でも鮮血少女っていうものの存在意義はここにあると思ってる。」
「……なんでそれを私に?」
「強く握りしめてみて。」
言われるがまま、それを握る。
硬いと思ったのも束の間、侵食されるみたいに手から溶けていく。
心臓が高鳴る、心が満たされる。
得体の知れない満足感に恐怖すら感じる。
「……。」
けど、足りない。
もっと、もっと欲しい。
体がコレを求めてる。
「……ッ。」
効果が切れたのか、久しぶりに目眩を感じる。
薬物みたい。
あまり使いたくないんだけど。
「どう思った?」
「もっと欲しいとは感じた。二度とごめんだけど。」
「一応鮮血少女としての質が上がると思う。」
あやふや、別に強くなろうとは思ってないからいいけど。
「一応共有ね。これを人間に使うと爆発する、人間が。そんで正義側のヤツらに使ったことあるんだけど……これが面白くて。」
「うわ、聞きたくない。」
「爆発はしない、奴ら丈夫だしね。だんだん体を蝕んで化け物になっていった。ただ……例外もあった。適応した奴がいたんだよね。まあ殺したんだけど……場合によっちゃ仲間に出来るかもね。」
そんな洗脳みたいな……。
いやまあ、私らに惨い殺され方するよりはマシか。
「そして純血は人を殺しまくると生成される。昨日もキリカがとんでもない惨状にしたでしょ、回収してきた。6個くらい。……まあ、正直目的もクソもないんだけど、世界ぶっ壊すならコレで仲間増やしたら面白そうだよね。正義側がこっちに寝返る。最高じゃん。」
「どうなの?」
「……まあ、目的がなくリオについていっている身です。正義や悪を語れる立場でもありませんし、私はどうでもいいですわね。」
結局は私達を指示する役がいないので、何をしようにもまとまりがない。
こっちもしては言われたことやるだけでいいならそれでいいんだけど2人は納得しなさそうだし。
「誰か方向性決めてよ。」
「そういう性格じゃありませんわ。」
「じゃあ私が。」
「「お前はダメ。」」
「……。」
と、茶番もいいとこ。
自ずと普通に生活していた彩香に目が行く。
「いや無いよ。よく考えなって。この陰キャが私達を指示できる?」
「それにきあのご主人様ですものね。」
「惚気はよそでやってもらうとして、いいこと思いついたよ。ヒーロー側のエラソーな奴捕まえて純血ぶち込もう。」
どこがいいことなのか全く分からないが、私ももうなんだっていいやと言う心意気。
人殺したんなら、もう何でもやれるだろ。
そのくせほぼ死なない体、やり直しも出来る。
好き放題やってこその鮮血少女だと独自解釈する。
「ちょうど、潰したい組織があったんだ。ここから近いし行こう。直ぐに。」
鮮血少女観察は直ぐに終了、結局は血の匂いがするようになるのか。
重い腰を上げて立ち上がった。
「彩香、なんか欲しいもんある。ついでに買ってくるけど。」
「え、あ、いいです。特には無いので……!」
「そ、じゃ行ってくる。鍵もカーテンは閉めて厳重にね。誰来るか分からないから。」
「は、はい。いってらしゃいです……?」
3人で家を出た。
「母かなにか?」
「リオを1000回殺したら純血が出るか試してもいい?」
……確かに、こういうとっちらかった場をとりあえずでもまとめてくれる人間は欲しいな。
私ら全員言いたい放題言って全く回収しない。
「んで、どこにあるの?」
「北の方に。いかにもって場所見つけたんだ。見たらわかるよ。」
そう唆され、歩くこと10分程度。
住宅街を抜けて飲食店や娯楽施設が並ぶちょっと栄えた所をさらに奥。
山が見えて、その山を背にした謎の建物。
「いかにもって感じですわね。」
「ノックしたら出迎えてくれるかな?」
「それはそれでダルいんだけど。」
各々が入る前に武器を取り出し始める。
こんなに堂々として警告はない。
