あああああ~っ
次の日の夜、アローナは、
「ジン様、昼間みんなで楽しいゲームをやったのですよ」
やりましょう、と幾つものくぼみのある大きな細長い板を寝台の上に載せてきた。
「なんだ、そのデカイ板は」
とジンが言うと、ザラザラと綺麗な色のガラスの玉を布袋から出しながら、アローナは言う。
「これでゲームをするんです。
先に自分の陣地からガラス玉がなくなった方が勝ちです。
ジン様、やったことありますか?」
「ああ、マンカラか。
そういえば、子どもの頃やった気がするな」
「では、ルールはご存知ですね。
始めましょう」
と言うアローナに、またいろいろ考えるもんだな、俺の気をそらすのに、とジンは感心していた。
まあ、こんな板ごとき、パッと手で払って、押し倒せばすむだけの話なんだが。
そう思いはしたが、真剣な顔でガラス玉を手に盤上を見つめるアローナがおかしく、黙ってゲームに付き合ってやった。
すると、
「ああ~、負けました。
最近やってないジン様になら勝てるかと思ったのですが」
「あああ~、また負けました。
何故ですか。
貴方の手はすべて読んだはずなのに」
「ああああ~っ。
なんでなんですか、もう一回~っ」
と呟きながら、何度もアローナは勝手にゲームを始める。
「……お前、もしかして、俺の気をそらそうとしているんじゃなくて、本気で勝ちたいだけか」
きっと昼間、ゲームを教えてくれた侍女たちにズタポロに負けたんだろうな、とジンは思った。
「お前は人がいいから勝てないんだ。
綺麗に陣地の玉を減らすことしか考えてないんだろうが。
ほら、このゲームは相手が終わりそうな頃、こうして、ころん、とひとつ相手の陣地に玉を入れてやればいいんだ」
とほとんど玉のなくなったアローナの陣地の端に玉を一個送り込む。
「なんて意地のお悪いことをっ」
とアローナが半分立ち上がり叫んだ。
「これは意地の悪い奴が勝てるゲームだ」
ともうひとつアローナの陣地に玉を送り込んだところで、ジンの陣地がカラになり、終わった。
ああああ、とアローナは頭を抱える。
「久しぶりにやったが、面白いな、このゲーム」
と上機嫌にジンは言ったが、アローナは頭を抱えたまま、
「面白くありませんっ。
でも、もう一回っ」
と言う。
思わず、笑ってしまった。