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……よろしいわけないだろう



 あそことは何処なのかとアハトに問われ、アローナは言った。


「アハト様がよくいらっしゃっている娼館です」


「……アローナ様。

 私は別によくは行っていません。


 貴女を買ってきたときのように、政敵や権力者への貢ぎ物を見繕みつくろいに行っているだけです。


 そもそも、うちは嫁が強くて。

 女はひとりで持て余しております」


 そうアハトは言う。


「僧侶なのに、奥さんがいらっしゃるんですか?」


「私は僧侶ではありません。

 それっぽい格好をしているだけです。


 なんというか。

 犯しがたい雰囲気が出るではないですか」


 ……なるほど、とアローナは頷いた。


「で、なんで娼館に行きたいのですか」

とアハトに問われる。


「ちょっと訊きたいことがあるのです」

とアローナが困った顔で言うと、アハトは溜息をついたあとで、


「わかりました。

 ついていって差し上げますから、私がよく娼館に行っているとかおかしな噂を流さないでくださいよ。


 あと、ジン様の許可をとってください。

 何事かあったとき、私の責任にもなってしまいますから」


 そうフェルナンと同じことを言ってきた。


「わかりました。

 では、許可をとってきますので、今しばらくお待ちください」

と言って、アローナはジンを探す。


 アハトもついて来たくれた。




 使用人たちに訊きながら、城の中を探していると、ジンは増築していっている宮殿のもっとも古い部分の改修工事に立ち会っていた。


 図面の確認をしているらしい。


「ジン様」


「アローナか。

 此処を温室にしようかと思うのだが」

と言うジンの言葉にかぶせ気味にアローナは言った。


 というか、ジンの方がアローナの言葉に割り込んできたのだが。


「ジン様、娼館に行ってきていいですか?」


「なんだって?」

と現場監督の捧げ持つ図面から視線を外し、ジンは振り向いた。


「遊郭に行ってきてもよろしいですか?」


 答えないでいるジンに、アローナは更に言いかえて訊く。


「売春宿に行ってきてもよろしいですか?」


「……よろしいわけないだろう。

 なにしに行くんだ」


 側で聞いている現場監督も苦笑いしているようだった。




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