監視カメラもないようじゃ意識足りてないんじゃないの。
「お邪魔します、遊びに来ましたー。」
「ごめん遊ばせ〜!」
「……はぁ。」
リオ、私、キリカの順で入った。
中は意外にもホテルみたいに受付があった。
かなり広くて、暴れやすそうだ。
ざっと見るにどうやら正義のヒーローはなろうとして慣れるようなシステムらしい。
案内標識にはヒーロー申請案内の文字。
子供もガッカリじゃないの、知らないけど。
「きゃぁ!?」
「強そうな人いない?話のわかるタイプの女の子でお願いね。」
リオが喋ったあと、直ぐに警報が鳴り響く。
入ったあとじゃ遅いと思うんだけど。
「ダメだよ、そういうことしちゃ。」
即座にリオは鎌を受付にいた女性の首を飛ばす。
いつもこんな感じでやってるのかな。
手馴れてる。
「動くな!それ以上動くと撃つぞ!」
警備員のような男たちがぞろぞろと。
言っちゃなんだけど絶対無駄。
既にキリカはリオと私の影に隠れて射撃準備をしていた。
「血を頂きますわ、ブラッドヴァイト。」
首と体が離れた死体、その周りに池のようになっていた血が全て消えうせキリカに吸収される。
「撃て!」
何十人もいる警備員達が動いた。
ただ、こちらは化け物しかいないらしい。
過半数を射撃する前にキリカがヘッドショット。
残り数名は、私とリオで片付ける。
一瞬にして地獄と化したこの場所。
「結構歓迎されてるみたい。」
「どこが歓迎……いや、歓迎会はこれからみたいだよ。」
3人、奥の通路から現れる。
剣を持った男、褐色っぽい女、あとガキ。
まあ、正義のヒーローとか言うやつでしょ。
「やあどうも、君たちは怪力のフィスタって知ってる?私達アレのファンなんだ。」
昨日無惨な姿にしたやつの名前を出した。
物の見事に表情が曇り始めた。
どうやら仲間のようで。
「お前らがフィスタ先生を……!」
「へー、先生?じゃあアレより弱いんだ。降参したら?」
今は味方であるとはいえ、リオの言葉は一言一句イライラする。
もはや戦いよりも光る才能じゃないかと思える。
もちろん、相手側も正気でいられない。
「貴様ッ!!」
剣を持った男が斬りかかってくる、
遅くは無い、だけどアイツ程じゃない。
反応できるし、視界に捕えられる速さだ。
「おー、どうどう。ちなみに今止めてなかったらそこのお子様は死んでたよ?」
そう言ってキリカを見ると、ノールックでガキに照準を向けて待機していた。
「大人しくしときなって。もっと物分りの良い奴居ないの?」
「1人ずつなら行ける、リンリット、デルアン、いくぞッ!」
そう死に急ぐことないのに。
直ぐにキリカによる制圧射撃。
数発男の足にヒットして体制を崩す。
そのうちに私はガキの後ろに回って首筋に刀を入れる。
キリカも即座に女の方へ向かって押し倒していた。
「どうする?一般人と変わりないけど?」
「……どうかなっ!」
「わあっ!?」
キリカが抑えていた女がすごい威力のパンチを放ってきた。
油断していたのか、キリカはそれをモロに食らって吹き飛ぶ。
奥のまで吹き飛んで、壁に到達。
そのままぐったりうなだれる。
「チッ、来世に期待しろクソガキ。」
「アガっ。」
何かをされる前に、首を切り落とす。
すぐ様女の方に追撃を入れに一気に間合いを詰める。
切り上げを放とうとした瞬間腹に1発貰ってしまう。
「いっ……たぁ。」
痛がるのも少しだけ、すぐに反撃に移ろうとしてリオに止められた。
「とりあえずその子で試すから一旦ストップね。」
「キリカは。」
「ああアレ?演技に決まってるでしょ。多分もう音がない銃で撃たれて剣持ちがぐちゃぐちゃじゃない?」
横を見たらその通り、既に死体で遊んでいるキリカがいた。
「さて、一瞬で仲間を失った気分は?」
「……早く殺せばいいだろう。」
既に諦めムード、ほかの仲間も居ないのか?
