夫として、それはどうなのですか?
「これはこれは、レオ様の息子さんではないですか」
と細身のステファン3に言われたジンは眉をひそめる。
「……この国では、どちらかと言えば、あっちがジン様のお父上、と呼ばれる立場のような気がするんだが」
と文句を言うジンにアローナは、
「……親子の溝、意外に深いですね」
どっちでもいいではないですか、と苦笑いする。
幽閉中の父に、こんな立派な離宮に住むことを許し、好き勝手やらせているのにとアローナは思う。
ジンが、
「そういえば、お前たちがアローナを娼館に売ったんだったな」
と言うと、盗賊たちは身構える。
だが、ジンは特に彼らを罰するでもなく、
「前々から気になっていたんだが。
一体、アローナを幾らで売ったんだ。
参考までに教えてくれ」
と頼みはじめる。
いや、なんの参考ですか……と思うアローナの方をチラと見たステファン オリジナルは、
「本人の前ではあれなので」
と微妙な気遣いを見せ、ジンに耳打ちしていた。
本人が思っているより安かったら傷つくと思っての配慮のようだ。
いや、そんなことより、そんな簡単に盗賊と身を寄せ合って、囁き合ってていいんですかね? ジン様、とアローナは、そっちの方が気になっていた。
自分はなんだかんだで二度も彼らと旅しているので、そこそこ信用できる相手だとわかっているが。
ジンにとってはよく知らない盗賊だろうに、とジンやフェルナンの危機管理の甘さが不安になる。
そのとき、ステファンから金額を聞いたジンは、
「なんとっ」
と驚きの声を上げた。
「そんなにもらったのかっ。
あの娼館の女たちは、なかなかガメついとアハトが申しておったのにっ。
彼女らはアローナにそんな価値があるとでも思っていたのかっ」
……こら、王様。
未来の夫として、そのセリフ、どうなんですか、と思っていると、ステファンがジンに言う。
「いや、エメリアたちは、アハト様にそれ以上ふっかけてますから。
おそらく、我らに払った三倍近く」
「なんとっ」
とまた声を上げたジンは、
「アハト、無駄遣いがすぎるぞっ」
と今、此処に居ないアハトをたしなめようとする。
いやあの……、ちょっと気になるんですが。
あなたの中の私の金額、如何ほどなんですかね?
なんか屋台のピンクのぐるぐるのお菓子並な気がしてきましたよ。
少なくとも、エンが焼く超絶美味しい焼き菓子よりは下そうだ、とアローナは思ってしまう。