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ちょっと行ってこい


「シャナとやら」

 外に立っていたジンはカーヌーンを手に出て来たシャナを呼び止める。


 そもそも王である私が妃の寝所から先に出て、殺し屋が後から出てくるってどうなんだ、と思いながら。


「なんですか、打ち首ですか?」

とシャナは横柄に訊いてくる。


「……打ち首にすると言ったらどうするんだ?」

と問うと、


「逃げます。

 逃げ足だけは速いんで」

と言ってきた。


 役に立たない殺し屋だな、と思う。


 何処の国だ、最初にこいつを雇ったのは……。


 処刑すると言ったら、一瞬後には煙のように消えていそうなシャナに、

「そんな話ではない」

とジンは言った。


「実はお前を雇いたいんだ」

と打ち明けると、


「ほう。

 どなたを殺すんですか?」

とちょっと嬉しそうに訊いてくる。


「いや、そうではなくて。

 ちょっと困ったことがあってな。


 父がアローナのことを聞きつけたようなのだ」


「ああ、前王ですか。

 まだ生かしてたんですね」

と言われ、


 いや、特に殺すつもりはないんだが……、と思いながら、


「アッサンドラのアローナ姫は、もともと私への貢ぎ物のはずだが、と父が言ってきたんだ」

と言い、ジンは眉をひそめた。


 すると、すぐにシャナは、

「わかりました。

 殺してまいります」

と言う。


 いや、待て待て待て。


「そうではない。

 どういうつもりで言っているのか調べてきてはくれないか」


「どういうつもりって、妾のひとりにするおつもりでしょう」


「だが、離宮には、すでにたくさんの美女がいるようだ。

 アローナなんぞ、いらないだろう」


 国に帰らせたり、よそに嫁ぎたいというものは嫁がせたりして、厄介な後宮の女たちはすべて、いなくなったはずなのに。


 また懲りずに何処からか、かき集めてきているようだった。


「最愛の妻なのに、評価低いですね~。

 あれで、アローナ様は、なかなか、わりと。


 ま、そこそこ、いい女ではないかと思うのですが」


 ……お前の方が評価低いぞ。


「お前、美女に化けられるんだろう。

 離宮に派遣するから調べてこい」


「襲われたらどうするんですか」


「襲われても男だろうが」


「男でもいいと言うかもしれないじゃないですか」


「じゃあ、妾にしてもらえ。

 仕事探さなくてよくなるぞ」


 いいから行け、とジンはシャナに布袋に入った金貨を丸ごと渡し、叩き出した。


「成功したら、同じ額、また、くれてやる。


 いいか。

 殺すんじゃないぞ。


 どういう考えなのか、話を、聞いてくるんだ」


 そう子どもに言い聞かせるように言いながら。







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