こんな大きい建物なのに戦える人間がこれだけ。
まあ時間が経ったら多分増援が来るだろうけど。
「本気だす必要もなかったね、質問させてよ。他に戦える子達居ないの?」
「……。」
そりゃそうだ、悪人に話すことは無いと言わんばかりの無言。
ただ身の程をわきまえているのかは知らないけど抵抗もしない。
「ねえキリカ、きあ。試してみない?とりあえずね。」
ポケットから例の純血を取り出した。
なんだかいやらしい手つきで目の前の女をまさぐり出すリオ。
「そっちの癖?」
「何を、私は元々性別に興味は無いよ。」
手に純血を握らせつつ、額に手を這わせる。
何を見せられてるんだ。
「さ、お名前は?」
「……。」
「名前くらいいいじゃんー。さっきリンリットだかデルアンだか言われてなかった?どっちかな?女の子っぽい名前だしリンリットの方?リンちゃんかな?リトちゃんかな?」
「これ何。」
「私に聞かれても知りませんわよ……。」
と、ダラダラしてる間に増援が来たようだ。
入口を完全に防がれた。
しかし、警備員のような奴ら。
正直時間稼ぎすらもならない。
無駄死にして可哀想に。
「そこを動くな!お前たちは包囲されている!」
「おっとそれはこっちのセリフ、動かない方がいいよ!この子の生死は私が握ってる。銃をぶっぱなそうもんならこの子盾にしちゃうから。」
「構わん、撃て!」
「おわ、悪はどっちかな。」
咄嗟に女を突き飛ばして銃撃から避けさせた。
意外な行動に驚きつつ、腹から血咲を出す。
「死んどけ。」
大きく横薙ぎ、全員とは行かないが大人数を真っ二つに。
一気に濃い血の匂いが拡散する。
あんなに綺麗だったエントランスも真っ赤に染まる。
窓ガラスはもう赤いステンドグラスのようになってる。
それでもまだ続々と増援が入ってくる。
「支援しますわ。フフ。」
「……女の警備員。」
隊列を組んでる1番左。
1人だけ体格や構え方が違う奴がいた。
ちょうどいい、顔も見えないしアレなら飲みたいと思える。
直で狙いに間合いを詰める。
「黙って平穏に暮らして子供産んどけばこんな目に合わなかったのにね。」
「がぁっ!?」
首元を掴んでまずそいつを壁に吹き飛ばす、その間に銃弾を数発食らったが、痛いだけ。
そのまま残りを後始末。
「痛い?怖い?死にたくない?」
「……ぁ!」
面白いくらいに首を縦に振る。
楽しい、人を馬鹿にするって楽しい。
暴力は人をダメにする。
こんな力があったらだれだって振るうに決まってる。
私はできた人間性なんてもってないから。
「でもお姉さん、私顔面はいいほうだと思うの。天使に看取られながら死ねるって考えたらマシじゃない?ほら、髪も白いし。」
頸動脈を切り裂く。
噴水のように溢れ出る溢れ出る。
問答無用で、それにかぶりつく。
美味しい。
心が満たされていく。
「……きあって意外と食いしん坊なんだね?」
「そう?こんなもんじゃないの?」
まだピクピクして死にかけてるそれを放り捨てながら振り返る。
「私は普通に1週間くらいはなくても耐えられるかな。」
「私もそれくらいですわね。」
「体が欲しがるの。別にいいでしょ。」
「選り好みしてるの、バートリ・エルジェーベトみたいだね。」
増援はまだいたが、あまりの悲惨さに逃げ出したようだ。
3人に壊滅させられてたら逃げ出したくもなるでしょうね。
「じゃ、続きに行こうか。」
さっきの女も、流石に恐怖で震えてきている。
