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ずいぶん昔のごめんなさいも、今、言っておこうかな……



「相変わらず、呑気ですな」

と開口一番、アハトは機嫌を取ろうとしているはずのジンを罵ってしまった。


 いかんいかん、つい……と咳払いしたあとで、アハトは若き王に忠告じみたことを言った。


「あの娼館に、ほんとうにレオ様は遊びに行かれていたのでしょうかね」


「どういう意味だ?」

と訊き返してくるジンに、


「あなた様のクーデターにより、この国を巡る情勢は大きく変化しました。


 今こそ攻め滅ぼすチャンスだと思っている国もあれば。


 関係性を改め、自分の国に有利な友好条約を結び直そうとしている国もあるかもしれません」

と言うと、ジンの顔つきが厳しくなる。


 ジンはこう見えて、有能な王となるだろう。


 だからこそ、あのレオが追われたわけだし。


 自分が言っているようなことも、普段なら想定していると思うのだが。


 今はちょっと……かなり、よそへ気が行ってしまい、腑抜ふぬけてしまっているのではという不安があった。


 それも、自分が贈った貢ぎ物の姫によって。


 王子の癖に女遊びをしないから、一旦、本気になると歯止めがきかなくなるようだな。


 もうちょっと遊んでればよかったのに……と内心、溜息をつきながら、アハトは言った。


「あの娼館は他の国にも娼婦を派遣しております。


 また、砂漠の近くなので、旅人たちも寄る。


 我が国に潜入している怪しげなやからもあそこで休み、休息をとっているやもしれませんな。


 レオ様はあそこから様々な情報を仕入れていた節があります。


 王の時代には、あんな堂々と遊びに行ったりはしていなかったようですが。


 今回も、なにか不穏な情報を得られて、あそこに行かれたのかもしれません。


 それか、あなたを追い落とすための情報を得に行ったのかも……」


 この私がジン様に忠告する日が来るとは、と思いながらも、アハトは、そう言った。





 アハトの話を聞きながら、まあ、その可能性はあるな、とジンは思っていた。


 そのとき、アハトが、

「ところで、昨夜、王がアローナ様の寝室に閉じ込められていたという話ですが」

と話を蒸し返しはじめた。


 やはり、先程、フェルナンと揉めていてたのを聞いていたのか。


 アハトは今や、アローナを押せ押せ状態だ。


 アローナが妃となり、自分が寵愛すれば、彼女を連れてきたおのれの地位も上がると思っているようだった。


 叱られるだろうか……とジンは怯える。


 まだアローナに手を出していないことで。


 昔、矢の練習をしていてアハトの鼻先すれすれに矢が突き刺さったとき、アハトは笑顔でこちらを向いた。


 あのときと同じ恐怖を感じながら、ジンが身構えたとき、アハトが言った。


「王よ。

 扉を閉められたのなら、庭から出ればよかったではないですか」


「あ」

とフェルナンとジンは思わず、声を上げていた。


 二人ともテンパっていたので気づかなかったのだ。


 戦場ではまず、こんなことはないのだが……。


「まだまだですなあ」

と言いながら、アハトは行ってしまった。





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