ほんとうに使えるな、盗賊
アローナは盗賊たちと待っていたが、なかなかアハトたちの船はやってこなかった。
何故、アハト様の船の方が遅いんだ……。
立派な船なのに。
っていうか、ほんとうに使えるな、盗賊、とアローナは思っていた。
「なかなか来ぬのう、アハトたちは。
まあ、奴らを待っていたら、お前を連れ帰ることが私の手柄にならぬから、置いて帰ろうか」
とレオが言い出す。
いや、手柄を求める方の立場なんですか? あなた。
元王様なのに。
与える方では、と思ったのだが、レオはアローナの兄に酒を貰いたいがために、兄に評価して欲しいらしい。
「しかし、レオ様。
この小舟ではこれ以上の人数、乗れませんが」
とアローナが言うと、レオは、
「なに、大丈夫だ」
と言う。
盗賊たちがビクついた。
自分たちのうちの何人かが此処に置いていかれると思ったのだろう。
まあ、致し方あるまい。
あとで褒美が貰えるかもしれないし、という顔を盗賊たちはしていたが、レオは椰子の木の後ろにある岩山を振り向き、
「遠回りになるが、この裏に町があるから。
仕方ない、歩いて戻ろう」
と言い出した。
「此処、島じゃなかったんですか……」
「半島だ」
「知ってたのなら言ってください~っ」
レオはこの辺りまで戦に来たことがあるので知っていたらしい。
「いや、お前がせっせと働く姿が面白くてな。
ほら、早く出立するのだ、盗賊どもよ。
アハトたちに追いつかれるではないか」
いや、なんで我々、助けから逃げてるんですかね……と思いながらも、人の言うことなど聞かないレオに急かされ、アローナたちは旅立った。
上客を送り出したあと、砂漠に落ちる夕陽を眺めながら、エメリアが、
「さあ、いよいよ不夜城に火が灯る時間ね」
と更に気合を入れたとき、その一団は砂埃とともにやってきた。
「エ、エメリア様、水を一杯……」
とボロボロになってやってきたのは、旅をするのに全く適していない高価な衣をまとった美しい娘だった。
「あら、アローナどうしたの?
また城を追い出されたの?」
「……一度も追い出されてませんよ」
そんなアローナの後ろから更にボロボロの盗賊団がやってきた。
「どうしたの?
またアローナを売りに来たの?」
更にその後ろからゆったり歩いてレオがやってくる。
「酒を一杯所望する」
一体、なんの集まりなんだ、とエメリアが思ったとき、盗賊団の頭がアローナを紹介し、言ってきた。
「エメリア、うちの新しいリーダーだ」
「……それ、どんな下剋上?」
とエメリアは、かつてアローナを売った男たちとアローナを見た。