強気そうな女だったけどこれ見て表情一つ変えなかったらそれはもうこちら側でしょ。
「貴方が生きるかどうかは運次第、さあその石っころを握って?」
腰を抜かしてるのか、精神がイカれてるのか。
目の焦点が会わないまま放心状態だ。
尻もちを着いていた彼女をリオが押し倒すみたいに近寄った。
「はい、ぎゅう。」
握らせる為に恋人繋ぎみたいにした。
コイツ何人も女落として来てるだろうな。
「は……何っ……。」
いきなり呼吸が荒くなり、もがき出す。
合わなかったら爆発するんだっけ。
ちょっと離れてよう。
「ァァァ……ッ!うぐ……ゥ……アアアアッ!!!!!」
激しく痙攣するが、見た目に変わりは無い。
「お、成功かな?キリカは一応構えといて。きあはこっち。」
言う通りに血咲を用意しながら寄る。
キリカも照準を女に合わせた。
「フウッ……!!……フウッーー!」
「うわっ力強いッ!?手伝って?」
面倒なのでリオごと串刺しにしてくっつけた。
「かはッ……。」
「いだっ。ちょ、雑雑。」
安心したのも束の間、予想以上の力で私とリオは吹き飛ばされる。
不味い……のか?
そんなわけない、3対1だ。
「ちょっと倒れておいてもらいますわ。」
両手、両足にひるませるための銃弾4発。
胴体に3発。
頭に1発。
「抜くよ。」
「痛い痛い!?」
怯んでたリオからまだ刺さってた血咲を引き抜いて急接近。
鮮血少女であるなら、私らと同じく血が足りなくなればなるほどキツいはず。
血管の多いところ、首や関節。
そして腹を切り刻む。
そこまでしてようやく倒れた。
「とりあえず磔にしとく?」
「そうしよう。」
体のど真ん中当たりを血咲でぶっ刺して、壁にぶち込む。
暴れて取れても困るので柄の部分まで思いっきり。
「このままにしたら死ぬ?」
「死にはしないと思うよ。」
「……どうすんのこれ。起きるの待つの?」
「んー。ここを乗っ取るのは無理だし、早めに撤退したいところではあるよね。あ、監視カメラ。」
リオが指さすと同時に、キリカが射撃で打ち壊した。
「あんたら本当は仲良いでしょ。」
「長い付き合いではありますもの。」
体に着いた血を適当に拭っていたら、足音が聞こえてきた。
また居たのか、私刀刺してるから戦えないんだけど。
「うわっ。凄いことになってるなぁ。」
出てきたのはいかにも研究員という装いをした芋っぽい女。
髪は黒くてボサボサのロングヘアー。
若干猫背の陰気っぽい女。
「君強い?」
「勘弁してよぉ……強いわけないじゃんこの見た目で。別に何もしないから帰らせてくれない?」
「やーだー。」
「そっかぁ、やだかぁ。じゃあ、死ぬ前に実験させてくれないかい?今は君たちに興味が湧いた。どうせ僕の頭の中でしか共有されないからさ。」
死を前にしても知の探求か。
こういう奴らはそれしか生きがいがないんだろうな。
「ちなみに何をするの?そこの白い髪のお姉さんがやってくれるって。」
「は?」
「軽い身体検査と機械使って力の源を調べるのさぁ!……おや?今気付いたけどてリンくんじゃないか。やられてしまったんだね。」
今更後ろに振り向いて壁に突き刺さった彼女を見て驚く。
「まあ3対1は無理か。……でもなんかヘンだね?知らない力がある。それも君達の似てる何か。」
「へえ、頭脳故か知らないけどよくわかったね。尚更生きて返せないや。」
「うわわわわ。なんかこう、いい具合に生きれたりしないもんですかねぇ?」
「ギャンブルしてみる?」
……まさかこいつにもやるつもり?
