誰だ、こいつは
「確かに。
お前が働いているのに、私が協力しないのはまずいな」
この人使えない、と思っているアローナに、そうレオが言ってきた。
「では」
なにかしてくれるのかな、と思ったが、レオは寝たまま、
「お前も此処で横になるがよい」
と言い出した。
……どうしよう。
ほんとうに使えない。
「では、作業するお前を抱えておいてやろう」
とやってきたレオは本当にアローナを抱き上げる。
いや……やりづらいんで。
流木をつかんだまま、お姫様抱っこされ、アローナは言った。
「あのー、私より流木の方が軽いですよね?」
「気持ちの問題だ」
ジン様とは違う意味で困った人だ、と思いながらアローナは言う。
「もしかしたら、迎えの船が近くに居るかもしれません。
鷹が乗ってるかも」
シャナが連れてきてくれてたからな。
あの裏切り者め、と思いながら、指笛を鳴らしたが、鷹は来ない。
「レオ様、ちょっと下ろしてください」
と言ったアローナは、よくしなる感じの長めの枝を拾ってきた。
ヒュンヒュンと枝は音を立て。
やがて海の向こうから必死な感じで羽根をはばたかせ、インコがやってきた。
「インコ!」
「これはかわいいな」
と一生懸命やってくるインコを見てレオが言う。
少し遅れて、盗賊たちが乗った小舟がやってきた。
「アローナ!」
「あ、やっぱり頭、近くに居たんですね」
そんな遠くからインコが来れるわけがないと思った。
「さすが、使える人ですね、頭っ!」
とアローナは機嫌良く頭に言う。
すると、横からレオが、
「ということは、来ないジンは使えないということか」
と言ってきた。
「なんでそんな余計な言葉を付け足すんです……。
っていうか、噂をするとジン様が来ちゃいますよ」
「来ちゃいけないのか」
「だって、使えない人が増えるだけじゃないですか」
「増えるって。
ジン以外の使えない奴は誰だ」
「……誰なんでしょうね」
と呟くアローナの横で頭が、
「誰なんだ、アローナ。
この愉快なオッサンは」
と言っていた。