妙なところで恨みを買ったようですよ
これは……と、みな、ごくりと唾を飲み込み、見つめた。
色とりどりの花が次々と花開いていく玻璃の茶器の横で、ジンが巻物状の書簡を広げるのを。
レオ様からの書簡。
娼館で得た情報のことだろうか、とアローナは訝しむ。
いやいや、そんなもの簡単にこちらに渡してくるとも思えない。
実は知らない間に、レオ様、軍備を整えてらして、宣戦布告をしてきたとか。
立派な文字で書かれているらしい書簡をアローナも覗き込んだが。
しゃべれても文字の方はまだよく読めない。
ジンがろうろうとした声でそこに書かれている文字を読み上げてくれた。
「美女千人と酒樽千個を送れ。
さもなくば、暴動を起こす」
みなが沈黙し、読んだジンも沈黙した。
「……危険な敵国より、まずこいつを攻め滅ぼすべきだな」
そう呟いたあとでジンは、
「こんなもの放っておけ」
と言って、その書簡をカラになった焼き菓子の皿の横に投げた。
そして、気づいたように叫ぶ。
「なくなってるじゃないかっ、菓子っ!」
「あっ。
すみませんっ」
とアローナは謝った。
緊迫した空気で書簡を見つめている間、鷹に肩をつつかれるたび、機械的にエンの焼き菓子を与えてしまっていたようなのだ。
「アローナ~ッ。
鷹~っ」
迫りくるジンの怨嗟の声にアローナは逃げ腰になりながら。
「あっ、そんなにお気に召してました?
じゃ、じゃあ、鷹を使いに出して、エンにもう一度焼いてもらいますよ。
鷹」
と振り向いたが、鷹はお腹が重くて飛ぶ気にならないようだった。
「は、は、早く行ってっ。
ジン様に焼き鳥にされるからっ」
とアローナは慌てて鷹を追い立てた。
鷹の焼き鳥が美味いのかは知らないが。