いや、リオに限ってはどっちでもいいのか。
死んでも面白くてOK、適応しても別にOK。
「これ、あげる。大体の確率で爆発して死ぬけどワンチャン生きるよ。ソコのステゴロちゃんは適応したからこうなってる。」
「ふんふん、となると君たちは鮮血少女と言うやつか。出現報告が無さすぎることで有名だねぇ。目撃者全員殺してるから。」
嫌な話しか聞こえてこない。
人口の少ない国だったら滅ぼせてるくらいには人殺してるんじゃないのコイツら。
「生き残ったら実験させてくれるかい〜?」
「構わないよ、きあがやりたいって。」
「遠慮しなくてもいいよ。お前がやりな、子供の頃からの夢なんでしょ。」
「こういう時あまり振られないのですよね私。」
あまりにも場がとっちらかってる。
こいつが仲間になったら更に統率が取れなくないか。
と、話しているうちに純血を握りこんだ。
「ぐぁっ……!!心臓がっ……。」
胸に手を当てて苦しみ始める。
「心臓の鼓動が増えてる!体を流れる血全てが書き換えられてるような気分だ!熱い、熱い熱い!!!僕沸騰してないかい!?」
死ぬかもって言うのにやかましい女だ。
ただ、しばらくするとこの女も適応したようだ。
「お、おお〜。なるほどなるほど。ふんふん。」
「……なんか変わった?」
「そうは見えないね。」
「変わりましたとも〜。名実ともに闇堕ちってやつですねぇ。」
「どこが?」
「言うなれば倫理!ええ、無性に実験がしたくなってきましたよ!!!今まで人権、倫理、道徳などとくだらない枷が私を繋いでいましたが、消えましたぁ!」
また厄介なのを生み出したのかもしれない。
これ、手に追えるの?
殺した方がマシじゃない?
「これって鮮血少女になったってことなの?」
「いや、前も言ったけど武器と鮮血少女はセットだからまだだね。」
「ふん?この石の効能だが、体験してみたところ体の書き換えと言ったところかな?鮮血少女がまず何なのかを知らないが、……まあ、言うなればこの石は鮮血少女の素、なんじゃないかい?」
1すら話してないのに既に10が帰って来てる。
一生黙ってて欲しいタイプなんだけど。
「私の時は武器が空から降ってきたけど、コイツには無いの?」
「そのうち……ほら。」
低い天井なのに、上からいつの間にか落ちてくる。
武器は武器でも盾。
ガンッ!という盛大に痛そうな音と共に脳天に直撃する。
「うぎィッ!?」
立派な盾だ、たらいみたいにバウンドせずそのまま押しつぶされた。
かなり大きめの盾で、体が隠れるほどには。
「この場合後頭部から盾出すことになるの?」
「トドメを指した場所が収納場所になる。適当に体の全面にぶっ刺したらいいよ。」
「ちょぉ!?すごい話してるね!?や、やめてぇ!?」
問答無用で盾をぶっ刺す。
箱ティッシュみたいになった。
意識が飛んで、体がぴくぴくしている。
すると、ずるずると体の中に盾が吸い込まれていく。
「いつ見ても嫌悪感すごい。キリカとかこめかみから出すでしょ。」
「小物だったら良いんですが見ての通りこんなに大きい銃ですからね。」
そうして体の中に完全に入り込んだ。
……そういえば、鮮血少女になると体に変化も訪れるはず。
私も髪が白くなったし、コイツは何が変わるんだ。
「ゲホッ!……あー。いきてるー。体動かないけど。……んー。へー。ほうー。内臓とかは多分そのままだなぁ。」
環境への適応が早すぎる。
既にヘラヘラとした態度をとっているし、そもそも最初から私らを怖がっている様子はなかった。
まあ、変なやつだとは思ってたけど。
「死を乗り越えちゃったらもうなんでも許容範囲かなぁ。それで僕は一体どうなっちゃうわけ?」
「選択肢は2つだよ。私たちと一緒に来るか、ここで死ぬか。」
「一択じゃんねぇ?ま、いいですよ。でも僕体動かすのすら苦手だよ?」
「鮮血少女について調べてもらおうかなと思ってた、隅々まで。」
「おー、意外とまともな仕事貰えた。で、助けて貰えます?動けないんですけどぉ。」
振り向いたら、2人の視線がこちらに向いていた。
「私はジュースサーバーじゃないんだけど。」
「でもきあはジュースサーバー持ってるじゃん。」
「……はあ。」
腕を軽く斬って、血を垂らす。
「えっ。んくっ……。あ、美味しい……のかなぁ。身に染みる感じはする。」
「鮮血少女の仲間入り、だね。軽く説明するね。」
リオの口から、私がされたような説明。
ブラッドヴァイト云々の話。
「なるほど、分かった。私は早瀬比奈。ヒナでいいよぉ。……んでぇ、リンリット君はどうするの?」
「この子?とりあえずもってかえるよ。」
「おお、鮮血少女のアジトかい?」
「いや、一般住宅。」
「ただいま〜。」
リオが大きい声で叫ぶ。
「おっ、おかえりなさぁい!」
とたとたと走る声が聞こえて、リビングの方から顔を出した、
「……えっ。」
リオがリンを背負っている。
明らかにそれを見て動揺していた。
「うん、気にしないで?」
「えっえっ、あっ。」
そのセリフを言うのは確実に彩香の方なのだが。
とはいえ、もう受け入れつつあるのは慣れてしまった感がある。
非日常に強制的に入れられた悲しいヤツ。
まあ巻き込んだのは私だけど。
「えと……もうお部屋がなくて……。」
「あーそれなら構わないよ。物置でもいいからちょっとしたスペースとかないかなぁ?」
「あっ、えっと……でも空いてるのは階段下の収納スペースくらいしかなくて……。」
玄関からすぐ見える場所にある階段。
その側面にある、二階建ての一軒家にありがちな物置。
「それでいーよー。十分十分。」
そう言って何やら持ってきた巨大なリュックから何かを取りだした。
研究者とは言っていたが、技術者でもあるようで様々な兵器や日用品なども作っていたとか。
それも資金を集めるための手段だったらしい。
「ポケットラボ!これを中に入れて〜。」
収納スペースになっている所にそう呼ばれた機械を入れて扉を1度閉める。
ちょっとした物音がしたあと再び扉を開けると。
「ふふん、どうだい?仕組みはもう覚えてないけど時空をうんたらかんたらして切り取ったのをここに張りつけたのさぁ!」
「まあ!すごいですわね!」
「わ……私の家がだんだん凄いことに……。」
悪魔が2人住み着いているだけで厄介なのに加えて変な施設までできた。
そんな人生歩んだことない。
「ちなみにこの中はどれだけ暴れても大丈夫だ。とりあえずリンくんの状態を見よう。」
みんなでそのラボに入っていく。
ただの収納スペースだったのが、学校の教室くらい広い近未来感のある部屋になっていた。
色々な設備のようなものもあるが、よく分からない。
「よぉし、とりあえず珈琲でも……。」
「あ、血しか飲めないよ。食べ物も全部ダメ、食べても拒否反応起こすし吐く。」
「えええっ!?!?僕もう珈琲飲めないのかい!?」
「血飲めばいいでしょ。」
「むぅ……。まあいいよ、とりあえずその手術台の上に乗っけてぇ。」
およそベッドとは言えない、カッチカチの鉄の板の上に乗せる。
するとその手術台が動きだし、やや斜め。
機械のアームが出てきて手足をがっちり拘束した。
……私の知らないところで技術って進んでるんだ。
「さて、軽く調べてみようねぇ。」
モニターが出てきて、沢山の数字が表示される。
なにかのデータなんだろうけど何も分からない。
「ふんふん。……心停止してるけど生きてる。非活性状態みたいな……?ちょっとだけ時間くださいねぇ。」
隣にあるパソコンを弄り始めた。
待つのにも飽きた頃。
「……ん。……ッ。」
先にリンリットだかなんだかが起き上がる。
まだ敵意むき出しだ。
「おはよう?いい朝だね。」
「……ここは。」
「やあリンくん!体の具合はどうだい?多分指ひとつ動かせないくらい衰弱してると思うんだけど。」
あれだけ斬ったり撃ったり、大量出血した後だ。
普通動けない。
「ヒナ博士……なんでこいつらと。」
「ウン……マア……ね?たた、君自身もなんか今までと違うと思わない?」
「……さっきまでのお前達に対する嫌悪感がない。」
「いい傾向だね。そのまま忠誠を誓ったりしない?」
「……なんとも。」
否定しないあたり、既に正義という概念から陥落してるのだろう。
なんとも惨めな話だ、起きて気付いたら正義の心を失ってる。
私には元々なかったが。
落ちる所まで堕ちてからの勧誘だったし。
「かくかくしかじかで、僕も君も鮮血少女として生きることになった。」
嫌な笑顔でリオが話し出す。
「そうか、拒否権は無いのだろう。」
「別に?嫌なら死ねばいいと思うよ?」
「……目的は?」
「特には無いけど無実の人間を殺したりするよ。意味もなくね。そういうもんだから。」
呆れた、と言わんばかりの目。
正直それに関しては私も同意見なのだが、人間には恨みがある。
こうまでなったのは全て人間のせいだ。
何してもいいだろう。
2度目の生なのだから。
……どうしようもないお前達に2度目を与えてやるって意図でこれならさ。
……相当気色悪いよ。
「……従う。お前達のせいなのだろうが、あったはずの正義の心は消えてなくなった。今あるのは憎悪、憤怒。それだけだ。」
「へー、誰に怒ってるの?」
「そこも言わなければいけないか?」
「いやいいよ。隠したい過去の一つや二つ私だってある。ともかく仲間入りだね。ようし、名前聞いていい?」
「小南凛だ。」
「左から、キリカ、きあ、そして私リオ。そこの子は一般人だから気にせず。」
拘束具が外れて、自由の身になる。
そこにキリカが血を分けた。
即座に、体に異変が起きていた。
「……筋力が跳ね上がってる。これも鮮血少女のせいか?」
「そんなとこ。」
「首輪を付けた方がいい。大事な時に自分を抑えられる自信が無い。」
「そんなに狂犬キャラなの?」
「そんなことは無かったはずだけどねぇ?やっぱり鮮血少女になると人格が破綻するんだと思う。」
遠回しにお前らもぶっ壊れてるよ、と言われている気がする。
否定はしないけど悪いのはリオだし、そもそも私はなる前からぶっ壊れてたし。
「僕もそうだけど今まで自分を形成していたナニカが無くなったら不安定になると思わない?リン君は顕著な例だ、正義の心を持った彼女が正義を失うと何が残るだろう。」
パソコンと向き合いながら、哲学のような話を語り出す。
「……もういい?私疲れたんだけど。」
「そうですわね〜。私も聞き飽きました。」
「君達ねぇ!?人に色々頼んでおいて……まいいか。基本ここにいるから何かあったら話しかけてくれ。リン君はちょっと実験に付き合ってくれ。」
「了解した。」
会話は終わったみたいなのでさっさとこの場から出る。
……本当に疲れた。
これでまだ1週間も経ってない。
鮮血少女になってからは情報量が多い、濃すぎる。
ただ、皮肉なことに今の方が生きてるという感じがする。
今まではスッカスカの人生で、生きてるのに死んでる生活してたから。
「……な、流れるように私の部屋に……。」
「別にいいでしょ。……あ、体汚れてるの忘れてた。……めんど。」
服を脱いで雑に置く。
……多分だけど、鮮血少女は汗をかかない。
トイレだって言った覚えがない。
ご飯も食べられないってことは、まともに体は機能してないと思う。
「シャワー借りる。」
「ど、どうぞ。」
はあ、明日はどうせ変なことに巻き込まれるだろうな。
リオがヒナを使ってなにかしてくるに違いない。
キリカか私か、どちらを標的にするかは分からないが。
……さっさとシャワー浴びて寝よ。